12年間かけて同じキャストで撮影した作品ということで話題になった作品。観る機会がなかったころに、WOWOWが放映してくれ観ることができました。

 

“何故同じキャストで12年間かけて撮ったか”。ボクの顔がどんどん変化し、その顔にその時の生きた記憶があり、“40歳を過ぎたら自分の顔に責任を持て“という諺が分かるような、甘くて苦い記憶が繋がった18歳の顔を見る作品だった。

 

何の変化もなかったような12年間(Boyhood)にこれほどの変化があったかと、そして人生の基本が出来上がる12年間だったという感慨に浸った。

 

親には感謝したいと思える作品だった。

 

監督・脚本:リチャード・リンクレイター、撮影:リー・ダニエル シェーン・F・ケリー、編集:サンドラ・エイデアー、音楽監修:ランドール・ポスター メーガン・カリアー。

 

出演者:エラー・コルトレーン、ローレライ・リンクレイター、パトリシア・アークエット、イーサン・ホーク、他。

 

物語は

米テキサス州に住む6歳の少年メイソン(エラー・コルトレーン)は、キャリアアップのために大学に入学した母オリヴィア(パトリシア・アークエット)に伴われてヒューストンに転居し、その地で多感な思春期を過ごす。アラスカから戻って来た父エヴァンス(イーサン・ホーク)との再会や母の再婚、義父の暴力、初恋などを経験し、大人になっていくメイソンは、やがてアート写真家という将来の夢を見つけ、母親のもとを巣立つ。12年という歳月の中で、母は大学教員になり、ミュージシャンを目指していた父も就職し、再婚して新たな子が生まれるなど、家族にも変化が生まれていた。(映画COMより)

 

第87回アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞ほか計6部門にノミネイトされ、助演女優賞を受賞した作品

 

あらすじ&感想

冒頭、2002年、校庭に寝そべっている6歳のメイソン。“6歳のおだやかな可愛い顔だった”。

 

彼を迎えに来た母親サマンサが担任の先生から「”宿題を出さない”と注意された」とを話す。メイソンはそんなことより壁にペイントで絵を描くことに興味があるのんびりした子だった。9歳の姉サマンサはちょっとおしゃまな頭のいい子で本を読むのが好きな子だった。

 

そこにアラスカから父エヴァンスが帰ってきた。好き勝手に暮らすヴァンスに「娘から母親になったから、遊ぶ時間も欲しい」と怒りをぶつけるオリヴィア。ふたりの言い争いが続く。子供たちにとっては不安な出来事だった。

 

食事時、オリヴィアは子供たちに「大学に戻っていい仕事に就く。お婆ちゃんがいるヒューストンに引っ越す。パパは好きだが一緒には住めない」と告げた。

ヒューストンでの生活はお婆ちゃんが子供たちの学校の送り迎え、オリヴィアは大学で勉強する。子供との遊びは週1回、エヴァンスに任せた。

 

エヴァンスは子供たちをボーリング場に連れ出して遊ぶ。子供たちはそんな父親が大好きだった。メイソンは運動ベタでガターばかり。そんなメイソンにエヴァンスは「人生は辛いこともある」と教える。(笑)

 

家に戻りTVを点けた。ブラックウォーター社の警備員がイラクで殺害された事件を報じていた(2004)。メイソンは8歳になっていた。しっかりした顔のメイソンだった。2年間のメイソンの成長はこの顔で知ることになる。

 

 

エヴァンスは「イラクと戦争だ。世界はそうなると知っていた。しかし、ブッシュはそんなこと屁とも思っていない」と話す。(笑)サマンサがすかさず「パパは汚い言葉を使った」と20セントを要求する。これにエヴァンスが応じる。メイソンは「パパはママと撚りを戻すの?」聞いた。エヴァンスは「アラスカで曲を作っている」と話した。この日もエヴァンスとオリヴィアは言い争った。(笑)オリヴィアの怒りが分かる。(笑)

 

オリヴィアはメイソンを連れて講義に出席。講師はビルだった。

講義が終るとオリヴィアがビルマルコ・ペレッラにメイソンを紹介した。ビルは「天才少年がいると思った、私の息子9歳と同じ年か?」と話す。メイソンはビルに好感を持った。ビルは男と女の子の子持ちだった。

 

オリヴィアとビルは結婚したメイソンは義兄と義姉を持つことになった。

 

子供たち4人は仲良しになった。ビルもジェスチャーゲームで笑わせてくれ、ゴルフも教えてくれるいいパパだった。しかし、勉学に忙しい妻オリヴィアに相手にされず、次第に酒に溺れるようになった。

