今上天皇に謝罪を求める韓国国会議長への日本政府の対応を見て思うのは、頭に血が上りすぎて、この喧嘩に勝つための冷静さを失っていることだ。これでは、国民世論は沸騰するかもしれないが、解決にはいたらない。

 

 天皇の問題は別にして、韓国国会議長が言っているのは、第一義的には安倍首相の謝罪が必要だということだ。そうすれば解決すると明言している。

 

 これが本当かどうかは分からない。だって、慰安婦問題の経過を見ると、宮沢首相が謝罪し、河野談話で公式に日本政府が謝罪し、アジア女性基金は総理大臣の手紙を慰安婦に渡して謝罪し、2015年の日韓政府合意でも「安倍晋三首相は日本国の首相として、改めて慰安婦としてあまたの苦痛を経験され心身にわたり癒やしがたい傷を負われた全ての方々に心からおわびと反省の気持ちを表明する」と明確にした。それでも受け入れていないわけだから、国会議長の発言通りになるとは思えないわけだ。

 

 しかし、三権の一つである国会のトップが言っているのだから、その重みを利用するくらいのことは考えないとダメだ。つまり、「じゃあ、安倍首相が日韓政府合意の際の謝罪を繰り返せば解決するのですね」と、相手に迫っていく材料にすればいいのである。

 

 もし韓国国会議長の発言が徴用工問題をも意識しているなら、「安倍首相が徴用工問題で謝罪すれば、裁判は終わるのですね。日本企業の資産の差し押さえはしないのですね」と問いかけるべきなのだ。

 

 このブログでも書いたけど、明治の産業革命遺産を登録する際、日本政府は、「いわゆる朝鮮人徴用者等の問題を含め,当時多数の方々が不幸な状況に陥ったことは否定できないと考えており,戦争という異常な状況下とはいえ,多くの方々に耐え難い苦しみと悲しみを与えたことは極めて遺憾なことであったと考える」と世界に向けて発言したのだから、安倍首相は同じことを繰り返すのは簡単なのである。日本企業がばく大な資産を失うのが回避されるのだから、その程度のことは我慢して発言したっていいではないか。

 

 そうすれば、ボールは相手にわたることになる。「そう、それで解決しよう」と合意して、日本は何も損しない。相手が「いや、それでは解決しない」というなら、国会議長の発言の重みが問われる。

 

 日本外交はどうなるんでしょうかね。心配。