高度経済成長を支えた当時の労働者と、彼らへの年金の増額。 | 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座

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こんにちは。

年金アドバイザーのhirokiです。
 
 
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では本題です。
 
現代は大学に入学する人が大半を占める時代ですが、ひと昔前はそうではありませんでした。
 
大学に進学する人は一部のエリートくらいでした。
特に戦前とかはですね。
 
大学に通わせるほど所得が無いという人が多かったので、中学卒業したらすぐに働きに出るという事が一般と考えられていました。
 
昭和30年になると日本には高度経済成長が訪れ、平均年率10%を超える経済成長を見せました。
この高度経済成長は昭和48年の石油危機が来るまで続きました。
 
なぜ高度経済成長が起こったかというと、キッカケは昭和25年6月25日に起こった朝鮮戦争でした。

朝鮮戦争は共産軍の北朝鮮が下の韓国を統一するために、突然韓国に攻め込んできた戦争です。
 

この戦争で300万人程の人が犠牲になりました。
 

朝鮮戦争が始まった時に、日本に駐留していた米軍が韓国の助っ人に出動していきました。
(在日米軍が日本をお留守にするから、その間の隙をソ連に突かれるとマズいのでマッカーサーの命令で日本に自衛隊を作らせた。最初は警察予備隊という名で、昭和29年に自衛隊が出来た。その後は自衛隊と憲法で揉め続ける事になる)
 
 
朝鮮戦争で北朝鮮軍と戦う米軍が日本から物資を買うわけです。
 
そうすると日本のモノがものすごく売れるから景気が大幅に回復していったんですね。
これを朝鮮特需という。
 
朝鮮特需のお陰で日本は大量のドルを手に入れました。
 
朝鮮戦争が停戦したのは昭和28年ですが、その後は日本は手に入れた大量のドルでアメリカから最新の製品を輸入しまくり、民間設備投資を充実させていきました。
 
アメリカから大量に輸入して、最新の設備やインフラを整えていく事で経済発展の基礎を築き始めるようになります。
 
日本はアメリカに商品を沢山輸出して好景気になったというのは設備投資を整えた後の昭和40年代に入ってからです。
 
昭和30年代は先ほどのように輸入による経済活性化でしたが、輸入で力を蓄えた後に大量に高品質の製品を生産して輸出で利益が上がっていくようになります。
 
お陰様でアメリカとは貿易摩擦でよく問題になりましたね^^;
 
 
さて、高度経済成長に入ると、農村部から都市部への集団就職というのが見られるようになりました。
 
工業化が進んでいったため、多くの労働力が必要となり、その労働力を確保するために大量の労働者が都市部に就職しました
 
集団就職していった人々を金の卵と呼び、彼らは中学を卒業すると早速地方から都市部へと移っていきました
昭和30年代から昭和40年代ごろに中学を卒業した人はそういった集団就職した人が多くいました。
 

大量の労働者が都市部へ集まってきたので、都市の過密化と地方の過疎化、そして核家族化の進行が問題となっていきました。
 
 
農村で働くよりも、都市部へ出て働いたほうが収入になるので、特に男子は都市部へ移り住んで働きました。
農村部に残ったのはじいちゃん、ばあちゃん、かあちゃんとなり、これを三ちゃん農業と呼ばれました。
 
子供が都市部へ行ってしまう事で核家族化が進むと、残された親は自分自身の老後が心配になってきます。
 
 
それまでの家族の在り方だった親子三世代の形が薄れていったからです。
長男は実家を継ぐ事で、老後の親の面倒を見てくれていた親子三世代の機能が失われる事で、一体私の老後はどうしたらよいのか…という不安が大きくなっていきました。
 
その不安が昭和33年の総選挙に反映されて、国民年金の創設が最大の目標となったわけです。
そして国民年金は昭和34年4月に創設されて、保険料を支払う形は昭和36年4月から始まりました。
 
昭和36年4月からはサラリーマンや公務員以外の人も、年金に加入して将来は年金を受給する事が出来るようになったわけです。
これが国民皆年金の始まり。
 
老後の面倒を見てくれるはずだった子供が都市に出ていったから、国が私たちの面倒を見るようにしてほしいという思いが国民年金の創設に繋がったんですね。
 
 
国が年金で老齢の親の面倒を見るから、子供は気兼ねなく自分の好きなように生きる事が出来る。
 
もし年金が無ければ子供が毎月10万円とかそのくらいを自分の給料から支払わないといけない。
 
自分の両親の面倒は家族が負担するという形が、年金制度が整備される事で、現役世代みんなで保険料を出し合って老齢の人の面倒を見ようねという形に変わったわけです。
 
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話を戻しますが、そのくらい前の人は中学を卒業して早々と就職していったので、厚生年金加入期間が今現代の人よりも長い人が多いです。
 
