WOWOWもいいドラマを作っている。
この作品も地上波では地味すぎて、NHKしか手を出さないだろう。
原作・桜井美奈、監督・松本佳奈。
主演が奈緒で、共演が夏帆と、もう演技合戦の良作としか想像できない。
脇を固めるのも小林聡美、光石研、朝加真由美、成海璃子、由紀さおりときたもんだ。
これは間違いなく、ドラマ通が観て後悔しないレベルのものになるはずで、事実その通りだった。
「塀の中の美容室」というタイトルから想像するのは、我々「塀の外」の人間が非日常の特殊な環境で起こる様々な人間模様や、受刑者の人間ドラマといったところだろう。MATTもそういった想像を巡らせていた。
1話から4話までは、奈緒演じる小松原葉留が理容師資格を取って、刑務所内にある美容室で仕事を始めるところから始まり、ユニークで訳ありなお客との交流の中で、彼女の身の上が少しずつ語られていく。
5話から最終話(7話)でこの作品が描きたかった本質が徐々に見えてきて、ハッとさせられる。
テーマの一つとして受刑者の刑務作業に関するやり取りがあった。
受刑者が出所して社会に出た時に、少しでも自立して生きていく一助になるようにという狙いなのだが、この作品ではその仕組みに対して、冷静な議論を投げかけている。奈緒演じる葉留も、彼女の理容師の訓練を行った刑務官の加川(成海)も、自分のやっていることに疑問を持つ。果たして自分が行っていることは(受刑者の更生の)役に立っているのか。
社会に出ると、受刑者に対する世間の冷たい目が待っている。どんなに更生を謳っても、心から信じ受け入れてくれる人ばかりではない。いや、むしろそういった人たちは少ない。だから、葉留も加川も自信が持てなくなる。
そんな二人に、刑務所所長の保坂(光石)や刑務官の菅生(小林)は、真摯に向き合い諭す。
それでも自分たちはできることをやっていくしかないのだ、と。
1話で刑務所内の美容室という存在に関心を持ち、記事にしようと若い女性記者・芦原志穂( 祷キララ)がやってくる。
彼女は二度、美容室を訪れて最終話で美容室を記事にする。最初に美容室を訪れた芦原は、あまりの普通さに拍子抜けをした。
だが、それは彼女が刑務所やそこにいる受刑者を、いつの間にか「特別な存在」として見ていたからだと気づく。
受刑者たちは、「罪を犯したから」そこにいるだけであり、自分たちは「まだ罪を犯していない」だけの存在に過ぎない。受刑者は自分たちと同じ人間なのだ、と。
この視点は情緒的ではなく、冷静で正しいと思った。社会に出てきた受刑者を特別に大事に扱う必要はないのと同時に、特別にさ蔑んだり排除するのも違う。受刑者に対する眼差しについて、示唆に富んだエピソードで心に残った。
奈緒演じる葉留はあまりにマジメな性格で、中島歩(クズな役がなんでこう上手いのか・・・)演じる悪い男に騙されて、刃物で刺して傷害事件を起こす。彼女の姉である奈津(夏帆)の交際相手の津田(上川周作)に言われた「自分のことばかりで、家族のことを考えているのか」という言葉が胸に刺さる。
葉留はあまりの生真面目さから、相手の男にも大いに非があり情状酌量も認められたにもかかわらず、被害者の望むままの罰を受け入れた。この結果、奈津は婚約解消され、家族は世間の誹謗中傷にさらされ不幸のどん底に堕とされる。
最終話で、姉や葉留を見守る周囲の優しい人たちに諭され、母親(朝加)の愛情も受け入れて仮釈放の道を選ぶ。
泣かせるドラマではない、と思っていたがドラマの後半はうるっと来る部分が多々あった。
受刑者の過酷な人生を客観的に描いた原作と、実力派の役者による確かな演技がリアリティと安っぽくない感動を作り上げている。
その他出演者は、中島セナ、長井短、西田尚美、安藤聖、広岡由利子、伊勢志摩など。
木梨憲武が最終話でちょい役で出てくるが、これは監督の松本佳奈が撮った「春になったら」に出ていたからだろう。奈緒もw主演で出演していたし、光石研や小林聡美も同作に出ていた。
物語はずしんと重く暗いのだが、決して他人事ではないテーマだ。そしてそんな難しいテーマを脇役まで含めて、素晴らしいキャスティングで作った意欲作。共演者に実力者を従えた中での、奈緒と夏帆という二人の女優の演技力が光った良作でした。
