報道によると、徴用工問題の関係して、和田春樹さんら知識人が声明を発表し、問題の解決を訴えたそうだ。歴史家103人や学者・研究者58人、作家、弁護士、社会活動家など日本の知識人計226人が署名したとのこと。

 

 この問題の解決の機運が高まることを望むし、和田さんらの努力にも敬意を払う。ただ、この声明を見る限り(報道の範囲)、問題の解決には遠い印象を受ける。韓国側の同意を得られないのではないか。

 

 なぜかというと、「村山談話と2010年の菅直人首相談話に基づき植民地支配を反省・謝罪することこそ、韓日、朝日(日朝)関係を持続的に発展させる鍵だと強調した」とされているからだ。それで済むなら、そもそも問題はこんなにこじれていなかった。

 

 村山談話とは、いうまでもなく戦後50年の村山富市首相談話だ。「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします」と述べている。

 

 菅談話とは、韓国併合100年目の8月10日に出された菅直人首相の談話。「三・一独立運動などの激しい抵抗にも示されたとおり、政治的・軍事的背景の下、当時の韓国の人々は、その意に反して行われた植民地支配によって、国と文化を奪われ、民族の誇りを深く傷付けられました」というものだ。

 

 これらの談話は、自民党政権時代からすると、少しは反省と謝罪の気持ちが出ているとは思う。しかし、自民党政権時代と根本的に変わらないのは、植民地支配の違法性を認めてはいないことだ。

 

 だから、この談話が出た直後は歓迎ムードがあった韓国世論も、違法性を認めたものでなかったことが明らかになると、一転、批判だらけになった。そういう種類の談話である。

 

 そして、今回の大法院判決も、植民地支配の違法性を日本が認めることが前提になっている。村山談話や菅談話の水準ではダメという判決なのだ。その談話の水準で止まっていると、徴用工に賠償せよという論理が導きだされないから、植民地支配の違法性という論理を持ってきたのである。

 

 この問題を解決する鍵は、そこをどうするかということだ。1965年には解決せずに曖昧にされた問題を、半世紀以上たってどうやって解決できるのかということだ。違法でなかったという日本の主張は韓国が飲めない。違法だったという韓国の主張は日本が飲めない。さあ、どうするのか。(続)