京アニ作品の美しい絵とももに描かれる人の優しさが恋しくてDVD鑑賞です。

 

聲の形とは聾者が発する「ご・め・ん・な・さ・い」「お・と・も・だ・ち」の声が健常者にどう受けとられるか、その形ということ。この受け取り方でいじめが起きる。

 

小学6年時に、転校してきた聾の女の子と彼女を虐めた張本人の男の子を主題に、この虐めに関わったあるいは無視、同情した生徒たちが、その後高校生となり聾の子と再会したとき、彼らの関係がどう変化していったかが繊細に描かれた作品。

 

原作:大今良時の漫画「聲の形」、監督:山田尚子、脚本:吉田玲子、総作画監督:西屋太志(故人)。絵コンテ:山田尚子、三好一郎、山村卓也さん、音楽:牛尾憲輔。

 

声の出演者:入野自由、早見沙織、悠木碧、小野賢章、金子有希、石川由依、潘めぐみ、豊永利行、松岡茉優、他。

 

 

あらすじ&感想

高校生の石田将也(入野自由)はアルバイトを辞め、預金を降ろして母に渡し、水門橋から川に飛び込み自殺を試みるが、死ねなかった。彼は小学校6年時転校してきた西宮硝子(早見沙織)を虐め、これが公にされ、以後逆にクラスから虐められ、中学になっても付き合ってくれる人もなく、彼自身が人を受け入れられなくなっていた。また、西宮の補聴器を壊した代償として理容師の母親に170万円もの金を支払させたことも大きな重石になっていた。

 

 

小学校6年生時

石田(松岡茉優)は、母子家庭で、毎日が勉強より友だちと遊ぶのが日課で、遊びのリーダーだった。目出たがり屋で、聾の西宮を悪意で虐めたのではなく、西宮の発する「ご・め・ん・な・さ・い」に戸惑うクラスの人たちに、恰好いいところを見せたかった。石田は自分が噴水池に投げ込んだ西宮の筆談ノートを誰もいなくなって必死に回収したことや母親に賠償金を払わせたことに痛みを感じる子であった。

 

 

石田の虐めにクラスの植野直花(金子有希)は加担し、佐原みやこ(石川由依)はこっそり筆談ノートに書き込みをして西宮に協力川井みき(潘めぐみ)は見て見ぬ振り島田一旗(西谷亮)は強制されてやったと証言する。

 

石田が転入して5か月後「虐めで補聴器が壊された」という西宮の母親からの訴えで、石田の罪が明かされ、西宮は転校していった。西宮が5か月もいじめの中で登校していたことを考えると転校は西宮本人ではなく母親西宮八重子(平松晶子)が決めたことだった。

 

高校生になって

高校生になった石田には自殺したいほどの罪悪感に苛まれていた。あの日西宮が「お・と・も・だ・ち」と話した意味は何だったのかと気にしていた。偶然手話教室を訪れたことで西宮に出会い、小6の時噴水池に投げ入れた筆談ノートを返し「友達になってくれ!」と申し入れたが、西宮の妹・結絃(悠木碧)の強いガードで会せてもらえない。

 

そんなとき、虐めにあっているクラスメートの長束友広(小野賢章)を救ったことで、石田と長束が友情で結ばれた。長束の活躍で、結絃のガードをくぐり抜け、西宮に会うことができたが、筆談ノートを川に落としたことで、二人が奇しくも川の中で再会した。このとき石田が見た西宮の脚が彼には眩しかった!(笑)

 

これが切っ掛けとなり、ふたりは遊園地で遊ぶようになり、西宮は石田に特別な気持ちが出てきた。ふたりの行動が小6年生のころの友人たちの評判になり、再び当時の虐めと向かい合うことになった

 

 

 

 

川井が「西宮を虐めた全責任は石田さんが負うべきだ!」と言い、そして植野(金子有希)は「それはおかしい、私は笑って同調していた」と、植野は西宮にも責任があると考えていた。佐原は「石田も植野も怖かったから何も言えなかった」と言い、川井の紹介で親しくなった真紫智は「ひど過ぎる!」と石田を非難した。

 

みんな自分が可愛い。虐めの責任を全部石田が負うことになり、再び彼は心を閉じてしまった。そんな石田に西宮は「私と一緒にいることは石田を不幸にする」と伝えた。

 

美しい花火も西宮にとっては開く音のない花火だった。途中で家に戻った彼女が採った行動はアパートからの飛び降り自殺だった!

