中島哲也監督の映画が好きだ。

初めて観たのは「嫌われ松子の一生」。「告白」も良い映画だった。

一方で「来る」は最低。。。実力ある監督がなんであんな作品を撮るんだと、不思議に思ったのを覚えている。

 

本作は2004年公開。もう20年以上前になる。2000年代のどこかまだのんびりした、どこか余白のある時代の空気が色濃く、懐かしい気持ちになった。2010年代に入るとスマートフォンが一気に普及し、同時にSNSも世界中でコミュニケーションのスタンダードになると、人と人の出会いやつながりにも大きな変化が生まれた。

 

本作ではピンクハウスがモデルになっているだろう、ロリータファッションが趣味の桃子(深田恭子)と、ヤンキーでレディースのイチゴ(土屋アンナ)という、およそ交わることの無い二人が出会い、お互いが無くてはならない存在になっていくシスターフッドストーリー。出会いの場も、雑誌の掲示板だったりするのが時代を感じさせる。

 

二人の出会いは下妻という茨城の地方都市という狭い世界の中で起こっている。狭い世界ながらも、異なる価値観と世界で生きる二人は偶然か必然かはともかく出会った。スマホ、SNS全盛期でも同じことが起こっているが、目の前に横たわる世界はBeforeスマホ・SNS時代より格段に広がっている。時代を問わず、人と人の出会いには偶然と必然が伴う。だが、そこには必ず人間の意思が関わっている。どう生きるか、誰と生きるか、そんな自問自答を繰り返すことで、知らない誰かとつながることもある。

 

2006年公開の「嫌われ松子の一生」のような独特のライティングと色彩感覚による絵作りは、この作品でもすでに見られる。ハイトーンのような画像にジェットコースターのようにテンポよく流れていく風景。小気味よいセリフ回し。そんな演出に深田恭子と土屋アンナのキレのよい演技がハマっている。

 

中島哲也の映画に出たいという役者はたくさんいるらしく、脇を固めるキャストもなかなかの個性派ぞろい。

桃子の母に篠原涼子、祖母に樹木希林。父親に宮迫博之。イチゴの所属する暴走族の総長に小池栄子。更に阿部サダヲ、荒川良々、本田博太郎、生瀬勝久、矢沢心、岡田義徳、木村祐一らが名を連ねる。桃子が愛用している代官山のお店のマヌカンに名前の無い役で、真木よう子が出ていた。

 

一人で生まれて一人で死んでいく、友達なんかいらない、という信念で生きていた桃子と、同じ道を進む仲間とつるむのが美しいと信じてやまないイチゴ。この全く価値観が異なり、互いの生き方をどこか冷ややかに見ていた二人。そんな二人が何度も衝突を繰り返していつの間にか互いのことを必要と感じるようになるまでを見せる構成力がすばらしい。

冒頭、農道をホンダのかつて爆売れしたスクーターDJ・1R(懐かしい。大阪時代の実家にはDJ・1があった)を駆って農道を爆走中、四つ辻で軽トラに跳ねられて宙を舞うシーンからスタートし、終盤近くでそのシーンに帰ってくる。

 

そのあとの牛久大仏の見える原野での、暴走族によるイチゴへのリンチの場に現れた桃子による乱闘シーンが秀逸だ。

BGMに流れるのはヨハン・シュトラウス2世の「青く美しきドナウ」。「2001年宇宙の旅」でも使われた名曲だが、まさか牛久大仏を背景にこんなにハマるとは笑

シリアスとコミカルのまぜ具合が絶妙で、桃子もイチゴもとてもしんどい人生を生きているのに、どこか肩の力が抜けていて滑稽だったりする。

 

全然違う世界観を持つ二人。でも二人とも最後まで自分の生き方を曲げなかった。その生き方だけが二人の共通項であり唯一の絆なのだ。全編通して滅茶苦茶なストーリーに見えるが、人間、他者にカッコ悪く見えても信念を貫くことで道は開けるし、一人で生きるより二人の方が人生豊かになる、という爽やかな青春譚なのだ。

若き日のイケイケの深田恭子と土屋アンナの活き活きとした演技が心地よい名作です。