「ワーキングプア」についての本
「ワーキングプアは自己責任か」 門倉貴史 大和書房 2008
年を読んだ。
興味深かったのが、筆者がここで取り上げているワーキングプ
ア対策としての政策。
1つ目は、「べーシック・インカム(基本所得)」という考え方。
これは、欧州で生まれた新しい考え方で、「国家が、すべての国
民に、安心して生活できる最低限の所得を個人単位で給付する」
という考え方だそうだ。
現在の社会福祉制度のもとでは、生活できない低所得者のため
に生活保護制度があるが、これは、受給者が「社会的な落伍者」
というレッテルを貼られた目で見られるという社会的排除の問題
や、また、受給決定に当たっての基準や審査にコストがかかると
いうデメリットがある。しかし、すべての人が一定の金額を給付さ
れる「ベーシック・インカム」では、そのような問題はない。
政府が全ての国民に給付する「ベーシック・インカム」の原資は、
現在働いて所得を得ている人から税金として徴収する。(その際、
各種の税金控除はすべて排除される) そしてもちろん、働いて
税金を納めている人たちにも政府から「ベーシック・インカム」が
支給される。
この方式だと、まず、すべての国民が最低限の生活を保障され
るので、いくら働いても報われない「ワーキングプア」が消滅する
という。
また、最低限度の生活が保障されるので、誰もが自分のやりたい
こと、得意なことを仕事にすることができる。雇用のミスマッチの
問題も解決する。
その他にも、メリットはたくさん挙げられているが、これが実際に
実現可能かどうかというと、マジョリティである中間層の人たちの
合意を得ることが最大の課題であり、政治的には難しいという。
しかし、この「ベーシック・インカム」という考え方は、働く意味を
根底から覆すことになる発想である。これまでは、生きるために
働くというのが常識だったが、この考え方だと、生きるために働く
という意味はなくなり、働くことそれ自体が喜びになる。働くことに
よって充足感を得るというのが「ベーシック・インカム」の世界だと
いう。
なんと、素晴らしい考え方でしょう
こうした発想が、日本の
政治家たちに浸透してほしいと切に願う。
2つ目は、「ベーシック・インカム」からさらに派生して登場した
「ベーシック・キャピタル」という構想。
「ベーシック・インカム」と「ベーシック・キャピタル」の違いは、前者
が「フロー」概念である『所得』を保証するのに対して、後者は、
「ストック」の概念である『資産』を保障するという点であり、
「ベーシック・キャピタル」の方がすぐれた点が多いそうだ。
たとえば、「ベーシック・インカム」では、早く死ぬ人は、長生き
する人より受け取り額で損をするが、「ベーシック・キャピタル」では、
誰でも成人になれば一律に同額の資産が給付されるため、寿命
の長短による損得勘定の問題は発生しない。
また、「ベーシック・インカム」では、定期的に決まった額が支給
されるため、特定の時期に消費を増やしたり減らしたりすることが
難しいが、「ベーシック・キャピタル」では、与えられた資産を自分
の好きな時期に消費に回せるので、消費活動の時間的自由度が
高まるという。
「ベーシック・キャピタル」の原資は、当初は富裕層に財産税を課
すことによって調達するが、一定の時期を過ぎると死亡時の金融
資産の返済を原資にすることが可能になるため財産税は廃止さ
れるという。
これまた素晴らしい考え方![]()
地球上の全ての人が、幸福に生きるための政策としてこのような
構想がすでに考えられていることに感動した。
それにしても、問題は、このような構想を政治的に実現できるかと
いうことだ。
どんなに素晴らしい社会構想も、必ず利権者の反対にあうから。
ともかく、「ベーシック・インカム」「ベーシック・キャピタル」という
2つの考え方を知ることができた点で、大変面白い本だった。
デンマーク社会についての本
「なぜ、デンマーク人は幸福な国をつくることに成功したのか どうして日本では人が大切にされるシステムをつくれないのか」
ケンジ・ステファン・スズキ 2008年 合同出版
を読んだ。
この本を読んで、デンマークという国は、人々が幸福に暮らせる社会システムというものを本当に良く考えてつくりだしているという感じがした。
教育システム、公平な税の徴収方法、地方自治、医療制度、職人の労働条件を守るシステム、高齢者の社会福祉等々、あらゆる面で人々が安心して暮らせるような社会システムがつくられ機能していて、本当に素晴らしいと思った。
いくつかあげると、
教育は原則無料。大学はすべて国立。18歳からは国の扶養を受けることができ、大学に通う国民には「国庫」から「就学支援金」として月額(日本円にして)約10万円が支給される。大学入学試験もなく、高校卒業資格がそのまま大学入学資格になる。だから、高校卒業後社会で働いて何年か実務経験を積んでから大学に入ることも自由。
地方自治が確立しており、企業も日本のように首都に本社をもつという考えがない。中央政府に迎合しないので、官僚の天下りもない!
医療費は無料。難病で億単位の医療費がかかる治療でも全部国が負担してくれる。子供が入院して付き添いが必要な場合でも、病院のそばに付き添い者用の無料の宿泊施設があり、無料の食事が提供される。また、付き添いのため仕事を休んだ場合の給与も国庫から補填され、長期入院の介護のために家族の誰かが仕事を辞めざるを得なかったりすることもない。
個人が起業するとき、日本のように連帯保証人を求められることなく、銀行から資本融資を受けることができる。
なんか読んでいて、デンマークのような国ならば、人々が本当に安心して生きていけそうに思った。このような社会システムなら、年間3万人以上もの自殺者が出ることもないし、安心して年を取ることができるだろう。
日本は経済的に豊かになったといっても、どうしてこんなに生きにくい社会なのだろう。教育費は高いし、正社員になれないなれずに将来に希望を持てない若者が増えているし、年金記録が消えて泣き寝入りせざるを得ない高齢者もいる。
税金を納めても、その使われ方があまりにひどい気がする。
たった5分~20分くらいの時間短縮のために、莫大な税金を使って新幹線をつくる。地元の人にとっては在来線の方が生活に便利という声があっても、あの手この手を使って反対派を封じ込める。こんな狭い国土で、電車の移動で充分な地方にまた莫大な税金を使って、飛行場をつくる。
どうせつくるなら、高齢者のための施設をたくさんくつくってほしいのに、福祉予算は削られる一方…。
なんだかな~。
日本も、みんなが生きやすい社会になってほしい。