監督は齊藤工さん。長編映画初作品「blank13」 (2017)を見て、次作品を楽しみにしていました

 

前作は長編作初挑戦で 葬儀をテーマにして“人間の評価が自分だけでは分からない“という人の見方をユーモアたっぷりに描いていました。斎藤色を出さんとユニークな映像で若さが感じられるドラマでした。にもかかわらず本作が公開されたことを知らず、WOWOWで公開されたこと知り観ることにしました。

 

原作:2018年に第13回小説現代長編新人賞を受賞した神津凛子のホラーサスペンス小説「スイート・マイホーム」。未読です。

 

監督:斎藤工、長編2作目にホラーサスペンスを持ってきて、どう描くのか、前作の人間の面白さを描いてくれるものと期待していました。脚本:倉持裕、撮影:芦澤明子、編集:高橋幸一、音楽:南方裕里衣、主題歌:yama。

 

出演者:窪田正孝蓮佛美沙子、奈緒、中島歩、里々佳、松角洋平根岸季衣、窪塚洋、磯村アメリ、他。

 

物語は

スポーツインストラクターの清沢賢二(窪田正孝)は、愛する妻・ひとみ(蓮佛美沙子)と幼い娘・サチ(磯村アメリ)のために念願の一軒家を購入する。地下の巨大な暖房設備により、家全体を温めるその家は、「まほうの家」の呼び名の通り、冬は寒冷な長野県では理想的な物件だった。マイホームでの幸せな生活をスタートさせた清沢一家だったが、その幸せはある不可解な出来事をきっかけに恐怖へと転じていく。(映画COMより)

 

 

あらすじ&感想(ねたばれあり:注意

マイ・ホーム建築のための地鎮祭シーン、妊婦がお腹を押さえながら参加しているが、何があったか参加者の皆さんが振り向く。これを見る少女の顔、ここから物語が始まる。一体この映像が何を意味するか全く分からない。(笑)

 

清沢賢二(窪田正孝)は、暖かい家がよいと「まほうの家」の下見に妻・ひとみ(蓮佛美沙子)と幼い娘・サチ(磯村アメリ)を伴って住宅展示場にある“H・Aホーム”を訪ねた。

説明者は本田(奈緒)と甘利(松角洋平)が当たった。賢二は暖かさが気に入った地下室のまほうのエアコンを見せてもらうが狭所恐怖症で倒れてしまう。(笑)実はこの設定は「暗い狭所では行動できない」という上手い設定になっています。(彼には狭い部屋で父親を殺したトラウマがある)

 

本田から「うちの娘もよく眠るタイプの家です」と言い、各部屋を監視するシステムを勧められた。

 

賢二は家族を伴って実家の母・美子(根岸季衣)を訪ねた

賢二は新築し実家を継がないことを美子に伝えた。実家には兄・聡(窪塚洋)が居るのだが、「やつらがやって来る」と押し入れで過ごす状態。聡はサチが好きで、この日も押し入れの中でサチを抱っこしていた。美子と聡、賢二は父の暴力に耐えらずここに逃げてきて住み着いたという悲しい過去があった。

 

賢二夫婦は土地を見つけH・Aホームを訪ね本田に建設することを伝えた

本田が設計を担当させて欲しいというので、任せることにした。ところが甘利がやってき設計を任せて欲しいという。賢二はすでに本田さんに任せたというと甘利の顔が不服そうに見えた。

 

賢二は元恋人の原友梨絵(里々佳)と久しぶりの逢引を楽しんでいた

これまでの賢二には考えられないシーンで驚いた。(笑)友梨絵は「離婚して、年明けたら彼氏と一緒になる、これが最後!」というお別れの逢引だった。(笑)

 

まほうのハウスが出来上がり、新しい住が始まった

ひとみは次女・ユキを出産していた。近所の主婦が子供連れでハウス見学に訪れた。親たちは部屋を見学、子供たちはかくれんぼ遊びを始めた。男の子が隠し扉から地下の真っ暗なエアコン室に入ってしまった。

 

このとき、賢二は友梨絵から携帯に送られてきたふたりの逢引映像を見ていた。驚いて、車で絵掛け由理絵に会って事情を聴く。「夫や夫の会社にも送り続け、自分を陥れようとしている」という。賢二は友梨絵と別れ、ひとみから言われていたエアコンの音について相談するためH・Aホームに出掛けた。甘利が対応に出て「家に何か?家族を大切にしてください」という。賢二は設計を頼まなかったことを甘利は根にもっていると思った。家に帰ると見学に来ていた家族が帰るところだった。ひとみが「男の子の具合が悪くなったらしい」という。

