年金保険料の未納が多くて障害年金を請求できなかったが、老齢の年金は2倍くらいに増額させた話。 | 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座

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知れば知るほど奥深い年金制度!
僕も日々勉強ですが、一人でも多くの方に年金の事を知って欲しいと思います。
年金は…正確に書くように努めてはいますが、少しでも年金の事を知っていただければ幸いであります。
一緒に年金について考えてみませんか?

おはようございます。

年金アドバイザーのhirokiです。
 
 
 
年金には老後の保障だけではなく、病気や怪我で働けなくなった場合の保障である障害年金もある事は今まで述べてきたとおりです。
 
平均寿命が男子81歳、女子87歳という長い人生の中で、特に若い頃に関しても突然の病気や怪我は誰にでもある事です。
 
働き盛りに病気や怪我で長い間働けないような事態になったら、非常に大きな挫折感を味わう事にもなります。
 
 
それに加え、どうしても経済的な不安や悩みが付きまといます。
 
 
なので、年金制度にはそのような不測の事態に備えるために障害年金が設けられています。
 
 
 
しかしながら年金は保険なので、不測の事態が起きるまでに保険料を納めて備えをしておかなければいけません。
 
もし、あんまり未納が多い場合は万が一に備える努力を怠ったとして、保障してもらえない場合があります。
 
 
ちょくちょくある事ではありますが、いざそのような保障を受けようとした時に今までの年金保険料の支払いを怠ったから障害年金の請求はできませんという事が起こりえます。
 

法律って厳しいから、条件が足りないとなるとどうしても諦めざるを得ない場合が出てきます。
 
 
そうすると、受給総額として数百万円から数千万円の保障が受けられないという大きな損を被る事になります。
 
なので、年金保険料を支払うのが嫌という人は居ますけど、ひたすら未納にするというのは巡り巡って将来の大損を招くリスクがあるので注意が必要です。
 
 
さて、今回は障害年金に該当するくらいの病状ではあるけども、障害年金は請求できなかった人を見ていきましょう。
障害年金の請求は逃したけども、持病がある事で老齢になった時くらいは少しお得になるケースです。
 

1.昭和34年6月6日生まれの男性(今は61歳)
 ・(令和2年版)何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法!

https://ameblo.jp/mattsu47/entry-12563651891.html

・絶対マスターしておきたい年金加入月数の数え方。
https://ameblo.jp/mattsu47/entry-12564534484.html

 
 
20歳になる昭和54年6月から昭和57年3月までの34ヶ月間は定時制の学校に通っていたため国民年金に強制加入だったが、未納にした。
 
昭和57年4月から家の自営業を手伝いながら、国民年金保険料を支払う必要があったが平成6年10月までの151ヶ月間は未納にした。
 
 
平成6年11月から民間企業に就職して60歳前月の令和元年5月までの295ヶ月間厚生年金に加入する。

なお、平成6年11月から平成15年3月までの101ヶ月間の平均給与(月給与をすべて足して加入期間全体で割ったもの)は37万円とし、平成15年4月から60歳前月の令和元年5月までの194ヶ月間の平均給与(給与と賞与も含んだ総額を全体の加入期間で割ったもの)を60万円とします。
 
 

さて、この男性は民間企業に就職して間もない頃から息切れを自覚するようになり、日に日に体調の不調を訴えるようになった。
平成7年5月17日(初診日)に近くの内科に行ったところ、大学病院の心臓の専門医に紹介状をもっていくように案内される。
 

心臓弁膜症の病が発覚し、人工弁を取り付ける手術を受けなければならなくなった。
 
 
平成7年8月4日に無事に人工弁を装着する手術を終える。
 
 
平成7年頃はインターネットが普及し始めていた頃だったので、退院後は自分の病気についてネットで調べたりするうちに障害年金の対象になる事を知ったので、当時の社会保険事務所に相談に行く。
 
 
初診日は平成7年5月17日で間違いない事は病院の資料にて確認できたが、問題は初診日以前の年金保険料の納付状況だった。
 
民間企業に就職するまでにひたすら未納にしていた事が引っかかり、残念ながら障害年金は請求不可という結果になり、門前払いとなった。
 
 
 
障害年金は初診日の前々月(昭和54年6月から平成7年3月までの190ヵ月)までの年金保険料を納めなければならない期間がある場合は、その期間の3分の1を超える未納があってはいけない。
 
記録を見ての通り、190ヵ月のうち185ヵ月もの未納があるので完全に未納が3分の1を超えている。
 
 
この条件がダメだったので、初診日の前々月までの直近一年間に未納が無ければ良いという特例も使えなかった。
 
 
 
