息子は信州、松本に落ち着き、娘は東京のマンションにいる。

娘は独り身で、以前は家から遠いところに居たが、マンションに移る際は親の事を考えたのかどうか分からないが、電車に乗って30分程の駅上のマンションに移り住むことになった。まあ、それでも、行くとなると、家からは一時間位かかってしまう。

 

娘が会社の長期出張でオーストラリアに出掛けていた時は、2週間に一度位は空気の入れ替えを頼まれ妻に同伴で通っていたのである。向こうでランチ食べながら通っていたものである。まあ無償奉仕みたいなものであったが、いい運動にはなったかもしれない。

以前、松本から息子が帰って来た時に、息子が妹に親たちのことを頼むよと言っていたのを妻が耳にしてからというもの、比較的実家に帰ってくることも多くなってきたような気もするが、娘も何かと用があるらしく、そう頻繁というわけにも行かない。

とにかく、今は、夫婦二人が曲りなりとも元気で過ごせるのが、何と言っても一番。これに優ることはない。

 

 

 

 

だが・・・・いずれは同時に、というわけにもいかない。

我が家の娘は妻に、パパを一人残さないでと言うらしいが、無論、私も一人では残りたくない。

一人になる位なら、生きていたくない。

だが、しかし・・・妻を一人残すのも大いに心残りである。これは誠に難しい問題である。

難問極まりない。

いくら考えても答えは出ない。

 

 

 

以前見た作家の瀬戸内寂聴さんのテレビの追悼番組で、寂聴さんは、ご主人を東日本大震災で業務遂行中に亡くされた方の質問に対し、こう答えている。

夫婦でも、いくら愛していても二人一緒というわけにはいかない。人間は生まれてくるときも一人、死ぬときも一人。二人一緒に死ぬことは出来ない。

 

確かにそうだ。それは分かっている。

しかし・・・・実の姉も、義理の姉も、この数年のうちに夫を先に亡くしているが、やはり二人とも寂しいようである。

それは当然ですよね。

その寂しさは、他の誰も慰めてあげることはできない。例え、子どもであっても・・・・。

いつも傍にいて、何か話し掛ければ返事が返って来たのに、その返事がもう絶対に返ってこない・・・。親よりも長い人生を、親よりも密度の濃い時間を過ごして来た間なのですからね、それが永久に帰ってこない・・・・。

 

近所の同年配の夫婦でも、どちらかというと、お父さんの方が先に逝き、奥さんが残るケースが多い。元々、一般的に、夫の方が概ね年上なのだから、どうしてもそういうことになり、妻が独り残っているケースが多くなるようだ。

傍からみると、いくら妻が生活のベテランというか、日常生活の過ごし方で奥さんの方が巧みであると言っても、特に聞いたことはないが、それでも一人の生活は寂しいという印象を受ける。

例え、夫が重篤な病床にあっても、夫の介護に頑張っている奥さんは、ご苦労であるのに、どこか活力に満ちているようにも見える。そこが男性と違うところかもしれない。そういう力強さが女性には及ばないところが、男性にはあるようだ。

 

 

 

 

(第12049回)