移住のためアメリカへやって来たカップルを待ち受ける入国審査での尋問の行方を緊迫感たっぷりに描いた、スペイン発の心理サスペンス。
監督の実体験に基づくスペイン発の密室サスペンス。軽予算で15ヵ国の映画祭を席巻。このキャッチコピーに釣られて観ることにしました。(笑)
ニューヨーク空港で入国審査を待つ幸せなカップル。移住ピザも取得し万全だったが、税関申告書に入国目的を記入しなかったばかりに数時間に渡る尋問を受け、夫の隠し事が明らかになる。さてこのカップルは何の罪?
質素な審査室と取調べを受けるカップルに審査員のふたりで織りなす物語。ワンシチュエーションの会話劇。尺77分というのも尋問時間に合わせてある。確かに低予算だ。単純な質問にイエス、ノで答えるだけだがどこかハメられてる感じ!
会話が進むにつれて夫の過去の闇が炙り出され、夫はそれほどの悪なのかと審査官の気分で目が離せない!しかし、妻の立場はどうなる?審査官はやり過ぎだと反発したくなる。その結末にカタルシス、審査員は鬼ではなかった。非常事態における入国審査の実体、入国審査の大切さと審査員の苦労がよく出た、エンタメ作品としてすばらしい。
SNSで呟いているだけに非常事態条項が発布されると“いつ何で捕まるか分かないぞ”と恐ろしさを感じた!
監督・脚本:アレハンドロ・ロハス フアン・セバスティアン・バスケス、撮影:フアン・セバスティアン・バスケス、編集:エマニュエル・ティツィアーニ。
出演者:アルベルト・アンマン、ブルーナ・クッシ、ベン・テンプル、ローラ・ゴメス。
物語は、
スペインのバルセロナからニューヨークに降り立ったディエゴとエレナ。エレナ(ブルーナ・クッシ)がグリーンカードの抽選で移民ビザに当選し、事実婚のパートナーであるディエゴ(アルベルト・アンマン)とともに、新天地での幸せな生活を夢見てやって来た。しかし入国審査でパスポートを確認した職員は2人を別室へ連れて行き、密室で拒否権なしの尋問が始まる。予想外の質問を次々と浴びせられて戸惑う彼らだったが、エレナはある質問をきっかけにディエゴに疑念を抱きはじめる。(映画COMより)
あらすじ&感想:
冒頭、空港へ出発する間際、車のラジオから「トランプ大統領がメキシコ国境の警備を巡り“非常事態”を宣言。壁の建設費57億ドルを要求している。トランプの壁寄与は1ユーロからです」と流れている。2019年2月15日、ディエゴとエレナはニューヨーク経由でマイアミに移住するため空港に向かった。
エレナが忘れ物はないかとチェック。ディエゴが「パスポートがない」と言い出し、ポケットを調べて「あった」と。何か不安げなディエゴ。
空港に着く。次にニューヨーク着陸寸前の機内の様子が映し出される。軽予算だから余計なことは一斉描かない!(笑)ディエゴはトイレに立ち、ここで薬を飲み、洋服につける。薬物の反応消し?と思った。これがずっと印象にあって予想が外れた。
〇ふたりはセキュリティチェックで提出する“税関報告書”の入国目的を空欄で提出した。
ディエゴが客室乗務員から配布された税関申告書が見つからないという。エレナが空港案内所から取り寄せ、ペンを客から借りて記入。入国目的を移住か訪問かと悩み空欄で提出した。ディエゴが「18番が優しそう」というのでここに並んだ。(笑)
ふたりはパスポートを提出を求められた。両手のフンがープリント、全身写真を撮られた。その後、2次審査だと別室に案内された。
待合室にはかなりの人が待機していた。ディエゴは“何時審査が終わるのか”と心配だった。携帯禁止で携帯をバッグに仕舞うよう強制された。
読書している客に「どのくらい」と声を掛けると「第3章、3時間だ」と言われた。手錠掛けられた女性が出てくる。ふたりが不安になったところで審査室に呼び込まれた。
〇ふたりは同室で女性審査官バスケス(ローラ・ゴメス)による尋問を受ける。
バスケスの尋問前に男性検察官の検査を受けた。「渡米目的は?」と聞かれた。ディエゴは「移住です、スペインで移住ピザを取得しました」と答えた。検査官が“スペインから直行か?”“誰が航空券を買った”と横柄に聞く。ふたりは苛立った。
検査官の手と鼻による荷物検査、ボディタッチ検査。携帯をキャリーバックに納めさせられた。次に麻薬犬による検査。ふたりは難なく通過した。エレナがディエゴに「何でこんな扱いを受けるの?あなたが紛失したパスポートのせい?」と聞く。「解決済みだ」と答えた。
バスケスによる尋問が始まった、
バスケスは生年月日、健康保険、渡航歴、SNSアカウントをチェック。ディエゴは38歳、エレナは32歳だった。バスケスは「大人しく答えて、嘘は重罪!」と釘を刺し、エレナから訊問開始。
エレナは抽選で当たったグリーンガードについての尋問を受ける。
何度挑戦したか?家族も挑戦か?ディエゴとの夫婦関係は?など聞かれ、夫婦関係に「事実婚」と答えた。「何故結婚しないのか?」と問題となった。
エレナの職業はテンポラリーダンサーでブリュッセルで3年活躍。ディエゴと出会ったのはバルセロナ。ディエゴは都市プラナーになるため大学修士課程に在学中だった。“無償の男と何故事実婚か?”“米国に来た動機は?”“財産は?”とバスケスの尋問が続く。
エレナはディエゴに「あなたの職はこの面接で決まる、私の裁量で!」と脅した。
バスケスは「以前に2次審査を受けたことがある。盗まれた旅券で旅した。何故アメリカ人と結婚した?」と追及された。ディエゴは「今は独身、婚約はしたが別れた。名前はケイト・ロドリゲス45歳、調理師でマイアミに在住、ネットで知り合った」と答えた。エレナは驚いた!
