年金アドバイザーのhirokiです。
令和元年10月から消費税が10%に上がった事により、低年金の受給者には国民年金保険料納付期間や免除期間に応じて全額税金を使って年金生活者支援給付金というものが年金に上乗せして、公的年金とは別枠で支給するようになりました。
20歳から60歳前月までの480ヶ月間納付した人であれば月5140円の給付金がもらえます。
しかし、65歳以上であり、住民税非課税世帯かつ、前年所得+公的年金収入≦781200円(令和4年10月から令和5年9月までの所得基準額)である事が必要です。
年金が低い人にとってはありがたいものではあります。
この給付金を決めたのは民主党政権の時でした。
確かに一見ありがたいのですが、少し考えてみましょう。
公的年金というのは今まで支払ってきた保険料額によって人それぞれ金額が違います(遺族年金とか障害年金のような必ずしもそうではない年金もありますが)。
多く払った人の方が少なく払ってきた人より多くなります。
そんな時、AさんはBさんより保険料を多く支払って、Aさんの年金はBさんより多くもらえました。
でもBさんは低年金者として全額税金で給付金が上乗せされてAさんの年金総額を上回りました。
そうなるとどうでしょう。
まじめにBさんより高く保険料を払ってきたAさんはバカを見ますよね。
不公平でしかありません。
こんな不公平が起こらないように社会保険というのは作られています。
真面目に保険料払ってきた人がバカを見ないように。
ところが民主党政権時代に、低年金者に上乗せ給付させる!と決めてしまいました。
それは社会保険の原則を壊しかねないものであると反発が強かったのですが、民主党政権がマニフェストに掲げていた最低保障年金があまりにも実現不可能であるという事が明るみになり、せめて窮余の一策として最低保障に代わるものとしてその給付金の法律を残していったのです。
民主党政権時は最低でも月7万円保障という最低保障年金と所得比例年金をマニフェストに掲げていましたが、全額税金で今の老齢基礎年金ではなくその最低保障年金として支払うというものでした。
まあ、基礎的な年金は全額税金でやるというのは昭和の終わり頃から話題になっていた事ではあり、その時に国民年金を廃止して全額税金で支給しよう、そのために目的税を2%取ろうという構想がありました。
昭和50年代終わり頃辺りです。
消費税3%も始まろうとする中であり、今さら国民年金をやめて全額税金でっていうのは法案を通らずに廃案になりました。
その後は民主党政権で全額税金で最低保障年金をやるという話がまた出たわけですが、無年金者もいなくなるしみんな平等な給付になると考えるでしょう。
無年金者を無くそうという事で全額税金でやるって話もよく野党から平成10年くらいまで言われていましたが、全額税で年金を支給するというとなんだかスッキリしそうな気がしますがココで、最初の給付金と同じように不公平な事態になります。
「さあ、今日から全額税金で年金支払いますよー共通の年金はみんな平等ですよー」とした時に、低年金者や無年金者の人は喜ぶでしょう。
しかし、それまで真面目に保険料を払ってきた人がいます。
大半の人は真面目に保険料払ってきたでしょう。
そんな時に、不真面目に保険料を払ってなかった人と給付を同じにできますか?っていう問題が生じるわけです。
平等な給付にはできません。
今まで保険料を支払ってきた人には何らかの給付の上乗せが必要となります。
このような社会保険の原則を壊すような不公平を招いてしまう危険と、今の基礎年金の満額を超えるような月7万円の年金(消費税が20%でも済まなくなる)、国民の所得が把握できない中での所得比例年金(所得が同じならみんな同じの年金)というものはあまりにも非現実的で、問題がありすぎました。
年金受給資格25年を10年短縮も正直必要なかった。
大衆に迎合した政策はロクな事になりかねないですね。
ちょっと当時の民主党案だった所得比例年金というのを簡単に説明します。
所得が同じなら年金も同じという綺麗な考えなんですが、サラリーマンならともかく自営業者などの人の所得というのは今だに把握が困難です。
