年金支給開始年齢が75歳になるとかいう誤解。 | 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座

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知れば知るほど奥深い年金制度!
僕も日々勉強ですが、一人でも多くの方に年金の事を知って欲しいと思います。
年金は…正確に書くように努めてはいますが、少しでも年金の事を知っていただければ幸いであります。
一緒に年金について考えてみませんか?

こんにちは!
年金アドバイザーのhirokiです。



なんか…年金支給開始年齢が75歳になるとかならないとかっておかしなウワサが広まってますよね。

違いますからね^^;



まだ案の段階で決まってもないですが、あれは65歳から貰う年金を「受給者本人の意思で75歳から年金支給を選択できるようにもしたいなぁ」ってだけの話です。


今の年金制度の中に、普通は65歳から年金貰うはずが自分の意思で年金受給を最大70歳まで遅らせる事により、65歳から貰うはずの年金を最大この5年間(60ヶ月)で42%増額させる年金の繰下げ制度っていうのがあります。


65歳以降1ヶ月遅らせるごとに0.7%ずつ年金が増えていくという他の金融商品にはありえないほどの利率が付いていく非常におトクな制度です。

※注意
年金の繰下げについてはいろいろ注意点がありますが、この記事では省いて話を進めます。




この最大70歳まで遅らせる繰下げ制度を75歳まで出来るようにしたらどうか?って話なんですよ(笑)
支給開始年齢を上げるわけじゃない。

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だから、例えば65歳から貰える老齢厚生年金が100万円で老齢基礎年金が70万円なら70歳まで繰下げしたら元々の年金総額は170万円ですよね。

各々42%増額する事により老齢厚生年金は142万円になり、老齢基礎年金は994,000円になります。
年金総額は2,414,000円になります。


たった5年遅らせるだけで総額が714,000円アップ!




じゃあ今回の75歳まで遅らせる事も可能になればどうなるか?
一ヶ月で0.7%増えるから、0.7%×120ヶ月(10年間)=84%増額になる。




さっきの65歳時の老齢厚生年金100万円と老齢基礎年金70万円なら、75歳まで繰下げしたら84%増で老齢厚生年金184万円+老齢基礎年金1,288,000円=3,120,000円となり、65歳時点の170万円より1,428,000円増額になりました。


たった10年遅らせるだけでとんでもない増額ですよね(笑)



しかし、この繰下げ制度を利用してる人はかなり少数です。
全体の2%もいかないくらい。



やはり早めに年金を貰いたいのでしょう。
それに年金受給遅らせてる間に障害年金や遺族年金貰えるようになったら、繰下げはその時点で出来なくなります。
障害基礎年金のみの人は例外的に老齢厚生年金の繰下げはできる。



それに長生きに自信があるとか、70歳まで貯蓄があるとか労働してるような人じゃないとなかなか厳しいですからね。



70歳までの今の制度でもほとんど利用者が居ないのに、75歳まで引き延ばせるようにしてもそこまで年金受給を遅らせれる人が一体どれほどいるのか…



それにしても、この年金の繰下げをすると本来の65歳から貰い始めた人よりも年金の受給を遅らせる年金の繰下げをやった人の年金総額はいつ逆転するのか?って気にされるところでもあります。


これは11年10ヶ月を損益分岐点となり、それ以降は繰下げした人が年金総額が上回り続けます。



70歳から貰い始めた人は70歳から42%増額の2,414,000円(月額201,166円)になりますが、11年10ヶ月後の81歳10ヶ月時点で年金総額が28,565,668円となります。


逆に普通に65歳から170万円(月額141,666円)受給の人なら81歳10ヶ月時点の年金総額は28,616,660円となります。


繰下げした人は11年10ヶ月が損益分岐点でそれ以降貰えば、年金総額は65歳から貰う人を逆転します。



だから、65歳から貰う人より総額は多めに貰いたいなら82歳くらいまで生きれるかどうかです。

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ちなみに、どこから繰下げしても11年10ヶ月が損益分岐点。
例えば67歳5ヶ月で繰下げしたら、29ヶ月×0.7%=20.3%の増額ですが、79歳3ヶ月で損益分岐点となりそれ以降は繰下げした人が得になります。




さて、今回の75歳年金受給選択案ってもので65歳から貰った人と比べてどこで損益分岐点を迎えるか。

こちらも11年10ヶ月です。



つまり、75歳から貰い始めた人は86歳10ヶ月より長生きしないと65歳から貰う人より総額は下回るって事です


まあでも65歳(170万円)から10年間年金受給を遅らせて、75歳から84%増えた3,128,000円を貰うとすればかなり生活のゆとりが増すといえばそうですね。



ただ、今の平均寿命が男性81歳で、女性は87歳の今はあんまし現実的ではないですね^^;

特に男性は…


今の時代は90歳くらいまで生きる人も珍しくはなくなりましたけど、ただ長生きするという事と、健康でイキイキと過ごすのとではまた違いますからね…

健康寿命に関しては平均寿命のマイナス10歳くらいとなっています。
だから今だったら大体70代前半までが健康で活動的にくらせる年齢って事。

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※追記
75歳まで繰下げを引き上げるとなるとまた別の問題が出てきます。
それは、年金繰下げ中に死亡した場合です。

今は年金貰うのを忘れたり、遅らせてたりしても年金の時効は5年だから過去5年分の年金まで遡って年金を一時金として貰えるんですよ(一時金だけど各年毎の雑所得になる)。



だから例えば年金の繰下げ中でちょうど70歳で死亡したら、
繰下げしないで65歳から本来の年金(上の例なら年間170万円×5年分=850万円)を遺族が未支給年金として受け取る形になります(未支給年金は一時所得)。


しかし、75歳に仮に繰下げを引き上げてしまうと、例えば繰下げ中に73歳で死亡したら68歳分までしか年金が遡って貰えず、65歳から67歳までの3年分の年金が時効で失われてしまう。


この辺の時効の問題もなんとかする必要が出てきます。


・編集後記
75歳引き上げに関して、支給開始年齢を75歳としてしまうというのが歴史的にいかに難しいかを有料メルマガにて続きを配信します。
歴史を見たら支給開始年齢引き上げするのがどれほど難しくて、いかに日本がちんたらやってるのか厳しく書きました(;´∀`)

皆さん冷静になってくださいね(笑)

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