おはようございます!
年金アドバイザーのhirokiです。
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本日6月19日20時の「第351号.どうして現在の年金受給者の年金額の伸びを抑制したり、厚生年金加入を拡大したりしようとするのか」
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では本題です。
年金の上げ幅が抑制されたり、厚生年金に加入を促進させたり、国民年金加入を20歳から60歳までを65歳までの45年間を強制加入にしようとしたりという流れがあります。
こういうのを見ると世間では年金財政が厳しいから年金額を抑制したり、保険料を払ってくれる人を増やそうとしてるんだという声があります。
確かになんとなくそのように見えてしまいますが、本質はそこではありません。
じゃあなんでこんな事を進めようとしているのかというと、今現在の若い人達が高齢になって年金を受け取る時に、できるだけ高い水準の年金を受け取る事ができるようにするためです。
そんな事言われてもキツネにつままれたような感じになるかもしれませんね。
でも実際はそうなのです。
年金額を抑制しているとか国民年金の強制加入期間の40年から45年への延長というのは話が長くなるので、ここは6月19日と26日の有料メルマガに任せるとして、ここでは厚生年金加入の促進について少し触れます。
厚生年金に加入できると国民年金から支給される老齢基礎年金(20歳から60歳までの40年完璧に加入した場合は年額最大816,000円)を受け取ると同時に、報酬に比例した年金である老齢厚生年金を受け取る事ができます。
国民年金だけだと40年間完璧に納めたとしても816,000円(令和6年度満額。月額68,000円)にしかなりません。
しかし、この上に今まで厚生年金に加入して働いてきた分が上乗せされる事で、老後の年金を増やす事になり、生活に余裕が出る事になります。
一般的に会社に雇用される場合は厚生年金に加入するのですが、必ずしも厚生年金に加入している人ばかりではありません。
特に非正規労働で働いている場合は厚生年金に加入する条件を満たさずに、加入から外れて国民年金のみの被保険者になってたりします。
被雇用者のうち3500万人ほどが正社員で、2000万人ほどが非正規雇用者となっています。
正規社員は厚生年金に加入しますが、非正規社員1000万人くらいの人は厚生年金に加入できていませんでした。
非正規社員というのは景気が悪くなってきてからは急増していったのですが(昭和60年台は600万人ほどが、平成20年ごろに2000万人に突破)、それは会社としては厚生年金保険料や健康保険料がかからない人材を使ったほうがコストカットできて都合が良かったからです。
厚生年金や健康保険は会社側も社員が負担する額と同じ額を負担しなければならないので、会社側としてはそういうのを払うのが嫌だから正社員の採用を抑えつつ非正規社員に置き換えていきました。
あと、平成11年に派遣が原則自由化されて、平成16年に製造業まで自由化が進んで派遣社員が急増したと同時に働く貧困層が急増しました。
働いてるのに生活保護基準以下というワーキングプアというものですね。
派遣は労働基準法が適用されないので、解雇というか契約解除という形で会社の仕事がなくなれば簡単に派遣契約を終了させる事ができました。
そのため、平成20年のリーマンショックにより、金融機関が自動車ローンを貸すのを控えた事で、自動車の生産を減らした事により派遣社員や非正規労働者の仕事がなくなり、特に派遣社員は簡単に契約を切られて寮からも追い出されて住む場所すら奪われました。
派遣切りとか雇い止めが横行したのです。
当時、自動車会社から大量に派遣切りにあった人々に対して日比谷公園でボランティアの方々が年越し派遣村を設置して、食べ物などを振る舞う光景がありました。
会社を存続させるために彼らの生活が切り捨てられてきたのです。
話は年金から逸れましたが、厚生年金に加入せずに会社で働く人が平成以降は急増した事により、この人たちの老後までもが危険に晒される事になりました。
派遣社員や非正規労働者の人は自ら国民年金保険料(令和6年度月額16,980円)を支払う事になりますが、自分たちの今の生活を維持するのですら厳しいのに国民年金保険料を支払っていない(未納者は年金の被保険者全体の2%弱程度)、もしくは免除にしているという状況でしょう。
そうすると老齢の年金というのは保険料払った額や期間に見合う分しか支払われないので、老後に年金を受け取るという時にまた貧困に苦しむ生活になる危険があるわけです。
会社側にとっては社会保険料のかからない彼らの労働力を使ってコストカットできて嬉しいでしょうけど、労働者側としては将来が危うくなるのです。
でも将来貧困者が増加してしまうと彼らは消費を控えざるを得ないから、会社側はモノが売れなくなって利益が少なくなるという憂き目にあってしまう事になりますが…
よって、会社に雇われてるのにそのように厚生年金に加入できていない人を加入できるようにして、将来は少しでも高い給付である老齢厚生年金を国民年金(老齢基礎年金)と共に受け取れるようにするのが狙いなのです。