 

遂に事件が起きた。長髪を刈られ丸坊主でハンベソのメイソンの顔、10歳だった

こんな中でもメイソンとサマンサはエヴァンスと会い植物園、野球見物を楽しんだ。夜はエヴァンスの家に泊まった。エヴァンスはミュージシャンのジミー(チャーリー・セクストン)と同居し、曲を作っていた。

 

ビルは子供たちに掃除など家事のことで小言を言い、スマホでオリヴィアと会話してないかとスマホを調べる。遂に、オリヴィアに暴力を振るうようになった。

 

オリヴィアはメイソンとサマンサを連れてビルの家を出て、シングルマザーの友人キャロル(バーバラ・チザム)の家族と暮らすことにした。そこには幼い女の子アビーがいた。

 

10歳のとき、メイソンは暗い顔で転校した

姉のサマンサは「私を捨てるき!」とオリヴィアに反抗する。メイソンは父エヴァンスが行うオバマ大統領候補支持看板(2008)を立て、マケインのものを引き抜く作業を手伝った。(笑)

 

この作業のあと、エヴァンスは「人生は戦う必要がある」と、メイソンとサマンサをカフェに誘った。サマンサがパーテイに参加すると聞いて、「パパの失敗を繰り返すな」と避妊法を説いた。13歳のサマンサは恥ずかしがった。メイソンは笑って聞いた。そこにエヴァンスの新しい恋人アニー(ジェニー・トゥーリー)が現れた。

 

エヴァンスはメイソンをキャンピングに連れ出し、恋の仕方を説いた(笑)

長髪で内気なメイソンに、「彼女にしっかり質問して、その答えをしっかり聞いてやれ、そうすればライバルを引き放せる」と教え、キャンプファイアーの火を小便で消すことも教えた。(笑)


メイソンは登校すると鏡で髪を整える高校生になった

メイソンが好きだという女生徒が現れパーテイに誘われる。

母オリヴィアは心理学の登壇に立つ人気の先生になっていた。そこで知り合った元兵士で学生のカジム(ブラッド・ホーキンス)が現れ、彼と結婚した。中古の家を買い改造した。

 

姉サマンサは髪を赤く染め、テキサス大に進学、家を出た

 

メイソンは上級生に呼び出され、性体験を試された。「経験はある」と応え、「娼婦がここに来たらやれる」と平然と答えた。本当に経験があったのかな?(笑)こいつらからマリファナを覚えた

 

父エヴァンスがメイソン15歳の誕生会を実家で祝うために車で迎えにきた

エヴァンスは妻のアニーと生まれたばかりの息子クーパーを連れていた。経済的に苦しいらしく「約束の車はやれない、自分で買え!」と言い、プレゼントは自分で編集した「解散後のビートルズだ」だった。(笑)そして祖母から聖書、祖父からライフル銃がプレゼントされ、射撃を教わった。サマンサも拳銃が打てるようになった。メイソンは写真を撮りまくった。

 

すっかり大人の風格のメイソ、授業をさぼって暗室で現像する

担任の先生(トム・マクテイグ)から、「写真の才能を認めるがプロになるには授業が必要だ」とたしなめられた。メイソンは将来、アート系の写真家になりたいと考え始めた

 

母オリヴィアが「来年大学だから」と家、財産の処分を考え始めた

家の修理で金欠になったという。義父ジムがメイソンのネイルを見て「自分で働いて車を変え!」と心無い言葉を吐く。オリヴィアは家計のやりくりで困っているらしい。これでジムとの関係も上手く行かなくなった。

 

メイソンはフットボールの写真を撮る。が、何を取りたいかが分からなかった。そんなときにパーテイで2年先輩のシェーナ (ゾーイ・グラハム)に出会った。メイソンは「誰にも指図されない世界にいて、好きなことができたら最高だと思っている。君といたら安心だ」とシェーナに告白した。シェーナは「あなたは変わっている」と言いながら受け入れてくれた。

 

メイソンはレストランでバイトを始め、ピックアップ車を買った。

 

父エヴァンスからスマホで次男が生まれたこと、そして「テキサス大に願書を出せ」と勧めてきた。

 

メイソンはピックアップでシェーナとデート

シェーナがシェアしている部屋で結ばれた。が、シェアしている子に見つかった。(笑)シェーナがラクロスの選手と付き合っていることが分かり、別れた。

 