 

夕方、本田が「甘利が不躾なことをした」と屋罪にやってきた

本田はサチと縫いぐるみで遊んだ。このとき縫いぐるみが発するメロディーを憶えておく必要があります。ひとみが作った料理を食べて帰って行った。このとき甘利が訪ねてきていた。が、モニターには記録がない。

 

次の日、スポーツジムに刑事の柏原(中島歩)が訪ねてきた

柏原刑事は賢二の甘利との関係を聞き、甘利が昨夜の午後6時から8時の間に賢二のホーム付近の林の中で絞殺されたことを告げた。甘利に関わった人には全員事情を聴いているとして、ひとみについても聴いた。

 

賢二は友梨絵にカフェで会ってその後の事情を聴いた

「旦那は家を出た」という。友梨絵の携帯に呼び出しが入る。禍の彼女は「無言電話で1日何回も入る」と電話に出ない。賢二が出るとかすかなサチが遊ぶ縫いぐるみのメロディー流れていた。友梨絵は「奥さんにバレている」という。賢二は慌ててカフェを跳び出し自宅に急いだ。

 

賢二が帰宅するとひとみが抱きつき「家に誰かが居る。怖い!」と言い出す

監視モニターを点検するが何も写ってない。床に土片が落ちていた。エアコンの異音がする。

 

母の美子と兄の聡がホームを尋ねてきた

聡がサチを可愛がる。それにしても聡の悪人イメージの風貌には驚く。(笑)一緒に食事。サチのプレゼントを美子とひとみが買いに出かけた。聡が「お前が出て行って大変だ。俺がひとり守らねばならなかった」という。賢二が「こちらに来てから父には合ってないよね」と確認するが、聡は返事をしなかった。

 

賢二はサチが居ないことに気付いた。聡も見つからない子供部屋に居ない。隠し扉からエアコン室に入り探す。映像は真っ暗でサチの声は聞こえない。人の気配は分かるだけの映像

賢二はサチを救い出しベットに休ませた。聡が「女を見た、この子を狙っている。この家のそこら中にいる。天井にも床下にも」と言い出し、探し始めた。監視モニターには何も写っていない

 

出勤時、柏原刑事に捕まった

刑事が「あなたは友梨絵さんと不倫関係にあった?」と聞いてくる。賢二が認めると「友梨絵が脅かされていたのを知っていたか?」と聞かれ、「甘利だったんですか」と答えた。刑事は「友梨絵が2日前、自宅前で遺体で発見された。自殺か他殺かは分からない」という。賢二は「あいつは自殺しない」と強調した。

刑事が「何故脅かしたのが甘利と分かる」と聴くので「俺のことを恨んでいたからだ。矛先が俺に向いたと思った」と話した。刑事は「甘利を悪く言うのは貴方だけだ!」と云った。

 

ひとみはユキの世話をしながら、「誰かに観られている」と不安に駆られていた。

 

夜、賢二が帰宅するとひとみが「ユキがおかしい」と言い出す

「ユキは誰もいないところを見る。あの子だけが見える世界がある。赤ちゃんの瞳は真っ黒だから!」と言い、「友達があれ以来だれも来ない、この家にはお化けがいるから来たくないの」という。「家の中に何かが居る」と断言する。

 

ここで4つの監視カメラと建設時説明を受けたまほうの家立体模型、蜘蛛の巣の映像が示されるが意味が分からなかった。

 

賢二は東京に出張中。夜、母の美子から聡が居なくなったと電話が入った

賢二はひとみに「兄が訪ねてきたら入れてくれ!子供たちはどうしている」と電話した。するとひとみの「ユキ!ユキ!」と探す声がする。賢二が急いだ帰宅した。ホームは警察による立ち入り規制がなされていた。

 

柏原刑事から「家族は見ないほうがいい」と止められたが家に入り2階に上がった。そこには聡の刺殺遺体があった。刑事が「ひとみさんが探すうちにユキちゃんの声が聞こえ、来てみると聡さんの下にユキちゃんがいた。おそらく聡さんは犯人からユキを取り戻しひとみさんに返そうとしなもの。ふたりは病院にいる」と説明した。

 