厚生年金に加入する事ができれば、保険料の面でも会社側が半分負担してくれるので、個人でもし4万くらい払う人であっても2万円で済みます。
その上、年金額は老齢基礎年金+老齢厚生年金で受け取れるので、老後の収入を増やす事に繋がるわけです。
年金受給額が増えればそれだけ消費も増える方向になるので、会社側としても巡り巡って利益になる。
経済としても、コストカットばかりに取り組む会社は新しいものを生み出す努力をしなくなるので、付加価値を生み出す面ではよくありません。
保険料負担が免れないとなれば、もう生産性を上げていくしかないので会社としても成長に繋がると期待されています。
まあ会社側としては、もう少なくとも70年くらい前からそうですが保険料負担を嫌がります。
これ以上保険料負担を増やしたら会社がやっていけない!!という決まり文句の抵抗を行い、政治家に働きかけて保険料をあまり引き上げさせないように抵抗してきました。
お金持ちの経済界の言う事を聞かないと政治家としては集票に影響しますからね。
だから昭和の頃から本来の保険料よりも低い保険料率に下げらされ続けていた歴史があります。
例えば厚生年金保険料率を6.4%くらいにしないといけない時に、抵抗されて6.2%になったりですね。
そんな事が改正のたびに繰り返されていました。
今の18.3%上限も本当はヨーロッパ並の20%くらいにしたかったのに抵抗されたのが原因で18.3%に下げられてしまった。
保険料が低ければ給付も水準が低くなる。
資本主義の社会は自由な経済のやり取りに国が介入する事を嫌いますからね。
利益を最大化させるためには社会保険料が常に邪魔な存在として扱われてきました。
それが社会保険料と経済界との歴史でもあります。
しかし、社会保障を弱らせれば弱らせるほど、自己責任が強い社会となり、今は人々が難なく働けて収入を得ていても万が一に病気をしたりもしくは介護や子育てでしばらく長い時間働けなくなるという事も出てきます。
老齢になれば定年というシステムで労働市場から強制退職させられてしまいます(平成18年くらいから60歳からの継続雇用などは充実してきてますが)。
そのような時にそれも自己責任なんだから自分でなんとかしろという社会になれば、おちおち安心して暮らせません。
例えば医療は所得に関係なく平等に原則3割負担で最先端の医療が受けれますが、社会保障が小さくなるとかもしくは無いのであれば、自分で全額を払うしかなくなります。
そして高度な医療を受けたいのであればお金持ちでなければ治療させてもらえないような社会になります。
お金が払えないなら一番安いやつで気休めみたいなのしかできないとかですね。
だからといって社会主義とか共済主義は絶対嫌ですけど、資本主義の社会はどうしても強者と弱者という極端な二極化を産む構造なので格差が生じてしまう欠点があります。
それを補正して、人生における自分の力ではどうしようもない事が起きて弱者が見捨てられてしまう危険から守ってくれるのが社会保障なわけです。
前述したものに派遣というシステムは新自由主義により、小さな政府を促進させた結果更なる格差や生きづらさを作る事になりました。
日本は世界一の高齢社会ですが、本当ならもっと年金を充実させるべきなんでしょうけどなかなか社会保障を充実させようという動きにはならないですからね。
年金給付は毎年約55兆円ほどと想像もつかないほど巨額なものですが、GDP比でいうと10%くらいしかありません(2025年あたりには9%くらいになるともいわれる)。
ヨーロッパあたりは日本より高齢化率は小さいですが、国民負担率とかは日本よりだいぶ高いですからね。
まあ、日本は少ない財源でかなり痩せ我慢をしているともいえます。
あ、そういえば本日の有料メルマガのご案内だったんですが、ザックリ書くつもりがちょっと記事が長くなりすぎてしまいました。
ちょっとした通常記事になってしまいましたね苦笑
まとまった話は以下の有料メルマガ記事であらためて発行します。
6月19日20時の「第351号.どうして現在の年金受給者の年金額の伸びを抑制したり、厚生年金加入を拡大したりしようとするのか」
6月26日20時の「第352号.厚生年金加入促進と同時に、国民年金保険料を40年から45年に延長するというのは何を目指しているのか」
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6月19日の第351号.どうして現在の年金受給者の年金額の伸びを抑制したり、厚生年金加入を拡大したりしようとするのか。
(以降の発行予定記事)
6月26日の第352号.厚生年金加入促進と同時に、国民年金保険料を40年から45年に延長するというのは何を目指しているのか。
7月3日の第353号.在職老齢年金と高年齢雇用継続給付金を受給する際の年金計算事例と、給付金の縮小。
7月10日の第354号.受給者が特に多い高齢になってからの遺族年金。
7月17日の第355号.配偶者や子と別居の場合の遺族年金と、父母と別居の場合の遺族年金の取り扱いの違い事例。
7月24日の第356号.65歳からの老齢の年金額を強力に増額させる年金の繰下げが利用できない事例と、障害年金消滅のタイミング。
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