原作はSNSを中心に話題を集めた汐見夏衛の同名ベストセラー小説。戦時中の日本にタイムスリップした現代の女子高生と特攻隊員の青年の“切ない恋の行方を描いたラブストーリー”。原作は未読です。

 

知覧特攻平和会館を訪ね彼らの遺書を読んでいたので、劇場公開時、観賞を見送った。ところがとても評判がよく興行収入45億円を挙げるヒット作となった。日本アカデミー賞では優秀脚本賞を始め数々の賞を獲得している。ということでWOWOW公開時、観賞しました。

 

当初の感想は、タイムスリップの必要性に乗れず、淡々と展開する物語に物足りなさを感じました。が、今年1月19日の読売TV番組「そこまで言って委員会NP ジブチ自衛隊拠点とは!?」を見て、もう一度この作品を見直すことにしました。

 

番組は自衛隊唯一の海外拠点・ジブチにおける海上自衛官たちの活動を描いたものですが、こういう番組ではめずらしく司会者も出席者もボロボロ涙を流す。こんな番組をこれまで見たことがない! そこで最後に紹介されたのが本作で、またまた涙だった。どこに心打たれたか?

 

監督:成田洋一、脚本:山浦雅大 成田洋一、撮影:小林拓、編集:岩間徳裕、主題歌:福山雅治。

 

出演者福原遥、水上恒司、伊藤健太郎、嶋崎斗亜、上川周作、小野塚勇人、出口夏希、中嶋朋子、松坂慶子、他。

 

物語は

親にも学校にも不満を抱える高校生の百合(18歳)、は、進路をめぐって母親とケンカになり、家を飛び出して近所の防空壕跡で一夜を過ごす。翌朝、百合が目を覚ますと、そこは1945年6月の日本だった。通りがかりの青年・彰に助けられ、軍の指定食堂に連れて行かれた百合は、そこで女将のツルや勤労学生の千代、彰と同じ隊の石丸、板倉、寺岡、加藤らと出会う。彰の誠実さや優しさにひかれていく百合だったが、彼は特攻隊員で、間もなく命懸けで出撃する運命にあった。(映画COMより)

 

 

あらすじ&感想

冒頭、百合(福原遥)は大学進学のことで母親(中嶋朋子)と喧嘩し、雨の中外に飛び出し、防空壕に逃げ込み、そのまま眠ってしまい、気付いたとき1945年6月の日本の特攻基地の町にいた(タイムスリップ)。

 

喧嘩したのは亡くなった父の意志を持ち出して大学へ行けと勧める母親が許せなかった。「父は人を助けるために亡くなったが私たちには迷惑で、苦労し、こんな服で大学へ行くの?」というモノだった。“この百合の言分が理解できなかった”。

 

1945年6月の特攻基地のある町にタイムスリップする必要性が曖昧!

百合が母と言い争うときTVが特攻を話題にしていた。6月14日は沖縄がまさに米軍の手に墜ちる時期で、テレビはこの日を忘れないよう報じたものだと思う。この問題について親子で論議し、なぜここに防空壕があるか?と会話するシーンでもあればタイムスリップが理解できたかもしれない。

 

百合は佐久間(水上恒司)に出合い、彼の紹介で食堂を営むツルの世話になることになった

「帰るところがない」という百合にツル(松坂慶子)は「うちで働かない」と店に置くことにした。この設定もよく分からない。(笑)百合は店の手伝いを始めて、店に魚を届けてくれる千代(出口夏希)に出会った。千代は勤労奉仕だという。若い人にこの言葉が分かるかな?

佐久間、石丸(伊藤健太郎)、板倉(嶋崎斗亜)、加藤(上川周作)、豊岡(小野塚勇人)の5人の兵隊が店にやってきた。千代が彼らをお茶で接待。佐久間が「我々は特攻隊員、国を守るため数日ここにいる」と百合に話した。

 

佐久間が「見せたいものがある」と百合を一面に白い花が咲く丘に誘った。

佐久間は百合に「妹になって、自分を彰と呼んで欲しい」と話した。百合が「特攻、おかしくないですか」と話し、店に戻った。

 

次の日、坂本という兵隊が手紙をツルに渡しにやってきた

特攻隊員は出撃が決まると家族への遺書をツルに託していた。ツルが郵便局に出かけた。その留守に千代が魚を持って訪れ、百合は千代が石丸に好意を持っていることを知った。そこに佐久間ら特攻隊員がやってきたので、百合は石丸に「千代ちゃんをお嫁にして!」と話すと「考えている。まあ・・」と笑った。

 

ツルが戻ってきて「坂本さんは発った!今日はあじ定食、お米を炊こう。1か月もすれば全員出撃、できるだけのおもてなしをする」という。

 

ご飯を食べながら豊岡、32歳の妻帯者、が子供が生まれた」という。百合が「出撃するんですか?」と聞くと「特攻隊員を誇りにしている。子供と妻を守るためだ」と応えた。佐久間が「命令でここにきているのではない。(早稲田を中退し)自分の意志だ」という。「無理矢理に特攻員にされた?」と応えると「許さん!」と怒りだした。 

 

ともすれば「命令で特攻隊に編入された」と考え勝ちだが、ここでは「自分の意志で来ている」ところに注目!

