雪国というと・・・・いうまでもなく、ちょっとオーバーかもしれないが、まあ・・・・・川端康成である。

ノーベル賞作家でもある。

何故か、自殺もしてしまった。

その代表作のひとつが、雪国である。

 

 

だが・・・・・私は『雪国』を読んでいない。

少なくとも完読はしていない。その一部をさらっただけ、というのが実際だろうか。

多分、そのホンの一節を教科書の中などで僅かに知ったのだろう。でも・・・・ま考えてみると、筋書き的に多くを教科書に載せるようなものではないかもしれない。

 

それにしても・・・・こんなに有名な小説で、こんなに読まれていない?本も珍しいかもしれない。

 

 

雪国は、こんな書き出しで始まるのですね。

 

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。

(この国境・・・・というのを、多分、こっきょう、と読んでいたと思う。だが、こっきょうのはずもない。くにざかい、ということであろう。藩の境は、国の境であった時代の名残りなのであろう。)

夜の底が白くなった。

信号所に汽車が止まった。

向側の座席から娘が立って来て、島村の前のガラス窓を落した。雪の冷気が流れこんだ。娘は窓いっぱいに乗り出して、遠くへ呼ぶように、
「駅長さあん、駅長さあん」

明りをさげてゆっくり雪を踏んで来た男は、襟巻で鼻の上まで包み、耳に帽子の毛皮を垂れていた。

もうそんな寒さかと島村は外を眺めると、鉄道の官舎らしいバラックが山裾に寒々と散らばっているだけで、雪の色はそこまで行かぬうちに闇に呑まれてい た。
「駅長さん、私です、御機嫌よろしゅうございます」
「ああ、葉子さんじゃないか。お帰りかい。また寒くなったよ」
 

 

 

『雪国』は、文筆家で妻子持ちの島村と芸者の駒子が、互いに惹かれあうお話。親の遺産で自由気ままに暮らしていた文筆家の島村は、汽車で雪国へと向かっていた。
その汽車の中で、病人の男を見かけた島村。そして、男に付き添う若い娘に心惹かれるのだった。

 

まあ・・・・・大した筋書きの本ではないと言ったら、申し訳ないが、これがノーベル賞に値する小説か・・・・・正直、よく分からない。あるいは、ノーベル賞の対象になったのは、他の小説であったのかも知れない・・・・・良く分かっていない。

 

 

 

何だか・・・・・良く分からないが、題名と、田舎の雪景色という情緒性で、賞を得たと言ったら怒られるだろう・・・・・。それだけ、雪というのは・・・・・昔から、雪女とか・・・・もあるし、雪は人々に様々な思いを呼び起こしてくれる何かがあるということか。

 

実際、私なんか、こうして妻と二人で雪景色を見たいというだけで、どこかに泊まるというわけでもないのに、電車に乗って雪景色を見たいという、単にそれだけの呆れるような理由で、会津若松まで日帰り往復したのですからね・・・・それに・・・・・こうして、何ということもなく、妻と二人で、何のこだわり、気遣いもなく、雪に覆われた素朴な田舎の世界を眺めていられるというのは・・・・・まあ、これがようやく・・・・何十年かの夫婦生活の末に、たどり着いた、われらの老境・・・・・。

まことに楽しかるべし。

 

(第11906回)