「スイート・マイホーム」であったはずの清沢邸。とんでもない事件が次から次へと起こる

邸の建築に関わった甘利が絞殺され、サチとユキが何者かに誘拐されそうになり、奇行のある聡が刺殺される。ひとみは賢二と友梨絵の浮気を知り怒り悲しみの中で責めた不倫相手の友梨絵が不慮の死を遂げる。一体誰が犯人なのか?その理由は何か?分かったようで分からない!上手いミステリー展開だと思った

 

聡の葬儀が終ったとことでひとみが「聡さんがユキを連れて行ってくれたらよかった、2度と見ないで済む」と言い出す

 

賢二は実家に戻り兄・聡が潜んでいた押し入れに入り兄を忍んだ。兄はあのことを知っていたかと恐れる。ここで描かれる賢二の恐れはエアコン室に入って狭所恐怖症に陥ったときと同じものだった。賢二も父親によって狂わされていた。

 

柏原刑事から電話が入った

これからの被害防止を考えて、独断で話すというものだった。甘利殺しの犯人と友梨絵殺しの犯人は酷似している。その人物はお兄さんの犯人であなたの家に深く関わる女性ですというものだった。

 

賢二はH・Aホームに電話し本田を呼び出した

「本田は欠勤中で独身です」と電話の相手が応えた。賢二が「結婚して子供がいると聞いている」と話すと「本田は婚約者を亡くしてから妄想の世界を重ねその家の家族と生きる。婚約者を亡くしたのは地鎮祭の日でした。その後お腹の子も亡くした」と返ってきた。賢二は泣いた!

 

賢二はホームに戻った。府屋の中は荒らされていた

聡の言葉を思い出し2階の天井裏を調べた。ベッドに子供の人形が寝かされ、全ての部屋が監視できる監視モニターがあった。天井裏を下りるとユキの声が聞こえるのでエアコン部屋に入った。エアコンの温度がどんどん上がる。外にでようにも扉が閉められている。もはや限界というところで扉は開き外に出た。すると女性が近付き包丁を振りかざし「私たちにとってよくないことは時間を掛けてひとつひとつ取り除いてあげたのに」と襲い掛かった。(このとき警察が踏み込んできた)

 

賢二は病室で目を覚ました

柏原刑事が声を掛けた。「答えないでいい、勝手にしゃべる」と断わり、「甘利も友梨絵も聡も本田の仕業です自分の理想とする家族に近づくというもの。ユキを誘拐したのも理想とするため。本人の自白が取れないのが残念だ。玄関の花も本田が選んだもの、白い椿の花言葉は“理想の愛”だ」と喋った。

 

賢二は実家に母・美子を訪ね「父を殺したのは自分だ。兄は知っていたか?」と聴くと「あなたが私たちを守ってくれた。聡は貴方を守れなかったことを悔んでいた。無念を晴らそうとしていた」と応えた。

 

ひとみから「私たちは元に戻れるかな?今、家にいる」と電話が掛かってきた

賢二はホームに急いだ。そしてその結末は・・・・。

 

まとめ

スイート・マイホームであっても、何かが狂うと家族は崩壊する。人は狂うということがある、それはなにかが描かれていた

 

ラストシーン、妻のひとみが「私たちは元に戻れるか?妨害する人がいる、これなら見えないから大丈夫」とかざす“幸せの花”白い椿の枝に血痕が付いていた。原作を知らないので、この映画の文脈からひとみは次女ユキの目を潰したと思われ、完全にひとみが狂った状態で物語は終る

このシーンはいらないという感想を見ますが、この結末あっての作品だと思います。ひとみは何に狂ったか?これがテーマでした

 

この作品のキャラクターたちはどこかが狂っている。見た感じとやっていることが違う。嫉妬や恨みで人は変わるという人間の罪深さをホラーサスペンスで面白く描いたと思います。

 

窪田正孝、蓮佛美沙子、奈緒、中島歩、里々佳、松角洋平、窪塚洋の皆さんの演技、そう思えませんか。(笑)キャステイングが上手かった。中でも、奈緒さんには完全に騙されました。(笑)すばらしい演技でした。

 

サスペンスをどう描くか

斎藤工監督は徹底した心理の怖さを見せようとした。このために観る人に考えさせる、幅のある解釈ができるよう演出したと思います。ラストシーン然り、数度のエアコン室内でのシーンはほぼ真っ暗で何が起きているのか分からない、殺害理由の曖昧さ、時折見せるサチの顔など心理を読ませるためだと思っています。分かり難いと反論があるかかもしれないが、思い切ってやってみる、その若さを褒めたいです。さて次に何をもってくるか?楽しみにしています。

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