メイソンは高校を卒業した。卒業祝いのパーティー

美しい気品のある母オリヴィアの「大学で学び良い人生を」で乾杯となった。父エヴァンスは「学費割引が利くテキサス大でよかった」と挨拶。サマンサは「頑張って!」だった。エヴァンスはオリヴィアに「お前のお陰でしっかり育った。ありがとう」と感謝を示した。

 

エヴァンスは友人のミュージシャン・ジミーが演奏するクラブにメイソンを招待。ジミーから卒業祝いの歌がプレゼントされた。

エヴァンスはメイソンがシェーナを失い失意しているとみて、「ラクロスなんか追っておけ!お前は鋭い感性を持っている。見る目のない女は放っておけ!特異なものがあれば女は選べる」と元気づける言葉を贈った。

 

メイソンがテキサス大学に立つ日、母オリヴィアが泣いた

 

メイソンはデンバーを離れテキサス大へ向かう中、開放感で一杯だった。

 

部屋はルームメイト選出システムで選んだ学生とシェアだった

ダルトンとパープのペア、そしてメイソンとニコール。ニコール(ジェシー・メクラー)がはダンス専攻だった。早速4人でハイキングに出発。夕日を見ながら、ニコールが「どうして皆は一瞬を逃すというの?私はなぜだかそれを逆に考える、一瞬は私たちを逃さない」という。メイソンは「分かる!時間は逃げない、一瞬というのは常に今ある時間のことだ」と返事した。

 

これが12年間かけて同じキャストで撮影した理由だった

 

まとめ

ストーリーは青春期、誰しもが経験するいろいろな出来事を12年分積み上げたもの。ユニークな父母に育てられたメイソンがアイデンティティを見つけ出す物語だが、結末は普遍的なものだった

 

同一人物が12年間に激しく変化する顔を見て楽しむ作品だった。

 

6歳のあどけない顔のメイソンがラストシーンで「時間は途切れない。一瞬というのは常に今ある時間だ」と見せる彼の顔。穏やかで理性の備わった大人の顔だった。 一瞬の今が連なって出来上がった顔、これこそが作品の目的だろう。

 

物語は何歳という区切りが曖昧で展開する物語

時の流れは連続している。年齢もそうだ。区切りは人がつけたもの。彼等の顔の表情や髪型の変化で彼らの成長を見つける、とてもリアルな物語になっている。これに戦争や政治、カルチャーなど時代の出来事が加わり、時代の中でどう生きているのかが分かるのも面白かった。

 

幼いメイソンとサマンサの成長にとって両親の離婚がどう影響するか

特に母親オリヴィアの2度の再婚・離婚に直面しながら幼いふたりが、そうでなくても難しい思春期を、性の問題や麻薬の誘惑の中で、どう成長していくかと興味を持って物語を追った。

 

自分の体験を追う物語でもあるところが面白い

 

親の背中を見て子は育つ

いい加減なところがあるが芸術肌の父親エヴァンス.が再婚し真っ当な親になっていく。大学で学位を取り自分の人生を生きていく母親オリヴィア。両親を見ながら、メイソンは父親に、サマンサは母親に似てくるところが面白い。

麻薬や性の問題で悪い方に陥らないのも、両親の生き様を目の当たりにして育った成果だったと思う。親には感謝しかない!

 

子供の成長を描いているが親の成長の物語でもある

大学に進学する息子メイソンに父親エヴァンスが語る「15年20年前の彼女が怒るのは当然だけどもう少し忍耐えてくれたら」という元妻オリヴィアへの想いの言葉、そして母親オリヴィアが「大学を出て、離婚して、何もない。子供を育てただけ!」と泣く。母親というのは辞めることが出来ない。成人として出発する息子に与える言葉、長い時を経て体験しただけに、泣けた!

 

エラー・コルトレーン、ローレライ・リンクレイター、パトリシア・アークエット、それぞれ12年間の成長が読み取れるすばらしい演技だった助演女優賞のパトリシア・アークエットのアは母親、大学生、そして教授、これに3度の離婚を経験する女性。激しい生活の変化を体型で表現する演技、圧巻でした。

 

ふたりの義父は堅物だが人間的な面白さがないこれに比して、実父エヴァンスは年をとっても顔、体系に変化しない、芸術肌のちょっと跳んだ父親だが、これを演じたイーサン・ホーク。(笑)これは楽しめた。すばらしい演技だった。

 

12年間かけて同じキャストで撮影した、映画としては異質な撮影法による作品、成功し十分な感動を与えてくれたと思う

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