依然として雇用の面で女子は不利になりやすいので第3号被保険者制度は必要。 | 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座

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年金は…正確に書くように努めてはいますが、少しでも年金の事を知っていただければ幸いであります。
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こんにちは。
年金アドバイザーのhirokiです。

 
・まぐまぐ大賞2021語学資格部門2位と知識ノウハウ部門3位のダブルで頂きました(6年連続受賞)
本当にありがとうございました。
https://www.mag2.com/events/mag2year/2021

国民年金には被保険者には、国民年金第1号被保険者、国民年金第2号被保険者、国民年金第3号被保険者の3つがあります。

20歳から60歳までの人は一部の例外を除いて、必ずこの3つの被保険者のどれかに該当します。

1号の人は主に自営業や学生、フリーターなどの人が加入者であり、毎月国民年金保険料定額の16,590円を支払います。

なお、支払うのが困難な場合は保険料の免除を申請する事が出来ます。


次に2号被保険者の人はサラリーマンや公務員が該当します。
2号被保険者は給与が支払われるので、その給与から厚生年金保険料が強制的に天引きされます。

保険料率は18.3%ですが、会社と折半するので支払い保険料は9.15%分を給料から天引きとなります。



そして、国民年金第三号被保険者と呼ばれる人たちはどうなのかというと、国民年金第2号被保険者の扶養に入ってるような人が該当します。

主に年収が130万円未満(障害等級1~3級の人は180万円未満)の配偶者が該当します。

なお、特徴的なのは3号被保険者は女子の割合が99%を占めるという事です。

更に2号被保険者の厚生年金保険料から、3号被保険者の人の基礎年金財源を支払うので個別に保険料負担する必要はありません。


3号被保険者の人は個別に年金保険料を支払う必要は無いのに、将来は国民年金保険料を支払ったのと同じように老齢基礎年金が貰えたり最低の年金受給資格期間10年の中に組み込まれるのでそれはズルい!という批判が以前からよくありました。


ちょうど平成9年頃に夫婦共働き世帯が専業主婦世帯よりも多くなってきた頃から、働く女子からの批判の声が強くなり始めました。

国民年金第3号被保険者制度は別に有利な制度でもないし、制度としては合理的なのでどのように扱うべきなのかは結局の答えは出ませんでした。


保険料払わずに年金が貰える第3号被保険者は許せないというのにどうして健康保険の被扶養者が個別に保険料払わなくても医療が受けれるのは許せるのかというのもわけわかりませんけどね^^;

3号廃止したいなら整合性を保つために、健康保険の被扶養者に対しても個別に保険料払え!というのが筋でしょう。


なんで3号被保険者は年金保険料を払う必要が無いのかというと、これは昭和61年3月までの従来の年金制度から考える必要があるのでこの記事では割愛します。

参考記事
第3号被保険者が不公平ではない歴史的な理由と事例(2019年7月有料メルマガバックナンバー)


しかしながら、3号被保険者は縮小していこうという流れになっており、彼女らの雇用を促進していく事で3号被保険者の縮小を促す事になりました。


平成28年10月から厚生年金に加入できる基準が緩和されるようになり、第3号被保険者だったパート労働者だったような人が厚生年金加入へと種別変更されていくようになりました。


