こういう映画は好きだ。
吉岡里帆と松本まりかが出ているので選んだ本作だったが、想像以上に良い作品だった。
本業が映画監督でない千原徹也による意欲的な本作は評価が大きく別れるところだが、そもそも映画などの芸術作品は、起承転結の有無や何が正解かなどを問うこと自体がナンセンスだ。好きか、嫌いか、評価はそのどちらかでいい。
アートディレクターである千葉監督が、川上未映子の小説を原案にして、スタイリッシュな作品に仕上げた。
セットや衣装、そして光の使い方など、まさにアイスクリームのような色彩で彩られた絵に、ほぼ全編主要な登場人物は女性だけ、という「男」の存在は物語の添え物程度とした脚本など、見るべきところは多い。
ハンディカムを使った映像も効果的だ。
物語は訳合って仕事を辞め、アイスクリーム店の店員をしている菜摘(吉岡里帆)と、客として訪れる謎の女性・佐保(モトーラ世里奈)の恋愛関係にも見える不思議な人間模様と、キャリアウーマンの優(松本まりか)と、連絡の取れなくなった父親を捜しに東京に出てきた姪っ子の美和(南琴奈)のぎこちない同居生活という、2つの異なる話が並行して描かれる。
だが途中で、優と美和が暮らすマンションのベランダの天井にあるピンクの花びらのような模様から、実はこの2つのお話が時間軸では同時進行ではなく、菜摘と佐保のお話より少し遅れて、優と美和の話が進んでいるのがわかる。この模様はストーリー上でも割と重要な存在で、冒頭からラストまでちゃんと伏線回収もなされていて面白い。
菜摘も優も自分自身に負い目を感じながら生きている。
菜摘は、仕事での才能や人との比較においての自身の存在意義などに悩み、苦しくて仕方ないのに誰にも言えず、一時的にアイスクリーム店のアルバイトという逃げ場を作って生きている。
優は、付き合っていた男性を姉に取られてしまい、そのため大喧嘩をして仲たがいしたまま姉を亡くしたことに負い目を感じている。(その男性が美和の父親なのだが)
そんな二人の元に現れた二人の女性によって、菜摘と優の人生は大きく変化する。
小説家の佐保にどんどん惹かれていく菜摘。佐保は鮮烈なデビューを果たすも、2作目が書けずにいるが、彼女の自由で何者にも縛られない発想や生き方は、徐々に菜摘の精神を解放する存在となる。
優にとっての美和は、憎い姉の娘であり目の上のたんこぶのような存在であったが、美和の純粋な心や、忘れていた姉との関係を思い出させてくれることで、二人の間の距離が少しずつ縮まっていく。
この2組の女性のお話は、物語の中でちょっとずつ交錯している。
しかし、それぞれの生活には大きく影響しない。
実際の世の中では、知らないもの同士の互いの生活が直接影響したり、しなかったり。
そこにはたくさんの人生が同じ、または異なる時間軸で交わりながら息づいている。
菜摘も優も、自分の新しい人生を掴む。
菜摘は意を決してアイスクリーム店の店長になる。
佐保と一緒にアイスクリームを作った夜の不思議な体験が彼女の背中を押した。
ラストシーンで佐保や優が住んでいた部屋に住み始めた男性が菜摘の店に来た時に持っていた本は、佐保の2作目でタイトルは「100万年君を愛ス」。
それはあの夜、佐保が菜摘にお店の名前「SHIBUYA MILLION ICE CREAM」の由来を問われ、菜摘が答えた言葉そのままだった。
優も会社を辞めて、常連だった銭湯を買い取って経営者となる道を歩む。
そこで美和のイヤリングの話から、実はそのイヤリングは優が姉の愛にあげて、愛がそれをずっと大事にしていたことを知る。姉は自分のことを愛してくれていた。
美和という存在をあらためて愛おしいと思い抱きしめる優。
彼女の中で、姉へのわだかまりが愛に代わった瞬間だった。
吉岡里帆、松本まりかの自然体の演技が作品にマッチしていて素晴らしい。
今回のようなちょっと特殊な映画の作りに、柔軟に答えられる力量があるからこそだろう。
名作「透明なゆりかご」でゲスト出演ながら、存在感を発揮していたモトーラ世里奈は、こういう芸術的な作品に映える女優さんだ。唯一無二の存在感。
南琴奈はまだまだ若いが「ミステリと言う勿れ 特別編」で美少女ぶりを発揮して記憶に残っていた。畑芽育に負けないくらい横顔がきれいな和風美人。横溝正史シリーズなどに是非出てもらいたい。
またほとんど出番はないものの、優のストーリーで重要な存在である姉の愛役は安達祐実。最近の彼女の女優としての存在感は増すばかり。
子役出身でここまで成功した女優さんもなかなかいない。
ほかに、銭湯のおばちゃん役に片桐はいり。菜摘のアルバイト仲間に水曜日のカンパネラの詩羽など、個性的なわき役もいい。
MEGUMIが出ていたらしいのだが、最後までどこに出ていたかわからず、、、、苦笑
見る時の心持で違った感想になるかもしれないので、また観てみたい良作だった。