なので障害年金は請求不可となった。
 
 
ちなみに人工弁を装着すると、障害等級は3級に該当する状態なので、もし障害年金が請求できたなら障害厚生年金3級の支給だった。
 
あと、障害年金請求が可能になるのは初診日から1年6ヵ月経った日(障害認定日)以降が原則となりますが、人工弁を装着した日が障害認定日となる。
 

初診日である平成7年5月17日から、人工弁を付けた障害認定日の平成7年8月4日まで3か月くらいしか経っていませんが請求としては例外として平成7年8月4日以降可能となる。
 
障害認定日には必ずしも1年6ヵ月経つ必要が無い場合があるので、お気を付けください。
 
 
この男性の場合は人工弁がずっと必要だと思うので、障害厚生年金3級が支給されるとすれば一生涯の保障だったと考えられる。
 

障害厚生年金3級は最低でも約60万円が支給されるので、仮に65歳(令和6年6月)から老齢の年金を貰うまでとしても、平成7年から令和6年(平成だったとすれば平成36年)までの29年間で1700万円が支給されていた。
 
 
過去に保険料の未納が多かったがゆえの結果となった。
せめて免除にしてれば全然違ったんですけどね…^^;
 

 
なお、人工弁は身体障害者手帳としては1級に該当する。
 
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※注意
障害手帳が1級だから、障害年金も1級になるわけではないです。
逆に障害手帳が3級以下でも、障害年金では2級以上になる場合もある。
 
障害手帳の等級と障害年金の等級は一致するわけではない。
 
なお、障害年金を請求する際の書類に障害手帳の有無を確認されますが、障害手帳を持ってないから障害年金受給は不利になるというわけでもない。
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その後、男性は自分の老齢の厚生年金を受給する年齢64歳(令和5年6月)を迎える。
 
 
・老齢厚生年金(報酬比例部分)→37万円×7.125÷1000×101ヵ月+60万円×5.481÷1000×194ヵ月=266,261円+637,988円=904,249円
 
ところで、この男性は過去に障害年金を請求する事は出来なかったですが、人工弁は障害年金3級に該当するような状態ですよね(障害手帳の等級ではない)。
 

障害年金3級に該当するような状態の人は65歳前からの老齢厚生年金がオマケで増える(特別支給の老齢厚生年金の障害特例請求)。
 
・増える年金額(定額部分)→1,630円(令和2年度定額単価)×295ヵ月=480,850円
 
更に65歳未満の生計維持してる配偶者が居れば配偶者加給年金390,900円も加算し、18歳年度末未満の子が居れば子の加給年金224,900円も加算。
 
妻と子1人(養子縁組の18歳年度末未満の子)が居たとします。
 
 
 
よって、64歳からの年金総額は、老齢厚生年金(報酬比例部分904,249円+定額部分480,850円)+配偶者加給年金390,900円+子の加給年金224,900円=2,000,899円(月額166,741円)となる。
 
 
まあ、普通は報酬比例部分904,249円だけの支給なんですが、障害等級3級以上の人はこのように65歳前の老齢厚生年金が増える。
本来は65歳から加算される加給年金も65歳前から貰える。
 
 
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最後に65歳からの年金総額。
 
 
・国民年金からの老齢基礎年金→781,700円÷480ヵ月×295ヵ月=480,420円
 
そして、定額部分は65歳をもって消滅し、老齢基礎年金に移行する時の差額。
 
・差額加算→1,630円×295ヵ月ー781,700円÷480ヵ月×295ヵ月(20歳から60歳までの間の厚生年金期間)=480,850円ー480,420円=430円
 
 
よって、65歳からの年金総額は老齢厚生年金(報酬比例部分904,249円+差額加算430円)+配偶者加給年金390,900円+子の加給年金224,900円+老齢基礎年金480,420円=2,000,899円(月額166,741円)
 
 
65歳以降の年金は65歳前より下がらないような仕組みになっている。
 
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7月29日の第148号は「働き続ける事で大損をしてしまうタイミングと、働き続ける事で逆に大損を回避する」

8月5日の第149号は「障害年金が遡って数百万円の一時金が振り込まれるまでの過程と、その後に待っていた重大な選択」

8月12日の第150号は「無理やり作られた厚生年金基金の崩壊までの歴史と、過去に基金に加入していた期間の年金計算」

8月19日の第151号は「共済期間と厚年期間でこれだけの加入期間があるのに、一般的とは異なる取り扱いの数々」
 
7月1日の第144号は、「7月は新しい免除申請の月。その免除の種類と年金額計算の考え方復習事例」を発行しました。

7月8日の第145号は、「7月になると所得を確認しなければならない20歳前障害基礎年金の取扱変更と、年金計算総合事例」を発行しました。


7月15日の第146号は、「障害年金を貰い始めたが、その間の保険料免除の仕組みと年金停止後に病状が悪化した時」を発行しました。
 
7月22日第147号は「失業手当と年金が同時に貰える計算事例と、65歳前の特老厚と失業手当も同時に貰ったような形になるお得ケース」を発行しました。

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