未納が多いのに遺族年金がもらえる事例 | 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座

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知れば知るほど奥深い年金制度!
僕も日々勉強ですが、一人でも多くの方に年金の事を知って欲しいと思います。
年金は…正確に書くように努めてはいますが、少しでも年金の事を知っていただければ幸いであります。
一緒に年金について考えてみませんか?

こんばんは!

年金アドバイザーのhirokiです。
 

自分が亡くなった場合の遺族年金は家族には支給されるのかと心配される事は多いですが、遺族年金は比較的貰えてる人が多いです。
 
病気や怪我で受給する障害年金はちょっと特殊なものであり壁は多いですけど、遺族年金はそこまで壁はないです。
 
 
まず遺族年金は本人死亡から始まりますが、死亡日がわからないという事はないし、その日が動いてしまう事は原則ありません。
 
死亡日を特定するのはそう難しくないとして、次に死亡日までの年金記録を見ます。
 
 
死亡日の前々月までの全体の年金記録の3分の1を超える未納があった場合は請求できない事はあります。
 
しかし、特例として65歳未満の死亡であれば死亡日の前々月までの1年間に未納がなければそれでも年金記録を満たす事はできます。
 
 
また、年金記録全体で25年以上ある人はそもそも上記の3分の1とか直近1年に未納がないという要件は見なくても構いません(年金が有利になる場合もあるので、過去の保険料納付要件を見る事もありますが)。
 
 
保険料の要件を満たしたら、後は請求できる遺族を特定すればいいです。
 
遺族の範囲は本人死亡当時生計を維持されていた遺族であり、その順位としては配偶者、子、父母、孫、祖父母の順で最も順位の高い人が請求者となります。
 
なお、生計維持されていたというのは遺族の前年収入が850万円未満(もしくは前年所得が655.5万円未満)であり、住民票が一緒のような場合(生計を同じくしていた)を言います。
別居の場合でも合理的な理由があればそれも生計維持がされていたとして認められます。

ちなみに、配偶者と子は同じ第1順位の人ですが、配偶者が優先されます。
場合によっては子が優先される事もありますが、基本的には配偶者が優先されます。
 
上の順位者が請求できるのであれば、下の順位者の請求権は消滅します。
 
請求者がいるなら請求して、遺族年金を受給するだけ。

 
ただし死亡者の年金保険料の納付要件を見る時に、あんまり未納が多いと請求不可の時もあります。
 
 
さて、死亡者に未納が多いと遺族年金が貰えない場合もあるのですが、未納が多すぎても貰える人もいます。
それが先ほどの直近1年以内に未納がなければという要件を満たしてる人などですね。
 
 
ちょっとどうなるか簡単に見てみましょう。
 
 
◯昭和45年6月23日生まれのA夫さん(今は53歳)
 
・1度マスターしてしまうと便利!(令和5年版)何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法。
https://ameblo.jp/mattsu47/entry-12780334941.html

 

・絶対マスターしておきたい年金加入月数の数え方(令和5年版)。
https://ameblo.jp/mattsu47/entry-12782489170.html

 
 
18歳年度末である平成元年6月から平成7年9月までの76ヶ月間は国家公務員共済組合(第2号厚生年金被保険者)。
この間の平均標準報酬月額は30万円とします。
 
平成7年10月から平成28年6月までの249ヶ月間は非正規雇用として働いていましたが厚年に加入できておらず、国民年金保険料は未納にしていました。
 
平成28年7月から令和元年6月までの36ヶ月は50歳未満の人が利用できる保険料納付猶予制度を利用(老齢基礎年金には反映しない)。
この納付猶予制度は本来は30歳までの人用でしたが、平成28年7月から50歳未満まで拡大されました。

