【73】
2010(H22)年の話です
今日が何月何日か…
質問された時に答えられるように
父が
予習していたこと
間違ったら恥ずかしい と言っていたこと…
訪問診療の日
来てくださった先生に
そんな父の様子をお話しすると
そりゃあ
気の毒なことしたね
今日が幾日か なんて…
そうだね
あんまり
日にちは関係ないか
と言ってくださった
新しく
かかりつけ医になってくださった その先生は
穏やかで
どちらかというと のんびりとした方
父や母と話す時も
急(せ)かしたり
遮(さえぎ)ったりしない
以前の先生のように
強く言い聞かせようとしたり
無理矢理 従わせようとしたりもしない
ちゃんと顔を見て
話を聞いてくれていたしね
父は
私から見ると
几帳面な性格で
細かなところまで
きっちりと
自分でやらないと気がすまない人
今まで ちゃんとできていたことが
段々と
ぼんやりとしてきて
以前のようにできなくなってきた
わからなくなってきた
それを自覚した頃から
父の中には
焦りや
不安や
恥ずかしさや
色々な気持ちが
溢れていたんじゃないかなぁと思う
ぶつぶつ と
ひとりごとを言っていた母を
当初 私が心配していた時
近所の人に知られたら 恥ずかしいだろう
とまで言った父
自分まで
そうなってしまったかもしれない
なんて
そんな事は知られたくないし
隠しておきたかったのだろうと思う
今日は何月何日だの
何曜日だの
あやふやになってきていることを
あえて
本人に言わせようとする この質問
わからないということを…
言えないということを…
はっきり本人に自覚させて
益々 不安にさせて
更に
自信をなくすように仕向けているみたいで…
なんでわからないんですか? と
責められてもいるみたいで…
私は ずっと嫌だった
多分
父も嫌だったのだろうと思う
以前の事業所では
一切 答えない時もあったから…
そして必ずそのあとで
馬鹿にしている
と怒っていた
認知症の人にだって ちゃんとプライドはある
恥ずかしい
と思う気持ちだって ちゃんとある
それを
平気で無視するようなことをされたら
良い気持ちはしないよね
新しいかかりつけ医の先生になってからは
質問という形ではなく
なにげない会話をしながら
父や母の様子を聞いてくださっていた
今日が何月何日か…
あの先生は聞かなかったな
先生が訪問診療から帰られた後
にこにこしながら
そう言っていた父は
負担に思っていたものが 一つなくなって
少し 気持ちが楽になったのか
ほっとしているように見えた
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