#303で書きましたが、OPECの(建前上の)協調減産は、以下のようなものです。

2006年11月から: 日量2750万バレル→日量2630万バレル(日量120万バレル減産)

2007年2月から: 日量2630万バレル→日量2580万バレル(日量50万バレル減産)

この減産は厳密に守られているわけではありません。そもそもある加盟国が他の加盟国に対して強制力を持っているわけではないわけです。

「紳士でないから破っちゃう紳士協定」ってことですね。

日量120万バレルの減産は、5割程度の実施率だ、と言われています。

例えば、この記事に載っています。

記事(7): 日本経済新聞朝刊 2006年12月15日(金) 9面
「OPEC 2月から50万バレル減産 原油価格安定狙う アンゴラ加盟も承認」

この記事にも載っています。この記事には重要なグラフが載っていますので、後でまた取り上げます。

記事(8): 日本経済新聞朝刊 2006年12月20日(水) 29面
「OPEC追加減産 焦り映す 非加盟国の増産を警戒 高値維持、実効性に疑問も」

実際、日経の記事を追いかけていますと、イランなど他の有力OPEC加盟国の対日供給量がほとんど変わっていないことが報じられています。これについても、後で取り上げます。

120万バレルの減産の実施率が5割だとすると、

2750万バレル - 120万バレル × 50% = 2690万バレル

昨年11月~1月時点で日量2690万バレル水準の生産が行われていたことになります。

減産した量は日量60万バレル。

2月の減産で、更に日量50万バレルです。これの実施率は70%程度だと言われています。

記事(9): 日本経済新聞朝刊 2007年3月16日(金) 9面
「OPEC総会 生産量維持を決定 『原油価格、健全な水準』」

この記事によると、OPEC議長が「日量計170万バレルの減産の遵守率は7割以上」と発言したとあります。

仮に70%だとすると、

2750万バレル - 120万バレル × 70% = 2666万バレル

ということですね。おそらくはこれが2月時点での状況だ、というわけです。OPEC議長の言を信じるなら。

減産量は日量84万バレル。この量の減産が昨年11月から今年2月までの約3カ月間で行われた、ということですか。

前回紹介した記事の内容から、各月ごとの「契約量からの減産供給量削減率」を列記します。

2006年11月積  △7~8%
2006年12月積  △5%強
2007年1月積   △8~9%
2007年2月積   △10%強
2007年3月積   △8%
2007年4月積   △9~10%
2007年5月積   △9~10%

どちらかというと、時間が進むにつれて、減産供給量削減率が上がっています。

では、もう少し記事の内容に入りましょう。

一つ一つ見ていくと、興味深い記述があります。

「軽質原油は契約通りに供給し、重質原油は供給量を削減する。場合によっては大幅に削減する」という傾向が見て取れるのです。

色々ある記事の中から、「サウジアラビアが対日輸出量を削減すると通告してきた」ことを報じる記事を選びました。

以下のようになっています。

記事(1): 日本経済新聞朝刊 2006年11月14日(火) 30面
「サウジ、原油供給量を削減 12月積み 5-10%」

記事(2): 日本経済新聞朝刊 2006年12月13日(水) 24面
「サウジ、原油供給削減 継続 アジア向け1月積み OPEC減産観測広がる」

記事(3): 日本経済新聞朝刊 2007年1月12日(金) 30面
「サウジ 原油供給10%強削減 アジア向け2月積み OPEC減産に従う」

記事(4): 日本経済新聞朝刊 2007年2月14日(水) 31面
「DD原油 サウジ供給8%削減 アジア向け3月積み」

記事(5): 日本経済新聞朝刊 2007年3月13日(火) 31面
「サウジDD原油 4月積みも供給減」

記事(6): 日本経済新聞朝刊 2007年4月13日(金) 24面
「サウジDD原油 5月積みも供給減 アジア向け、7ヵ月連続」

OPECが(建前上の)協調減産を始めたのは、最近では昨年の11月からです。

OPEC全体で日産2750万バレルだったのを、11月から日産120万バレル分減産する、というのが昨年10月の総会での決議でした。

12月に臨時総会を開催し、そこで追加減産を決めました。日産50万バレル分を2月から追加で減産する、という決議です。

2750万バレルから120万バレル減らすと、2630万バレルです。

2630万バレルから50万バレル減らすと、2580万バレルです。

単純に計算すると、2750万バレルから2580万バレルへと、4カ月間で6%の減産だということですね。

では、この様子を新聞記事で追いかけてみましょう。

「軽い油より重い油の方が高い価格が付く」

これは異常な事態です。

West Texas Intermediate より高いだけでなく、Brent にも肉迫しています。Brent の13日の終値は六八・九七ドル。六五・六〇ドルより三・三七ドル高いですが、この価格差は通常より狭まった状態です。

West Texas Intermediate が何らかの原因で安くなりすぎた、という解釈も可能なのですが、Brent との価格差も考えた上で、またサウジアラビアからの供給量の変化も考えた上で、やはり何か普通でないことがあるのだろう、と私は考えています。

