まあ、そうは言っても、国民投票までの期間って、せいぜい1年くらいだろうから、改憲派の人すべてと酒を酌み交わすような時間は残されてない。護憲派に可能なのは、改憲派を敵にまわすようなものの言い方ではなく、心の通い合う話し方を身につけることしかないだろう。

 

 それは結局、「自衛隊」についてのものの言い方だということになる。それを明記することが問われているわけだから。

 

 安部さんの案が自衛隊を明記することだということになってから、護憲派のなかで、自衛隊についてもっと知らなければならないという動きがある。自衛隊について語らなければならないから当然のことであるが、問題は、どういうふうにそれを知るのかだ。

 

 私に依頼があって自衛官を紹介したケースがある。だけど、それは本当に例外的なケースで、多くの場合、自衛隊の否定的な面を語るために勉強しようという流れになっている。そこが心配なのである。

 

 その動機は分かるのだ。だって、「自衛隊を憲法に書いてはならない」という根拠として、非常に分かりやすいのは、その自衛隊が憲法という大事なものに書かれるべきでない「ヒドい組織」ということだから。自衛隊のことを、「対米従属だから日本を守らない」だったり「守るのは国家であって国民ではない」だったり「暴走するのは軍であり、政府も引きずられる」だったり、そういうものとして描ければ、国民多数も考えが変わると思うわけだ。

 

 そこには真実も含まれるわけだから、全然通用しないとは言わないし、自衛隊について改革すべきことはどんどん提唱していかねばらなないのも事実である。しかし、このようなもののいい方をしていては、何十年もの体験を通じて自衛隊をリスペクトしている国民多数が考えを変えることはない。余計に反発する人も多いはずだ。

 

 だからまず、自衛官が非常に真剣に努力していることを知り、そこに共感すると言えるかどうかが大事だと思う。米軍と対立してでも日本国民を守る気概を持っていたり、自分は改憲の立場だが国民が護憲を選ぶならそれを支持するという気持ちを持っていたり、自衛隊に反対する国民をリスペクトして付き合っている自衛官だったり、等々。

 

 そういう自衛官をよく知っているけれど、「加憲」というのは、そういう自衛官の努力を踏みにじるものにならないかと訴えるべきではないかと思うのだ。

 

 そういう訴えを可能にするのが、弊社が来年1月初旬に発売する、この本。『自衛官の使命と苦悩 「加憲」論議の当事者として』である。

 

 

 著者は、渡邊隆(元陸将)、山本洋(元陸将)、林吉永(元空将補)。柳澤協二さんが解説を書いている。

 

 発売は来年だが、すでに弊社のサイトからは注文可能になっていて、実際にお届けもできる。お正月にでも読んでいただけませんか。

 

 とりあえず前ブログから18回続いた連載は終わるが、このテーマは今年の最大課題なので、ずっと書いていきます。北朝鮮本を書き終わったので、次に書く本のタイトルは、『我、自衛官を愛す 故に、憲法9条を守る』かな。