これからも、厚生年金加入基準が令和4年10月と令和6年10月に緩和されるので、それに伴って国民年金第三号被保険者も減っていく事になるでしょう。


今まで批判していた人の感情に沿った流れになっていきました。

まあ、その批判は合理的ではなく単なる感情的なものでしたが、正直僕としては第3号被保険者を廃止していく事はまだ適切ではないと思っています。

なぜなら女子の雇用慣行や社会慣行はまだ根強いからです。 

雇用慣行というのは給与が低い、出産や育児で退職した後の不利な雇用機会。
社会慣行というのは女子が家事育児、介護を行う事が多い事ですね。

給与面でもどうしても昔からの流れでまだ女子は統計的に男子より、かなり低い事が挙げられます。
この主な理由は女子が管理職に就く機会が圧倒的に少ないからです

役職が上がると給料は上がっていきますが、管理職の女子は全体の20%弱ほどと言われています。

昭和30~40年代の高度経済成長時の時はストライキでも起こせば、4月以降の給料が毎年上がってましたけどね^^

今はもう役職が上がらんとなかなか目立って給与アップしない。

男子が平均35万円として、女子はまだ23万円が平均です。


さらに、女子が働きやすくなったとはいえ、妊娠や出産という出来事は女子への負担が遥かに大きいです。

子育てと労働の両立がまだ完全に整っていない社会では、一体どっちを優先するかという選択に迫られてしまい、出産や子育てを機に仕事を辞めざるをえなかったりします。


残念ながら日本はまだ「男は外で働く、女は家庭に入る」という性別役割分担の考えが根強くてこれらの子育てやそして介護の負担をどうしても女子が背負う事が多いです。


そして、一旦労働の場から退いた後に、再就職しようとする場合は非正規雇用とか派遣のような非常に不安定な職業で働かざるを得ない場合が多いです。
よく、国民年金保険料の未納問題に繋がるのも、このような不安定な職業の人達に集中していたりします。

このように出産、育児、介護などの家庭での負担がまだまだ女子に集中しやすく、その中で退職などを選択せざるを得ない場合がどうしてもあるような状況で、彼女らの年金を保障するためには国民年金第3号被保険者制度は必要ではないかと思います。


夫婦で働いてる中で、子供が生まれ、どうしても性別役割分担の考えで女子が育児の中心になり、そのために会社を辞めて育児に専念という形がまだ根強く残っているのであれば、夫の厚生年金保険料から妻の年金財源を負担して妻の基礎年金を確実に保障する形は必要です。


少子化の面でも考える時、依然として女子への家庭的な負担が付きまとうので、仕事も子育ても両立という選択は選びにくく仕事か家事の一方を選ばざるをえなかったりします。

キャリアを取るか家事を取るかと選択を迫られた時、キャリアを一旦捨てると元の労働環境に戻れずに、再就職時は非正規雇用などになってしまうからキャリアを選ぶケースも多くなる。


どうしてこのような性別役割分担の考え方が日本は根付いてしまったのか。


昭和時代の昭和30年代のになると日本は急激な工業化へと進み、高度経済成長期に入りました。
高度経済成長は昭和30年から昭和48年のオイルショックによる不景気が始まるまで続いた好景気です。


高度経済成長期は毎年のように賃金が上がっていくのが当たり前の時代でした。

労働者を確保するために地方からも労働者を募りながら、彼らに長く働いてもらうためにも終身雇用制が推し進められていきました。
定年まで会社が面倒見るのでどうかウチの会社に来てくださいと。

そうすると、一旦会社に就職すると雇用が安定すると共に、経済成長もあって給料も当たり前に増加しました。


じゃあ既婚女性はもうお金の事は安心して夫に任せて、私は家の事に専念しようとなる女性が増加していきました。
専業主婦となる女性が増加していきました。


こうして昭和40年代あたりになると性別役割分担が定着していったのであります。

とはいえこの頃はまだ肉体労働が多かったので、男の労働中心になりやすかったのですが、徐々にサービス業が増えていったので女子が働ける仕事が増えていきました。

更に、便利な家電製品が普及していったので劇的に家事の負担が軽減されていったので、女子の社会進出がやりやすくなっていきました。

昭和61年になると男女雇用機会均等法が施行されたり、平成9年になると女子の深夜業や時間外労働も可能になってますます女子の進出が増加していきました。


女子の社会進出が圧倒的に増加したとはいえ、どうしても女子には身体的に妊娠出産、そして昔からの価値観による育児や家事、介護は女子がやるものであるというような空気になるのがなかなか女子の働く選択を厳しくしているのであります。




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年金支払いに使う計算式が3つになっていった過程等(平成の時代と年金)
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8月10日の第254号.80代前後あたりの年金受給者の年金記録は今とは違う事が多い事例。

8月17日の第255号.更に複雑化した年金繰下げ制度と3つの事例。

8月24日の第256号.年金制度特有であるカラ期間の成り立ちと、知っておきたい重要事例。

8月31日の第257号.受給している厚生年金を在職だから停止する目的と歴史、そして65歳前後の計算事例。

8月3日の第253号.第二次世界大戦中に作られた厚生年金の変化と、報酬比例の年金だけではダメだった理由等。

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