私は仮説を立てています。

「サウジアラビアの油田で、昨年から中重質油の生産がうまく行かなくなった」

新聞記事を読んで、昨年あるwebsite上の情報を見て、また、最近ある本を読んで、このように想定しています。

2番目に有名な指標銘柄は、イギリスで上場している Brent でしょうね。北海にある油田群の中に Brent という油田があるのですが、そこから取れる油です。

この Brent も軽い質の良い原油です。

ちなみに、Brent 油田は、今では主にガス田になっています。油が採れなくなっちゃったんです。ガスが上の方に溜まってしまって。それでガス生産に切り替えています。

ですから、確認したわけではありませんが、Brent という銘柄も、現物取引における影響力は現在ではおそらく大したことありません。しかし先物取引の指標としてはすっかり定着していますので、世界中の市場参加者が指標として参考にしているわけです。

3番目に有名な指標銘柄は、Dubai です。これは元々は都市というか国というか、とにかく場所の名前ですね。

アラブ首長国連邦は小さな首長国(emirate)の連合体ですが、その首長国の一つに Dubai があります。ここから産出する原油です。

この銘柄は、東京でスポットでも先物でも大々的に取引され、やはり定着しています。

前の2つの銘柄に比べると重い油です。ですから、Brent と West Texas Intermediate が大体同じくらいの価格が付く傾向があるのに対して、Dubai だけは1バレルあたりで5ドルくらい安い価格が付くのが普通でした。

それが、「価格が逆転」するようになったというのです。

前回、前々回と、「こいつ何言っとんじゃ?」と思われた方もいらしたかもしれません。

原油取引について、私が知っている範囲で少し説明します。

世界には色々な品種の原油が流通しています。その中で、人々から「これが指標だ」と目されている品種(銘柄)がいくつかあります。

「ニューヨーク原油先物」は、West Texas Intermediate という原油銘柄の先物を指します。WTIと略称します。WTIはそういう指標銘柄の一つです。というか、世界で最も有名な指標銘柄です。

WTIはテキサス州西部で産出する原油で、軽い質の良い原油だそうです。"Intermediate"と名づけられているのですが、後で説明するドバイと比較すると軽い成分が多いそうです。「昔石油産業華やかなりし時代のテキサスではそれでも中間くらいの品質だった」ということなのだと私は解釈していますが、細かいことはわかりません。

WTIは昔はたくさん採れたそうですが、今はほんのわずかで、WTIの現物取引(スポット取引)はほとんど市場に影響力はないそうです。先物取引では世界をリードしています。

予備知識ですが、石油は「軽ければ軽いほど価値が高い」です。

地下から掘り出す油のうち、軽い成分を我々は主に利用します。ガソリン、灯油、ジェット燃料、みんなそうです。プラスティックの原料となるナフサもそうです。

成分が重くなってくると、だんだん余るようになってきます。軽油はまだ全然軽くて需要が多いほうで、その次が重油。重油もAからCまで分類されていて、Cが一番質が悪いです。このクラスになると、火力発電や船の燃料に使います。自動車や飛行機には使えないんです。分解してガソリンなどにすれば別ですが、分解するためにはエネルギーを使わなければなりません。

もっと重くなると、タールやアスファルトになります。こうなると、道路の舗装くらいしか使い道がなくなります。

前回、「ある記事を読んだのをきっかけに」と書きました。

それはこの記事です。

日本経済新聞朝刊 4月14日(土) 25面

(Quote)
ドバイ原油続伸 7ヵ月ぶり65ドル台 東京スポット

東京原油スポット市場で中東産ドバイが十三日に続伸し、六月渡しが前日比一・五〇ドル高い一バレル六五・六〇ドル(中心値)を付けた。六五ドル台は昨年九月以来、七カ月ぶり。ニューヨーク原油先物の期近を上回る異例の逆転状態となっている。ドバイの上昇は三日連続。月初比では三・六%高い。

...(中略)...

一方、ニューヨーク市場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)期近は十二日時点で六三・八五ドル。四月に入って騰勢がやや弱まり、月初比三・二%安い。 ...(後略)... (Unquote)

ちなみに、13日(金)のWTI期近の終値は、一バレル六三・六三ドルです。東京ドバイの13日終値より2ドル近く下です。

この記事を読んだとき、私は「えぇっ!?」となってしまいました。

「ドバイのスポット価格がWTI期近(この場合は5月限)より高くなった」

このことに驚いたのです。

過去の記事をさかのぼって調べてみると、この逆転現象は4月9日(月)の東京スポット市場から始まっています。

昨年10月にOPECが減産を決めてから、サウジアラビアから日本へ輸入される原油の量が減らされていることが報道されています。

私は日経と日経産業新聞の記事をスクラップしています。ある記事を読んだのをきっかけに、昨年10月下旬からの記事を読み返してみました。

読み返して、やはり「これはサウジアラビアはやばいな」と、あらためて認識させられています。

バイオ燃料から離れることになりますが、極めて重要だと思いますので、しばらくサウジアラビアについて書きます。

新聞記事を一つ一つ見ていきましょう。

4月に入ってから投稿頻度が(減退局面が始まった油田のように)ガクッと落ちました。

これは仕事がめちゃくちゃに忙しくなったからです。やはり1日14時間労働(×週6~7日)はきついです。1カ月半ほどその状態が続きました。

これからは不定期更新とします。

とはいえ、できる限り「毎日更新」に近づけて行きたいところです。