かつて、田中角栄という政治家がいた。

昔の小学校卒で、首相になった人物である。

 

学校の制度ができてから首相になった唯一の人物である。

百姓出身で天下をとった豊臣秀吉にちなんで今太閤などと大いにはやされたものである。

 

 

東京新聞の一面コラム「筆洗」で田中角栄のことを書いていた。

新潟越後の生まれの田中角栄元首相は通産相時代、就任間もない秘書官が岡山出身と知ると「君にとっては雪はロマンの世界だよな」と語ったという。

そして、こう続けた。

「トンネルを抜けたら銀世界が広がっていて、それを愛でながら酒を酌み交わす川端康成の『雪国』みたいなイメージだろう。だがな、俺にとっては生活との戦いなんだ」

住まぬと分からぬ苦労があるという事だろう。

 

 

まあ、何というか・・・・・田中角栄は偉人と言われ、あるいは天才とも言われた、大変な人物でしたね。

元気もありました。元気もありすぎたかもしれないが・・・・若き日の田中角栄は「新潟と群馬の境にある三国峠を切り崩してしまう。そうすれば、日本海の季節風は太平洋側に抜けて、越後に雪は降らなくなる」と、『三国峠演説』で語ったという。

いかにも田中角栄らしい壮大な演説ですね。

 

 

田中角栄は、膨大な蓄財をし、それは娘の真紀子女史などに受け継がれた一方で、最後は汚職で逮捕とか散々な状況でしたが、彼が戦前に上京したとき、越後の実家は多くの田舎の家がそうであったように貧しく、それこそ親は持たせるべきお金もなく、風呂敷包ひとつを背負わせて息子が上京するとき、母親は息子に警察に捕まるようなことがあれば、身一つでも田舎に帰って来いと伝えて、故郷の雪景色の中から見送ったそうだ。

それが唯一の餞別でしたね。

母親の言葉が見事に当たったというのか、母親の言葉の通り、息子は検察に追われることになった。

 

 

 

田中角栄失脚事件については、根強いのは米国陰謀説というのがあるのですね。物おじしないで発言していく。その姿勢が米国に嫌われたからだというのは、なかなか説得力がある。民主党政権の鳩山首相が失脚したのも、母親からのおカネの贈与というのもあるが、根本は沖縄問題絡みの米国関与説が根強い。

だから・・・・・どの日本の首相も、いずれも米国には殆ど一切モノを言うことができないのは、案外そういうことなのかもしれない。皆さん、骨身にしみてというか、占領時代の米国の意向を受ける習性から絶対的に抜け出せない外務省辺りに徹底的に抑え込まれているというのは根拠のない話ではない。

それがヨーロッパと米国との関係とは、まるで異なる信じがたい外交関係、植民地と宗主国のような異常な戦後日本政治の現実を作り出してしまったのだろう。

米国大統領は来日するとき、いきなり横田基地から日本に入り込んでしまう。こんな失礼な話はないですね。個人の家でも、裏口から勝手に入ってきて、いつのまにか奥座敷に座っているのと同じことですからね。まさに勝手知ったる他人の家という状態です。傍若無人というか・・・・・そういう状態なのに、米国とこの上の一体化をを進めたいと、麻生自民党副総裁(元首相)が岸田首相の米国訪問の前に、近日中に米国に行って『講演』などをして地ならしをして、一層の親善友好を深めるというのは、一体どういうことなのか・・・・一層の隷属関係を深めるって、一体、どういうことなのか…信じがたい『友好親善』です。単なる奴隷化でしかなあいのです。

 

まあ、まことに寂しい話だが・・・・・このシリーズに田中角栄が登場したのは、角栄少年が雪深い越後から風呂敷包ひとつで雪深いところから上京し、とにかく大成し今太閤とか言われたのは、まさに立志伝中の際立った面白さであり、それが雪深い越後の少年であったのは、単なる偶然ではないと思ったからである。

 

 

越後については、もうひとつ思い出すことがある。

少し小さい話だが・・・・・。

 

もう・・・・・30年以上前に、無論、私が、まだ現役の頃でしたが、友人数人と雪見酒をしたいという相談がまとまり、選んで行った先が新潟の村上というところでした。

新潟市から電車を乗り換えて日本海沿いに北上したところに、村上があるのですが、新幹線で新潟に着くまでは、まことに順調でした。

途中の湯沢などは、もう大変な大雪で雪以外何も見えない有り様で、これなら雪見酒は絶対、大丈夫、間違いなしと、雪見酒の前途にほそ笑んだものでした。

 

ところが・・・・新潟に着く頃になって、にわかに雪見酒の雲行きは怪しくなって、新潟駅に着くころには、殆ど雪の姿が無くなっていたのです。

ときおり、雪がチラホラ降るだけになってしまっているのです。

 

真冬の越後で、こんなことって、あるのかしら?

村上に着くころには、どうみても・・・・・雪見酒は難しいということで、間違いなくなっていましたね。

まあ・・・・・とにかく、無いものはない。仕方がない。

障子を閉めたお座敷での宴会となりました。

 

帰路には・・・・・何という銘柄であったか、4合瓶で4000円という高級日本酒を自分たちへのお土産に買いこみ、地元に戻ってから、それで残念会をしたものでした。

 

 

このところ・・・・・北陸は超大雪の情報が出ていますね。

田中角栄が、あの山々を削っていれば、こういう大雪にはならなかったのかも・・・・・・。

 

それがよいことかどうか・・・・・それは分からない。

 

(第11900回)