韓国が植民地支配の違法性という問題を国際政治の主題に押し上げていく上で、克服すべき問題は多い。一番難しい問題の一つは、そもそも解放闘争というものの評判が、この間、がた落ちになっていることがある。

 

 2001年に南アフリカのダーバンで開かれた国連の会議で、植民地支配の問題が集中的に議論され、批判されたことは紹介した。それでも、現在の韓国が求めているように、過去にさかのぼって違法だという一致点は得られなかったのだが、戦後史のなかで植民地支配がもっとも批判の対象になった国際会議であっただろう。

 

 しかし、その後、この動きは停滞している。いや、後退していると言ってもいい。なぜか。

 

 それは9.11の影響である。これをきっかけに、それまでは高い評価を与えられていた解放闘争が、テロと同一視されることになったからである。

 

 世界中の多くの場所で、それまでは解放闘争とされていたものが、いつの間にか「テロ」と呼ばれるようになってきた。中国が、チベットやウイグルの人々の闘いを「テロ」と位置づけ、弾圧していることは言うまでもない。

 

 韓国の主張が国際的な支持を得るためには、そういう状況を再び逆転させ、解放闘争が評価されるような世界ができることが前提である。韓国にはそういう自覚があるのだろうか。

 

 それだけではない。韓国は過去の植民地支配の違法性を問うているわけだが、じゃあ、現在もなお残る植民地支配はどうなのか。国連は世界で17の地域を植民地(用語としては非自治地域)と認定しているが、その違法性を問題にするような動きはまったくない。

 

 それどころか、その残り少ない非自治地域の一つであるニューカレドニアでは、昨年末、独立を問う住民投票があったけれども、過半数の支持を得られずに頓挫した。かなりはげしい解放闘争があったようだが、実らなかった。

 

 つまり、現在においても植民地支配の違法性が問われていない。植民地の人々が独立を支持しない。

 

 そういう状況下で、韓国は、過去の植民地支配は違法であって、犯罪として、現在の世界で裁かれるべきという合意までつくらなければならないわけだ。

 

 少なくともそういう事態の変化が実感できないと、日本だけが率先して過去の支配の違法性を認めることは難しいと思う。韓国は、日本を攻め落とそうと思えば、同時並行的に世界を攻めなければならないのだ。