 

ツルは百合を空襲で亡くした娘の墓参りに誘った

ツルは「豊岡の話は百合には分からない」と娘の墓の前で「親は子供の命を守ろうとするのよ」と話して聞かせた。

その帰りひとりぼっちのアキにトマトを差出し「お母さんは?」と聞くと「ふたりとも死んだ」という。「戦争はもうすぐ終わる。日本は負ける、もう少しの我慢よ」と話した。

 

これを聞いた警察官が「国民が一致して戦っているとき負けるとは!火の玉となって戦う時に」と叱った。百合は「本当のことを言っただけ。日本は負けます」と言い返した。百合は警官に殴り倒された。百合は「戦争に意味があるのですか?子供がガリガリになって命を捨てている!」と食い下がった。警官もびっくりしたでしょうね。(笑)警官が帯刀を抜いた。そこに佐久間が駆けつけた。ツルの「神様ですよ!」の声で警官は帯刀を収めた。佐久間は「警官が悪い!何かが悪いのだ」と百合を慰め、基地見学に誘った。

 

百合が基地見学で佐久間らが楽しく野球をする姿を見た。その後、一緒に氷を食べ「幸せの味だ」と感じ、ふたりの気持ちは近づいていった。

 

百合はツルから反物を米に変えるよう頼まれ街に出た

突然、敵機の空爆を受けた。逃げ惑う市民、家屋が倒壊、火の海に。百合が倒壊家屋に閉じ込められた。そこに佐久間が駆けつけ助け出した。百合は佐久間におんぶされツル食堂に急いだ。百合は「何で私のために?」と聞くと佐久間は「当たり前だ!」と云った。百合は相当平和ボケしている。(笑)

 

夜、兵舎で佐久間は板倉から「田舎に許嫁がいるが、彼女を残しては死ねん!」と打ち明けられた。

 

ツル食堂に佐久間ら特攻隊員がやってきて「出撃が決まった」とツルに知らせた

ツルは「おめでとう」と応えた。百合は席を外して泣いた!板倉が居なくなった。

 

皆で板倉を探した。百合が板倉に出会った。板倉は「見逃してくれ!」と拝む。そこに皆が駆けつけた。寺岡が「敵前逃亡、帝国軍人の恥だ」と罵る。板倉は「そんなものはどうでもいい。俺は生きたいんだ」と叫ぶ。「この異常時に愛する女に生き恥を晒す」と加藤が叱る。百合は「愛する人のために生きるのが恥ずかしい。それはおかしい」と口を挟んだ。佐久間は「俺たちの分まで生きてくれ!」と板倉を逃がした。

 

佐久間は百合に「俺はここで全てを忘れられる。考えたくないこともあるが」と前置きし、「俺が教員になりたかった。子供たちの未来を豊かにしたかった。すてきな世の中を生きる。俺は戦争時代に生まれ、することが出来なかった」と話した。百合が「逃げよう!日本は負ける、もうすぐ戦争は終る」と云うと「それはもっとひどいことになる!俺たちが諦めたらこの国はひどいことになる。俺はこの時間を大切にしたい」と話した。

 

ツル食堂で佐久間ら4人の特攻壮行会を行った

4人は軍歌「同期の桜」を歌い、「敵艦が撃沈したら俺たちです。長生きしてください、お世話になりました」と挨拶した。ツルが「ご武運を祈りします」と返した。千代は皆にお守り人形を渡した。佐久間は「幸せに!」と百合に言葉をかけた。百合は佐久間の胸の中で泣いた。

 

翌朝、ツルと千代は基地に佐久間らを見送りに出かけた

百合は見送りを止め店の整理をしていた。するとツルが特攻隊員から預かった手紙が出て来た。その中に切手のない佐久間から百合宛ての手紙を見つけた。百合は基地に自転車で走った。発進直前の佐久間に会えた。佐久間は敬礼し飛び立っていった。百合は見送った後、倒れた!

 

百合は目覚め、夜が明けて、家に戻った

TVで「半日しか経っていない」と分かった。母が帰ってきて「よかった、どこに行っていたかは聞かない」と喜んだ。

 

社会見学で知覧特攻平和会館を尋ねた

特攻隊員の遺書が展示されていた。その中に佐久間彰のものがあった

「君を妹としたのは嘘で、愛していた。できたら戦争のない時代に生きて過ごしたかった。甘いいい匂いがする花、君の幸せだけを願っている。一生笑って暮らせる未来を生きてくれ、ありがとう、さようなら」。

 

百合は大学に進学し先生になる道を選んだ。悪くはないがパンチ力がない!

 

まとめ

“切ない恋の行方に目が行くが、しっかりした志しで特攻を入った佐久間の言葉を聴く必要があります。(主役は佐久間)

佐久間は自分が生きることは出来ない未来を語って亡くなった。その未来を生きる現在の人に「あなたはどう生きていますか?」を問うた物語、これがテーマでした。佐久間の生き方は“ひとつぶの麦になる”だった。これが番組「そこまで言って委員会」を見て、“ジブチで活動する自衛隊員”に重なり泣けました!

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