クロヨンという用語がありますが、サラリーマンはほぼ100%所得が把握できる中で、自営業者は6割、農業は4割の所得しか把握できないことを示します。
国民年金がこの60年間ずっと定額保険料でやらざるを得ない理由もここにあるんですが、そんな所得把握が困難な中で所得比例年金は不可能です。
ちなみにサラリーマンの厚生年金保険料は事業主と保険料を半分こしてますが、自営業はそうではないのでもし所得比例年金とするなら自営業者は高額な保険料を払う事になります。
考えれば考えるほど問題が多い民主党の新年金案だったため、何も実現はしませんでしたが、低年金者に上乗せ給付をするものを残していきました。
まあ、社会保険の原則を壊しかねないものでしたが、とりあえず多く保険料を払った人の年金を逆転させない措置は取られてはいます。
始まったもの今更どうこう言っても仕方ないですが、本日6月28日の有料メルマガではその年金生活者支援給付金の金額の仕組みなども詳しく見ていきます。
令和5年度は年金が67歳到達年度までの人と、68歳到達年度以降の人では金額が異なるというケースが発生しました。
今後はこの差を気にしていかなければいけなくなりました。
いやー、なかなか年金はシンプルにはならないですね^^;
年金計算が3つあった時代が8年前に終わって、当時はホント計算が面倒臭かったんですがホッとしていたのも束の間でした(笑)
年齢による年金額のズレは平成12年改正で決まった事がようやく目に見えた形だったんですが、年金というものは物価や賃金の伸びで毎年変化します。
低年金者への上乗せ給付である年金生活者支援給付金ももちろん変化します。
しかし、公的年金とは違って全額税でやってるので、その変動はやや異なります。
なので、そういう点も踏まえながら中身を解説していきます。
(内容)
1.本来の年金の大原則を壊しかねなかった年金生活者支援給付金。
2.日本の年金は最低25年無いともらえないというのは本当に長すぎだったのか。
3.令和5年度は物価や賃金が上がったから年金も上がったが、年金生活者支援給付金の額は。
4.年金生活者支援給付金の免除基準額はどこから出た金額?
5.所得基準額と年金額
でお送りします。
なお、月の途中で登録された場合でも今月発行した297号、298号、299号は即座に届きます。
※本日6月28日20時発行の有料メルマガ。
6月28日の第300号は「年金制度の原則を壊しかねなかった年金生活者支援給付金と、その金額の求め方。」
・事例と仕組みから学ぶ公的年金講座(月額770円税込み毎週水曜日20時にメルマガ発行)
途中で登録されてもその月の発行分はすべてお読みいただけます。
https://www.mag2.com/m/0001680886
6月7日の第297号は「少子化と年金とその重要な背景」を発行しました。
6月14日の第298号は「旧民主党時代に煽られた年金不安とそれに伴う年金の繰上げブームと、繰上げ年金事例」を発行しました。
6月21日の第299号.手取りの年金額は毎年の社会保険料に左右されやすい事と、8月と10月に起こりやすい調整。を発行しました。
6月28日の第300号.年金制度の原則を壊しかねなかった年金生活者支援給付金と、その金額の求め方。
(その後の予定)
7月5日の第301号.法改正で条件が緩和して障害年金受給事例と、前年所得による障害基礎年金停止サイクル
7月12日の第302号.再婚後に配偶者死亡による遺族年金の問題と、再婚者の子が前妻に引き取られた時(超重要)
7月19日の第303号.保険料未納期間のはずが納付した期間になってしまった経緯と、その対応。
7月26日の第304号.必ず発生する未支給年金の要件と、遺族年金受給者が必ずしも未支給年金受給するとは限らない事例。
8月2日の第305号.高まる厚生年金保険料に経済界は不満タラタラだったから妥協して始まった厚生年金基金制度と崩壊。
8月9日の第306号は、加給年金は65歳からと認識されているが、元々はそうではなかった時代背景と加算時期がやや異なる事例。
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