この春のドラマでは総合力で一番のドラマだったと思う。
また、本ドラマはABC朝日放送だったが、他にも関西ローカル局制作のドラマで秀作が多かった。
ジャンルはヒューマンサスペンスとのことだが、サスペンス要素を盛り込んだ、平凡な二人の女子の友情ドラマというべきか。
なかなか難しいテーマを実現するためにキャストされたのが、志田未来と畑芽育。
二人の共通点は、子役出身でキャリアが豊富、背が小さく童顔、共に演技の上手い実力派女優というところ。
志田未来。最近ますます存在感が高まってきた。
美央という女性の複雑な立場、心情を様々な表情、言葉で体現。すごいです。
志田未来の実績と実力はあらためていう必要はない。このドラマでも彼女の演技力がなければ、ここまで重厚感のあるヒューマンドラマは実現できなかった。
その志田未来の演技をがっちりと受け止めた畑芽育はさすがである。美形の彼女はこれまでどうしても軽い役しか得られなかった。イケメン相手の恋愛ドラマとか、可愛い女の子役ばかり。本来は「荒ぶる季節の乙女どもよ。」や、「たとえあなたを忘れても」でも見せたような、しっかりした演技ができる女優さんだ。やっと彼女の実力を発揮できる役に巡り合えたといえる。
畑芽育。もう美少女キャラは卒業だ。ユメの暗い過去をしっかり背負って、
もがき苦しみながらも健気に生きる一人の女性を演じた。次回作も期待。
脚本を担当した弥重早希子はまだそれほど名が知れていないが、あのNHKの名作「3000万」でWDR(共同脚本)によりいいお話を書いていた。登場人物の繊細な心理描写を表現でき、物語の構成力も高い、実力ある脚本家といえる。
本来ならば出会うことのなかった中田ユメ(畑)と大迫美央(志田)。
ビルの屋上で自殺を図ろうとしていた美央の母親の美郷(榊原郁恵)をたまたま見つけたユメは、説得を試みる。なんとか思いとどまらせたと思った直後、急に飛び立った鳩に驚いたユメが、思わず美郷の背中を押してしまい、結果的に美郷は転落死をしてしまう。更に、その真下にいた男性・近藤(原田龍)が巻き添えを食うという事態に。
すぐに救急車を呼べばよかったのだが、ユメの彼氏のケンケン(藤井流星)諭されて、現場から逃げてしまう。
事件後、自責の念にかられたユメは美郷の遺書を持って、家族に渡そうと美郷の家に向かう。そこで見つけたのは母親の死を自分のせいだと悔やみ、首つり自殺を図ろうとしていた美央だった。美央を助けたユメだったが、自分が母親を殺した張本人と言い出せないまま、二人は友達になり、唯一無二の親友となっていく。。。。
この展開がとても自然で、どんどんストーリーに引き込まれていく。
また、ユメは自責の念にかられ何度も美央に真実を伝えようとするのだが、なかなか言い出せない。
5話まではこんなもどかしくも切ない状態が続き、その周辺では個性的な面々が様々な人間模様を繰り広げる。
弥重早希子の脚本が素晴らしいのは、それらさまざまな人間模様を情感豊かに破綻なく紡ぎあげていくテクニック。
「3000万」でもそうだったが、期待をいい意味で裏切る展開を見せたりと、気が抜けない。
サスペンスと友情を軸に展開しつつも、その芯にあるテーマはタイトルの「エラー」にある通り、人生における過ちや間違いを背負いながら生きる二人の女性の、魂のぶつかり合いである。
まっすぐに生きようとするあまり、いつも過ちを犯してしまい、その過ちと向き合うことなく逃げる人生を送ってきたユメ。
彼女のような人間は特別な存在ではない。極端に描かれているが、誰しも胸に手を当てると過ちを犯して、それに向き合えず逃げたという過去はあるはずだ。
そんな過ちを許さない今の日本の息苦しさ、生き辛さがどんどんユメを、現代人を追い詰めていくのだろうか。
美央は真実を知らないままユメを優しく受け入れ、友情を深めていく。美央もまた孤独な存在だったのだ。
だが5話でとうとうユメが、自分が母親を殺してしまった張本人であることを美央に告げてからの美央の豹変ぶりが凄い。志田未来のユメへの凄まじい感情の発露は、観ているこちらが堪らなくなるほど。ユメの心情と同化し心が八つ裂きにされそうなほどの迫力だ。信じていたからこそ、裏切られた人間の怒りと憎しみが苦しいほど伝わってくる迫真の演技。
ユメには子供の頃に、母親を守るためにどうしようもない父親を見殺しにするという暗い過去を持っていた。
そのことで母親がユメのことを「あなたを産んだのが夢ならよかったのに」と言ったのが、自分の名前の由来だとずっと思っていた。しかし最終回、実は自分自身につぶやいた言葉だったということを思い出し、そっと子供の頃の自分を抱きしめるお話はとても感動的だった。
家族からも誰からも理解されず孤独なまま、過ちを犯し、時には逃げたりしながらも懸命に生きていくユメという存在を繊細に描いた脚本と、ユメを全身全霊で演じた畑芽育もまた素晴らしいと思う。
そのほかにもいろいろと書きたいことがあるのだが、もう一度ゆっくりと見返してみたいドラマである。
それだけ構成の緻密さ、登場人物の心情表現、俳優陣の名演など見どころが満載だ。
共演者は、原田演じる近藤の妻・紗枝に菊川怜。彼女の毒妻よろしくの演技も圧巻。物語を動かす重要な役で、その存在感が際立っていた。またユメの母親・千尋に栗山千明。母親役をやる年になったのね、と感慨深いとともに、その存在感で物語を引き締めている。ユメの弟・太郎は坂本愛登。最近着々と成長してよい演技が光る。ユメと美央が世話になる刑事に岡田義徳。そのほかに阪田マサノブ、藤重政孝ら。
それから共演美女を探せのコーナーは、北里琉。新人ながら堂々とした演技で大物感がすごい。次クールのドラマ「GTO(2026年版)」での出演が決まっているようで、おそらくこれから活躍していく女優さんだと思う。
北里琉。激しい感情表現にどぎついセリフを整った顔立ちでいうギャップ萌え。
でもしっかりとセリフを言える若手女優さんはなかなかいない、という点で彼女はすごい。
将来期待の星。
ラストシーン、母親が転落死したビルの屋上で缶ビールを飲む二人。
美央がユメに対し、今後もすべてを許すことはできない、違う形で会いたかったと呟く。
二人はやはり元のような親友に戻れないのだろうか。いつしか眠ってしまったユメと美央。
朝になり、先に起きて朝焼けを見ていたユメに美央がおはよう、と声をかける。微笑みあう二人。
二人はきっとお互いの間にできた心の溝を、いつか乗り越えられる。
そんな希望を感じさせる素敵なエンディングだった。



