2回目の米朝首脳会談、みなさんの評価はどうですか? 私は、北朝鮮問題のジレンマは深く、暗いなあという感想です。

 

 トランプさんの会見を聞いただけなので、まだ最終的な判断をする材料には欠けているかもしれません。それにしても、寧辺の核施設の解体程度の見返り、条件として金正恩が制裁の全面解除を求めてきたというのは、ちょっと驚きというか、ジレンマのあまりの深さを表していると思います。

 

 だって、その程度で制裁の全面解除ということになると、すべての核施設の申告とかさらに解体という最終段階にいたった場合、どんな見返りを求めてくるのでしょうか。連絡事務所の設置などは容易な措置として合意していたと思われるので、そういう米朝関係の改善のようなものではないでしょう。北朝鮮が求める「体制保証」というのは、本当に底なしの要求なのだと感じます。

 

 北朝鮮のいう「体制保証」とは、たんにアメリカから攻撃されないための保証ではないんですね。金正恩体制が安定的に続くということなんです。核兵器をなくすからには、北朝鮮の人々が永続的に金正恩体制を信奉し、支えるだけのものがほしいということでしょう。

 

 しかし、そんな超独裁国家を志向するような国が、核兵器を簡単に放棄するわけがありません。過去、核兵器を開発したが放棄した国、開発計画を断念した国を見ると、スウェーデンとかブラジル、あるいはアパルトヘイトを廃止した南アフリカに見られるように、民主主義国家なんですね。国民の平和志向が政権に影響を与える国に限られるんです。

 

 だから、北朝鮮が核兵器を放棄するにいたるには、「体制保証」ではなく「体制改革」が不可欠です。それを金正恩体制のもとでどうやっていくのかという、いわば離れ業のようなことをやろうとしているわけで、やるべきことはあまりにも大きな壁のようなものです。

 

 ということで、結局、私の本の宣伝になっちゃいました。『北朝鮮問題のジレンマを「戦略的虚構」で乗り越える』。翻訳してトランプさんにも読んでもらわなくちゃね。