私が生きた人生の中で、ただ一人 天女と思う人がいる。父の兄さんの
娘さん。美〇子さん。私が 小学5年生、母が届けて来てと言ったので
上流の方へ 15分位 歩いて行った。"ごめんください " と言うと
縁側を 美〇子さんは かけてきた。"まあ 〇子さん、いらしたの "
やさしく 語りかけてもらった。映画のように ここだけ 記憶に
残っている。彼女は 19才だった。後年、私は 気づいた。
この言葉はおかしい。長崎弁なら "〇子ちゃん、きんしゃったとう "
こう 言うべきなのだ。父の兄さんのお嫁さんは、標準語を使うよう
強制していたと思う。美〇子さんは、気立てが良くて やさしいと
ほかのおばさんたちも 皆 言っていた。だから 美〇子さんは
自分の母親に 反抗などできなかったろう。父の兄さんは、エリート
サラリーマンだったから お金はあった。おばさんも 和裁ができたから
近所の農家の娘さんたちの 着物の仕立て代で 子供さんたちの
大学を出していた。