 

そのとき石田が落ちる寸前の西宮の手を掴まえ、「どうかもう一度俺に生きる力を貸してくれ!」と叫んだ。この声を聴いた西宮が石田の手を引っ張った。その反動で石田が落下、幸い落ちたところが川の中だった!しかし石田の意識不明で戻ってこなかった。

 

西宮は自分の行動で石田が傷ついたことを後悔した。土下座して石田の母親石田美也子(ゆきのさつき)に詫びた。病院に見舞いに来た植野は「なぜ傷つけた!頭の中でしかものを考えられないようなやつ!腹が立つ!」と西宮を蹴とばした。これを救ったのは石田の母だった。

 

西宮は「石田君が築き上げたものを壊してしまった。私がもう一度取り戻したい!」と、皆に謝って廻った。しかし、植野は会おうとしなかった。しかし、このことが西宮を強くしていった。

 

西宮は「いつか石田は目覚めて水門橋に来る」と思っていた。石田も眠りのなかで同じように脳が働いていた。石田が目覚め夜の街を走り水門橋に駆けつけた!

 

 

回復した石田は西宮を文化祭に誘い、かっての仲間たちに会った川井は「まだ完成していないが」と言い添え千羽鶴を石田に贈った。石田は「それで良い!」と受け取った。佐原は「石田君は大変だったが変わっていない」と声を掛けた。石田が「そうかな?」と応えると、植野が「そんな深刻な話はしてない!バカ!」。その時、西宮が「バ・カ!」と怒った

 

石田は「みんなにお願いがある」と自分から仲間の中に入っていくことで、受け入れられることを知った

 

まとめ:

虐めた石田はその行為を恥て死を選んだが死に切れず、手話を学び弱者を助けるまでに成長した。一方の西宮は優しくなった石田を受け入れるが、聾であることが石田を苦しめると悲観して自殺を試みた。しかし、この行為が石田を傷つけたと“昔の仲間に批判され”、これに堪えることで強くなっていった。

 

絶対に弱い立場の人を傷つけてはならないし、弱いということで卑屈になってもいけない。すべては自分の心の持ちようで“心を開くことの大切さ”を教えてくれる作品でした

 

石田も西宮も仲間がいて成長した。どの生徒も、良いとか悪いとかかでなく、友達がいて成長する。どの生徒にも愛情を持って描かれているのがいい。悪に見える植野の強い個性があってこそ、この作品は生きている。

 

皆の心が解けていくことに、長束と西宮の妹・結絃の存在が大きかった。特に結絃が石田に招かれて家族に会い、帰りに赤い傘と靴を貰って、その赤い傘で壁を作って石田の本心を聞き出すシーンが美しく心の籠った描写で京アニらしい印象的なシーンでした。そこにいた西宮の母親が石田に殴りかかるが、目にすることだけで判断してはいけないことを教えてくれます

 

京アニのアニメらしく、水や花・動物をメタファーに命の大切さを、そして空や夜、雨などの自然、音、音楽、色彩の変化でキャラクターの繊細な感情を表現してくれ、はっとするような京アニ作らしい美しい映像に驚かされます!

 

西宮硝子の聲の表現、リアルで早見沙織さんの努力が伺えました!

 

こんなに精細な作品を世に送ってくれる京アニ社が、とんでもない事件に捲き込まれたことが残念でなりません。すばらしい作品で再登壇される日を楽しみにしております。

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