現代のように大学進学する人が多数派になると、厚生年金に加入し始めるのは22歳以降となるのでとりあえず60歳まで加入したとしても38年となる。
 
逆に中学卒業して15歳年度末以降にすぐ働くとなると、60歳までですでに45年もの厚生年金期間がある事になります。
 
 
もうそれ以上働かなくてもいいんじゃないかってくらいの厚生年金期間なんですが、そのような人には厚生年金額を有利にする特例が設けられています
 
 
それを長期加入者特例といいますが、44年以上の厚生年金期間があると該当します。
 
たとえば、今現在65歳前の年金を貰ってる人というのは、厚生年金としては報酬比例部分一本で年金を貰ってます。
報酬比例一本のみなので年金額としてはかなり頼りがたいものがあります。
 
しかし長期加入者特例に該当する人は年金額を有利に計算します。
 
 
どんな変化があるのか、簡単に事例で見てみましょう。
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1.昭和34年4月7日生まれのA男さんは現在62歳(令和4年中に63歳)。
 
中学を卒業した翌月の昭和50年4月から民間企業に就職しました
 
A男さんの生年月日だと厚生年金を貰い始めるのは64歳(令和5年4月)からなので、それまでは働くつもりです。
 
なお、昭和50年4月から平成15年3月までの336ヶ月間の平均標準報酬月額は42万円とし、平成15年4月から令和5年3月までの240ヶ月間の平均標準報酬額は49万円とします。
 
ちなみにA男さんには昭和33年6月生まれの年上の妻(令和5年6月に65歳)がいます(厚生年金期間は20年未満)。
 
A男さんの62歳時点の年金額と、加給年金と振替加算の付くタイミングを計算しましょう。
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・(令和3年版)何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法!
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まずA男さん64歳(令和5年4月)からの老齢厚生年金を計算します。
支払いは翌月5月分から。
 
・特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)→42万円×7.125÷1000×336ヶ月+49万円×5.481÷1000×240ヶ月=1,005,480円+644,566円=1,650,046円(月額137,503円)
 
次に、A男さんには44年以上(528ヶ月以上)の厚生年金期間があるので、定額部分という年金が更に加算。
 
・特別支給の老齢厚生年金(定額部分)→1,628円(令和3年度定額単価)×480ヶ月(上限)=781,440円
 
更にA男さんには65歳未満の妻が居るので、配偶者加給年金390,500円も64歳から加算される。
 
 
加給年金は本来は65歳からというのが最近の認識ですが、長期加入者特例に該当するとその時点から貰える。
 
 
よって、64歳(からの年金総額は老齢厚生年金(報酬比例部分1,650,046円+定額部分781,440円)+配偶者加給年金390,500円=2,821,986円(月額235,165円)
 
 
なお、配偶者加給年金は妻が65歳になるまでなので、妻が65歳になる令和5年7月分からは消滅する。
加給年金が支払われるのは令和5年5月分と6月分の2ヶ月分だけですね。
 
ただし、妻が65歳以降は妻の老齢基礎年金に、A男さんの加給年金から振り替えられた振替加算33,031円(年額)が加算される。
 
振替加算は特に何も無ければ一生涯加算される。
 
 
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このように、厚生年金期間が44年以上になる人の65歳未満の年金額はかなり多くなります。
 
もう44年以上も働いてきたから、退職後の年金はオマケで多くするよ!長い間お疲れ様でしたという制度なので、退職せずに厚生年金に加入し続けるのならそのオマケは付かないので注意。
 
 
ところでA男さんは64歳で退職しますが、退職すると失業手当を申請しに行く事が多いですよね。
失業手当受給中は65歳未満の老齢厚生年金は全額停止しますので失業手当申請の前に年金とどちらが金額が多いかの試算をしてもらったほうがいいです。
 
大抵は失業手当のほうが多いですが、今回のように長期加入者特例に該当する人は年金額がかなり多くなるので年金のほうが多くなる事があります。
 
 
失業手当の額は退職前6ヶ月以内の賃金総額を180で割った額に45%~80%の給付率を掛けたものです。
 
例えば直近6ヶ月の賃金総額が180万円なら180で割ったら、賃金日額1万円。
 
1万円に給付率45%を掛けると4500円となり、月額に換算すると4500円×30日=135,000円となります。
年金月額より低いので年金を今回選び、失業手当の申請はしなかったとしています。
 
 
なお、失業手当は非課税なので社会保険料の負担や税金の負担なども加味する必要はあります。
 
 
A男さんの年金は年額108万円以上、65歳以降は158万円以上になるので課税対象者として所得税が徴収される事があります。
他に住民税もかかる事がある。
 
ちなみに65歳からの年金総額は65歳前と同じ額です。
 
 
(今回のこの記事では税計算と65歳からの年金総額は割愛します)
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1月26日の第226号は「押さえておきたい、役に立つ遺族年金事例3つ」

2月2日の第227号は、「失業手当を貰ってる最中にアルバイトしたり、厚生年金に加入した場合の年金との関係。」

2月9日の第228号は、「離婚後に元配偶者から分けてもらえる年金額と、一体どこの期間の年金記録が分割されてるのか」

1月5日第223号は、「年金は万が一の事態の大切な命綱!妻が遺族年金を貰い始めてから、妻が死亡するまで」

1月12日の第224号.「老齢の年金基礎事例による復習5つ」(いつもと違う形式の事例を用いました)
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