映画「モリコーネ・・」(2021)を観て、モリコーネが本作で6度目の挑戦でアカデミー賞作曲賞を手にした作品であると知った。監督のクエンティン・タランティーノが「モリコーネはバッカ、ベートーヴェンに並ぶ作曲家である」と褒めちぎった作品、観ないわけにはいかない。(笑)

 

タランティーノ監督が独自のスタイルで過去の西部劇大作の再現に挑戦、70ミリのフィルムで撮影されワイドスクリーンで観る作品。

 

タランティーノは「荒野の用心棒」のセルジオ・レオーネ風の曲が欲しかった。しかし、モリコーネは同じことはしないと作った曲。さていかなる物語、曲になったのか。

 

監督:クエンティン・タランティーノ脚本:クエンティン・タランティーノ、撮影:ロバート・リチャードソン、編集:フレッド・ラスキン、音楽:エンニオ・モリコーネ。

 

出演者:サミュエル・L・ジャクソン、カート・ラッセル、ジェニファー・ジェイソン・リーウォルトン・ゴギンズ、デミアン・ビチル、ティム・ロス、マイケル・マドセン、ブルース・ダーン、他。

 

物語は、

南北戦争終結から数年後、冬のワイオミング州。賞金稼ぎのマーキス(サミュエル・L・ジャクソン)は標的3人を仕留めたが、馬車が立ち往生し、通りかかった駅馬車を止める。中に乗る客はやはり賞金稼ぎであるルース(カート・ラッセル)で、捕まえた女性犯罪者デイジー(ジェニファー・ジェイソン・リー)を運んでいた。マーキスは彼女を横取りしないと約束し、駅馬車に乗せてもらう。やがて駅馬車は新任保安官だというマニックス(ウォルトン・ゴギンズ)も乗せた後、“ミニーの紳士服飾店”に立ち寄るが、そこには怪しい男たちがいて…(WOWOWより)

 

砂塵ならぬ白銀に雪煙を巻き上げて疾走する駅馬車、荒野ならぬ密室での銃撃戦。モリコーネも困ったのではないかと思った。(笑)しかし、惨殺シーンに、これほどの美しい音楽がある西部劇を知らない。ストーリー、演出も仰天もので、そのラストにヘイトフルな男たちがアメリカの未来に一条の光を放つ、エンタメだけでは終わらない作品になっていた。(笑)

 

 

あらすじ&感想

雪原を走る駅馬車。

客は首吊り人と恐れられる賞金稼ぎのジョン・ルースと捉えた囚人テイジー・ドメルグだ。ドメルグには1万ドルの賞金が掛けられている。レッドロックで首吊り処刑するために生かして搬送中だ。

そこに同じ賞金稼ぎのマーキスが「馬の脚が折れた」と乗車を請う。マーキスはかって北軍の少佐でリンカーン大統領の手紙を持っているという。ルースはこれが気に入った。

 

次にレッドドックの保安官に着任するため急いでいるクリス・マニックスが乗車。マニックスは南軍の大尉だった。マニックスはマーキスが南軍の捕虜収容所から脱出した男であることを知って嫌悪する。

 

猛風吹のため、一行はミニーの紳士服飾店に退避した

 

店には4人の先客があった。巡回執行人のオズワルド・モブレー(ティム・ロス)、レッドドックの母に会いにきたカーボーイのジョー・ゲージ(マイケル・マドセン)、亡くなった息子の墓碑を作るためにやってきた元南軍将軍のサンディ・スミザーズ(ブルース・ダーン)、店を任されたというメキシコ人のボブ(デミアン・ビチル)。

 

首吊り人のルースは先客の拳銃を取りあげ御者に屋外のトイレに捨てさせた。そしてルースはヴォーレンに「この連中の中にひとりか、あるいは全員がドメルグを奪いにきている」と協力を求めた。マニックスはスミザーズに会えて感激ひとしおだった。

 

シチュウで食事が始まった。皆、たっぷりと腹に納めたあと、事件が起きた

 

食事後、手錠を外されたドメルグはギターを弾き歌い始めた。この歌が「ルースから逃げてメキシコに帰る」というもの。誰かへの合図だった。ルースは怒ってギターをぶっ壊し、自分の腕に手錠でドメルグを繋いだ。

 