一般の免除制度とは違って所得は本人と配偶者のみで見るので、世帯主の所得は審査対象外であり、将来の老齢基礎年金には反映しない。
 
令和元年7月から令和4年3月までの33ヶ月は未納。
 
令和4年4月から令和5年9月までの18ヶ月間は厚生年金に加入して働く。
この間の平均標準報酬額は16万円とします。
 
令和5年10月3日に急死。
 
死亡日時点で生計維持されていた遺族は45歳の妻(年収100万円)と、13歳の子。
 
なお、生計維持されていたというのは簡単に言うと住民票が一緒で、遺族が前年の年収850万円未満(または前年所得が655.5万円未満)の場合をいいます。
一時的な収入や所得は除きます。

 
次に死亡日時点の保険料納付要件を見ますが、全体の年金記録413ヶ月に対して未納が282ヶ月なので有効な年金記録は131ヶ月しかなく25年以上はありません。
 
では死亡日の前々月までの記録を見ますが、平成元年6月から死亡日の属する月である令和5年10月の前々月までの413ヶ月のうち未納が3分の1(33.33%)を超えてはいけません。
 
未納は282ヶ月なので、未納率は68.28%。
よってこれでは保険料の要件を満たしませんが、死亡日の前々月までの1年間(令和4年9月から令和5年8月まで)に未納がありませんので遺族年金を受給する事ができます。
 
また、死亡日が厚年加入中なので受給する年金は遺族厚生年金ですが、18歳年度末未満の子障害等級2級以上の場合は20歳までの子)がいれば遺族基礎年金と子の加算金が国民年金から支給されます。
 
 
受給できるのは妻であり、妻が受給中は子への遺族年金は停止となります。
 
・遺族厚生年金→(30万円÷1000×7.125×76ヶ月+16万円×5.481÷1000×18ヶ月)÷94ヶ月×300ヶ月(最低保障)÷4×3=(162,450円+15,785円)÷94ヶ月×300ヶ月÷4×3=426,626円
 
ちなみに平成27年10月1日以降の死亡は、厚年期間だけでなく国家公務員共済組合の期間も合わせて計算して、日本年金機構からまとめて支払います(死亡日が民間の厚年加入中にあるから)。
厚年加入中の死亡なので300ヶ月みなしで計算します。
 
・遺族基礎年金→795,000円+子の加算金228,700円=1,023,700円
 
・遺族年金生活者支援給付金→月額5140円(年額61,680円)
 
 
遺族年金総額は1,282,696円(月額106,891円)
 
 
ただし、子が18歳年度末を迎える時を令和10年3月31日としますと、令和10年4月分の年金からは遺族年金総額は遺族厚生年金426,626円のみとなります。
しかし遺族基礎年金の消滅後は中高齢寡婦加算596,300円の支給になります。
 
 
なので令和10年4月分以降の妻の遺族年金総額は1,022,926円(月額85,243円)となります。



なお、中高齢寡婦加算は65歳までの加算になり、65歳以降は妻の老齢の年金と遺族厚生年金の併給となります(老齢厚生年金が遺族厚年より多いと遺族厚年は支給されない場合もあります)。

例えば妻の65歳の年金が、老齢基礎年金60万円+老齢厚生年金20万円であれば、遺族厚生年金426,626円から妻の老齢厚生年金分20万円を引いた226,626円が遺族厚生年金となります。

 
というわけで、A夫さんはかなり未納期間がありましたが、死亡日の前々月までの1年間に未納がなかったので遺族厚生年金の受給に結びつきました。
 
過去の未納が多すぎる!という人は、死亡したと仮定してその前々月までの直近1年間を未納にしてなければと思います。
年金保険料の納付は時効内である直近2年1ヶ月まで可能です。

ちなみに未納がなければいいので、全額免除であっても構いません。
 
免除制度は申請日から2年まで遡ってくれるので、直近1年未納しかない!という場合も大丈夫です。
 
 
ただし、納付や免除申請日は死亡日の前日までにやっておく必要があります。
 
 
では本日はこの辺で。
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▼過去によく読まれたおすすめ記事バックナンバーご案内

