なつやすみの日記!
例年のんびり過ごしている8月ですが、今年は長めのオペラプロジェクトに参加していました。
2017年に相応しくモンテヴェルディ、マイルストーンの如く音楽史上にきらめく初のオペラ『オルフェオ』。夏に相応しく、郊外の丘の上にあるお城『Schloss Waldegg』の庭で野外公演。
常に「いつもとは違うものが弾きたい!」夏休みの経験として申し分なし!

プレミエ前。いきなり雨天だったので市立劇場にて幕開け。笑
この時代のものを頼まれると、実は毎回「実のところなんの楽器を頼まれているのか??」というのがわからないことが多い。それは低音擦弦楽器全般を指す「ヴィオローネ」という名称のためであり、現在ひとこと「ヴィオローネ」といって指す楽器が古楽復興の過程で増えてきたからでもあります笑。具体的には、いわゆるコントラバス、一般のヴィオラ・ダ・ガンバの4度下の調弦であるGヴィオローネと呼ばれるチェロとほぼ同じ音域の出るもの、の2つで惑う場合が多いです。
第二版にはこういう楽器編成表が付いているので、主にここが参照されるわけですが、それにしてもViolino alla franceseなどどんな楽器だったか不明なものもあり問題は多いわけです。
で、私に関係あるところでいうと、右列上から二番目「Duoi contrabassi de Viola」ですね。この人数の編成で本当に二人もいたの!?という感じですが。
Violaは弦楽器一般。今までいろいろ読んだり経験した中で、Contrabassという名前が来ている場合の音域は16フィート(記譜の1オクターブ下が鳴る)だと思っているので、今回そういう「ヴィオローネ」を頼まれたのには納得。
指揮者はこのプロジェクトにあたり、この楽器編成を含む楽曲の成立や前後の類似のオペラ、時代背景などを40ページの資料にしてまとめて配布してくれていたので、何かと考察しつつワクワクしながらリハーサルを迎えました。

わかりにくい画像ですが。。
特別騒ぐことはなくとも、ちゃんと音律(1/4ミーントーン)を反映してチェンバロは分割鍵盤ていうのがいいですね〜
私のパートはStrument VII。最低音パート。
Strument VIもバス楽器。ドゥルツィアン。
(この2つのパートは部分的にバストロンボーンも担当)
Basso Continuoのパートを預かったのは、チェロ(今回は、こだわりで弓は下持ち)、第一チェンバロ/レガール、第二チェンバロ/オルガン、ハープ、第一テオルボ/ギター、第二テオルボ、リローネ/ヴィオラ・ダ・ガンバ。
つまり低音は9人!豪華!
この音響体は、本で読んだことはあっても、外から観客として聞いたことがあっても、中に入って弾くのは全然違う感覚。
役によって、場面によって、組み合わせを変えることによって全く違う効果が出て贅沢です。

今回は、リローネに名手がいたので本当に目からウロコの連続。(屋外の調弦の様子)
和音を弾くための弦楽器であるリローネ。音色は、割りと直接的でオルガンぽくもある。特にテオルボやハープといった、音の減衰する撥弦楽器で同じく「強弱のつく」和音楽器と同時に演奏しているときの効果がとても印象的でした。。ステキ。。

オルフェオがエウリディーチェを取り戻しに冥界に向かう三幕の最初は、編成上ながめの休み。この時に、自然の演出で(!)ちょうど日が暮れるのがこれまた憎いところ。
音楽の力で、冥界への船渡しカロンテを説得するPossente spirito(もちろん場面が場面だけに音楽的に超充実。オルフェオパートの書き込まれた超絶装飾も聞き所だし、エコーのヴァイオリン一対、ツィンク一対、ハープも聞き所)が、聞き手として集中して楽しめるのは毎度ありがたかったです。
しかし余談ですが、ウィキペディアに
- Claudio Monteverdi(63言語。日本語もある)
- L'Orfeo(29言語)
- Possente spirito(英語のみ)
と、充実してるのは作曲者、作品、個別の曲に対する強烈な尊敬を感じますね。
強風で譜面が乱れ飛ぶ波乱の公演ではありましたが、内容はデルニエに相応しいものでした!
バーゼルから一時間半ほどの場所にも関わらず客席に友人もチラホラ。他団体のオーガナイザーの姿も。

楽しい夏の思い出をありがとうございました!
8公演お疲れ様でしたー!