ヴォーレンが椅子に座ったままの将軍スミザーズにシチューを勧め、南北戦争時の仇を討とうと、山で会った将軍の息子チェスターを雪の中で全裸にして引き回し自分の一物を咥えさせ射殺したことを話す。将軍が激怒して拳銃に手を掛けた、そこをヴォーレンが拳銃で射殺した。

 

ヴォーレンのスミザーズ射殺は正当防衛かの論議が巡回執行人モブレーと保安官マニックスこれにカーボーイのゲージが加わり始まった。

 

結果を待つルースがコーヒーを飲むと毒が入っていた。ルースが手錠で繋がるドメルグに大量の吐しゃ物を浴びせて大喧嘩。(笑)ドメルグが拳銃でルースを射殺した。御者も毒で死亡。コーヒーを飲もうとしたマニックスはこれに救われた。

 

ヴォーレンがボブ、モブレー、ケージの3人に手を挙げた状態で部屋の壁に向い立たせ「誰がコーヒーに毒を入れたか」と詰問を始めた

 

コーヒーを飲もうとしたマニックスには嫌疑なしと拳銃を持たせて援護させた。ヴォーレンは推論でボブを責め返事しないボブを射殺した。ヴォーレンが何故か?床下から射撃され重傷を負った。と同時にモブレーとケージが拳銃で射撃、マニックスが応戦した。それぞれが負傷した。

 

ここでナレーション(タランティーノ)により、当日朝、ミニーの紳士服飾店で何があったかが明かされる。(笑)

 

ドメルグを奪おうと弟のジョディ・ドミングレ(チャニング・テイタム)がボブ、モブレー、ゲージを連れてミニーの店で待ち伏せしていた。スミザーズ将軍は駅馬車で居合わせた客だった。

 

ジョディたちはミニー夫婦と従業員、さらに駅馬車の御者を射殺し隠匿した。凄惨なシーンだった。武器を隠し、部屋にボブ、モブレー、ゲージ、客のスミザーズ将軍を残し自分は床下に隠れてドメルグの到着を待っていた。

 

ヴォーレンがドメルグを担保に床下のジョディを誘い出し射殺した。ジョディの返り血を浴びた悪魔の形相のドメルグが「私が次のリーダーになるギャング団」と名乗り、マニックスに取引を言い出した。「ヴォーレンを殺し、風吹の終るのを待って自分を逃がせ!ボブ、モブレー、ゲージは偽名で大きな懸賞が掛かっている大物だ」と明かす。

 

マニックスは自分の任務を考えドメルグの取引を断った。ヴォーレンと協力してモブレー、ゲージを射殺した。ドメルグを射殺しようとするとヴォーレンが止めた。「極悪人を無くするにはルースが言うように吊るすことだ!」と。これに怯えたドメルグが唾がっているルースの腕をナタでぶった斬って逃げ出す。ヴォーレンとマニックスは協力しドメルグの首にロープをかけて天井に吊るした

 

疲れ切ったヴォーレンとマニックス。マニックスがリンカーン大統領の手紙を見たいとヴォーレンに求めた。

手紙には「君のような人間が次の世を作る。黒人だから伝えられる。いつも心に残る、将来君に会いたい・・・」とあった。マニックスは「創り話だ、次のアメリカに」と笑った。(笑)

 

まとめ:

タランティーノ監督の遊び心一杯の作品だった。とにかく面白かった!

 

冒頭、馬車の中でヴォーレンがリンカーン大統領からもらったという手紙がラストで負傷し息絶え絶えのマニックスが読み「良い文章だが、すべて嘘だ。次のアメリカに」と、かって南北戦争で戦った黒人兵と白人兵が邂逅するシーン。懸賞稼ぎと強盗団の決闘映画にこの結末、唸るいい結末だった。

 

何をやらかしてるかというシーンの連続滅多やたらにガンをぶっ放し、汚物と血まみれの決闘シーン、ヴォーレンが白銀の中で全裸のチェスターを追い回し犯すシーン、しかし、このシーンが一番美しかった(笑)この発想はこの監督でなければできない。これに音楽をつけたモリコーネも凄い。(笑)

 

かと思えば、白銀の中を疾走する駅馬車の美しい映像、これにモリコーネの逸る音楽。張り詰めた殺気のなかで、ピ~ン、ピ~ンと奏でる音、もう最高だった。音楽の気高さが光った作品だった。

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