・2018年12月バックナンバー(厚生年金計算はどうして2つの計算式が存在してどちらか多い方を支給するのか。従前保障額と本来水準額の違い)
https://www.mag2.com/archives/0001680886/2018/12

 

厚生年金計算する場合の計算式は1つだけではなく、実は2つあります。
その2つを計算してどちらか有利な方を支給するというやり方をとっています。

まあ、平成27年度になるまでは3つの計算があって面倒だったんですけどね^^;計算はパパッと年金機構のパソコンが正確にやってくれますが。。


今ほとんどの人が支給されてる計算式は本来水準額といい、ちょっと5%くらい有利だった計算を従前保障額といいます。
従前が5%高いなら、従前で年金払ったほうが高いでしょ!と思ってしまいますが、そうならないのが不思議なところなんですよね^^

2つに分かれたのは平成12年改正の時に遡らなければならないので、その2つの計算の違いとは何なのかという重要な経緯を解説しています。
キーとしては平成6年と平成12年であります。

その経緯を解説しています。


・2019年4月バックナンバー(平成の時代と年金)
https://www.mag2.com/archives/0001680886/2019/4

 

平成の前の昭和末期である昭和60年に年金を大幅に改正しました。

今後も進行が続く少子高齢化に対応するために、年金計算の中身を削って給付水準を大幅に削減する事(厚年であれば25%くらい下げる)で、将来の人の保険料負担を軽減するための改正でもありました。

しかし、平成に入ってバブル崩壊の後の失われた20年どころか30年のせいで、景気が停滞し続けた事、そして少子化高齢化が昭和60年の頃に見込んだものより悪化し続けたためにその後も年金を削っていく改正をやっていかざるを得なくなりました。

長いので2回の記事に分けて平成の頃の状況と改正についての流れを書いています。



・2021年1月バックナンバー(なぜ終わった法律がいつまでも付き纏う理由、年金は1種類しか貰ってはダメなのになぜ遺族厚年と障害基礎年金は例外があるのか)
https://www.mag2.com/archives/0001680886/2021/1

 

 

年金はよく複雑すぎると言われますが、その原因としては経過措置というものがあるからです。
それは何かというと、一般的には法改正すると以前の古い法律は終わりますが、いきなり終わらせないでそのままゾンビのように残り続けたりするんですね。

やはり、人の生活のお金に関わるものなので、急に変化すると生活が狂いかねないために急には終わらせないんですね。

例えば昭和61年4月からは新年金の今の形の年金になり、その前の年金は旧年金とされます。

旧年金はもう終わったんですが、実は現在も旧年金を受給してる人が普通にいます。
そんなところを解説しています。


また昭和61年4月以降は複数の年金(老齢、障害、遺族)を貰う権利があっても、1人1種類しかもらってはダメですよーという事になりました。

しかし、遺族厚生年金と障害基礎年金(平成18年4月から)に関しては老齢の年金と一緒に貰うという事が許されています。
なぜ一緒にもらえるのかの経緯と理由を解説しています。


・2022年12月バックナンバー(在職老齢年金の歴史)
https://www.mag2.com/archives/0001680886/2022/8

 

 

 

厚生年金に加入して働くと老齢厚生年金が停止されるという、よく嫌われている制度が存在します。

働いたら年金が停止されるなんておかしい!とよく言われますが、ちゃんと理由がありまして、本来なら働いてる最中は全額停止されるものでした。


ただ、昭和40年改正からは在職老齢年金制度が始まり、65歳以降働いてても年金を一部支給するという形になっていきました。

昭和時代は標準報酬月額によって、年金は例えば8割、5割、2割などの割合で支給するものでしたが、平成になってからは今のような標準報酬月額、賞与月額、年金月額を使った計算式を用いるようになりました。

令和5年4月からは在職老齢年金制度の大幅緩和により、年金停止される人はよっぽど給与が高い人でないと停止されなくなり、今から58年前の昭和40年からあった在職老齢年金がほぼ問題にならなくなりました。

縮小されていくまでの、その在職老齢年金の歴史の流れを解説しています。


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