バスケスはディエゴに「偽装結婚は罪になることを知っているか?」と聞いた。ディエゴは「知っている」と答えた。バスケスはディエゴがケイトと結婚しながらエレナとの交際に疑念を持った。
〇エレナは待合室で待機するよう命じられた。男性の審査官バレット(ベン・テンプル)とバスケスによるディエゴへの尋問が始まった。
バスケスが部屋を開けたわずかな時間、ディエゴはテーブルに置かれたバスケスの尋問資料を覗き見た。そして携帯で連絡しようとするが繋がらなかった。そこにバレットとバスケスが現われた。携帯とパソコンを取り上げられた。
バレットはディエゴに「エレナを愛しているか?」と問うた。
バレットは“エレナの性格は?”“ふたりで旅行した国は?”“セックスの頻度は?”“子供は欲しいか”などについて厳しく尋問した。エレナはケイトとの関係を詳しく尋問した。
エレナの結論は「本当のことを話さないと刑務所行になる。あなたはビザ目的でエレナが必要だった!」と迫った。ディエゴは激しく否定した。
エレナが部屋に呼び込まれ、ディエゴは待機室に。
工事中なのか電灯が暗くなった。部屋を替えてエレナへの尋問が再会された。
バスケスがエレナに「ディエゴの子供が欲しいか?」と聞いた。
エレナは「欲しいが今すぐには?」と答えた。バレットが「故郷を離れて子供を持つことに抵抗はないのか?」と聞く。バスケスとバレットが上手く連携をしてエレナの本心を探る。エレナはきっぱりと「ディエゴを愛している」と答えた。
“性交の頻度は?“”ベネズエラに行ったことがあるか?“”ディエゴの家族のこと“自分の家族のこと“などの尋問が続く。
エレナは「ディエゴの家族はカラカスに住んでおり生活は苦しい。スペインに移住する可能性がある」「自分の父母は結婚に賛成。会えなくても大丈夫」と答え、ディエゴと一緒に生活することを訴えた。
バスケスから「ディエゴが婚約していたことを知っていたか?彼が婚約していた時期とあなたが事実婚した時期は重なる。交際ビザが目的だと考えないか?」と問われた。エレナは「考えたことはない」ときっぱり答えた。バレットから「ダンスを見せてくれ」と求められたが、エレナは「携帯で動画を・・」と頑なに拒否した。
バスケスは「ディエゴは二股をかけた。彼にはビザが無かった。事実婚の署名は早計だった。周囲から注意されたはず」とエレナの決心を揺さぶった。エレナは「関係ない」と泣いた。バスケスは「グリーンカードに当選したのはあなた。望なら住める。どうしますか?」と決心を求めた。
〇エレナは尋問から解放され待合室に戻った。
エレナは「今は無理!」とディエゴの隣には座らなかった。ディエゴが「君は彼らの話を鵜呑みにしている。話す気だった。俺が間違っていた」と謝った。エレナは返事しなかった。ディエゴは「確かに婚約したが破談になっている。君も移住を望んだ。親にもスペイン政府にもうんざりしていた。僕は努力し君を優先してきた。君には分からない、帰るところがあるから」と再度説明した。エレナは「婚約のことを聞かされ、完全に初耳だと答えた」とディエゴに伝えた。エレナはディエゴと別れると思った。
エレナがお手洗いで顔を洗い、控室に戻ると「エレナさん、ディエゴさん、welcome to America」とアナウンスがあった!えええ!
まとめ:
ディエゴとエレナは関税報告書の“入国目的”欄を空白にしたことで、ディエゴの渡航歴、結婚歴から“偽装結婚によるビザ取得犯”と疑われ、どんでもない尋問で苦しんだ。通常体制ならセキュリティサービスにパスポートを提示すると“旅行目的は?”と聞かれ「旅行」と答えると「いい旅を」」と笑顔をくれる。
審査官はおれやこれやと質問詰めにしながらふたりの顔色、心理状況を読んでいた。何のために聞いているのか分からなくなることがある。よく練れた脚本だと思った。
ディエゴ役のアルベルト・アンマン、エレナ役のブルーナ・クッシの演技がとても新鮮で表情によく心理状況が出ていた。特にブルーナ・クッシの苦しむ表情が印象的だった。バスケス審査官役のローラ・ゴメス、威厳があって恰好よかった。
非常事態宣言下となると、全てが疑われる。とても怖いと思った。政府は今、憲法改正で非常事態条項の検討を進めている。これは慎重であってほしいと思った。
****




