2017年~2018年アマゾンジャパン配信ドラマ。
こんな面白いドラマが埋もれていたとは。
というのも、第一章はフィクションであると謳っていたのに、実際は足利事件を題材にしたノンフィクションに酷似しており、かつ事件の被害者遺族の同意も得ず制作されたことが判明し、評価が地に堕ちてしまったためのようだ。
制作過程の問題は看過されるものではないけれど、ドラマ制作側の想いや作品としてのクオリティは非常に高く、きちんとした段取りを踏んでいたら名作になっていた可能性は高い。
いや、しかしもしかすると正規の手続きを踏んでいたら、劇中で描かれた展開のように、こんなにドラマチックな作品にはなっていなかったかも。判断が難しい作品だ。
数々の話題作を世に送り出してきた福田靖の脚本は、スリリングかつ余韻を残す作りで、ドラマが発信するメッセージに対し、考える余地を与えてくれる。
大谷亮平演じる過去に闇を抱えるフリージャーナリスト・三上と、本田翼演じる駆け出しのBSTVのAD相沢の二人のバディもの。
TV局のスタッフはみんな何かしら事情を抱えてBSに左遷されてきた個性的なメンバーがそろう。TVキャスターの斉藤(羽田美智子)、エグゼクティブプロデューサーの長谷川(岸谷五朗)、
局長の平山(田山涼成)など。
第1章は冤罪事件として衝撃的な展開となった足利事件が(たぶん)ベースとなっていて、全7話が短いと思えるほどテンポよく展開していく。
確かに、遺族感情を考慮せずに被害者少女の殺害シーンを挿入するなど、やりすぎな部分もあったが、総じてサスペンス性と社会性をバランスよくミックスした脚本と、役者陣の緊迫感あふれる演技で素晴らしい作品に仕上がっている。
第2章は一転、往年の名作「TRICK」や「SPEC」のような少しオカルトチックな作りで、財前直美演じる催眠術を操る謎めいた女・畑山 香奈子が19年前に犯した罪を、三上・相沢が追いかけ、追い詰めていくというストーリー。
こちらは第1章の骨太さとは違い、おどろおどろしい闇に足を踏み入れていく緊張感がある。オカルト過ぎず、さりとて恐怖の質を落とさない絶妙なバランスの脚本・演出だ。
少年を誘拐して監禁したり、実は香奈子の幼い娘・由季枝が真犯人だった、という衝撃的な内容は地上波では放送づらく、配信ドラマの本領発揮ということだろう。
真犯人の由季枝が、相沢に催眠術をかけて何か囁いているところが無声で流れて、そのままエンディングに突入していくラストも斬新。
最近のドラマはいちいち説明しすぎて、想像力を掻き立てることがない。
「特捜最前線」は、結末を見せず余韻を残す脚本が多く、心に残る名作ドラマとなった。
視聴者は観終わったあとも、想いを巡らせることができる。
なかなか意欲的で、見どころあるドラマだったが先に書いた通り、色々な問題があったからなのか、その後続編もなく終わってしまったのが惜しい。
シリーズ化できるくらいの実力を持ったコンテンツだったのに残念だ。
大谷亮平演じる骨太でタフな三上は魅力的だし、当時25歳だったバッサ―こと本田翼も、演技が平板と揶揄されることの多い彼女だが、この作品での相沢はとてもハマり役だったと思う。ちなみに相沢のキャラを今、誰か代わりに演じるとしたら、芳根京子あたりがいいかもしれない。
このドラマでの本田翼は良い演技をしていました。
また第1章では、でんでん、嶋田久作、平田満ら3人のベテランが主要キャストとして、ドラマのレベルをぐんとupさせてくれている。またゲストには池田良、松田洋治、海原はるか、井上肇など。
第2章では、森尾由美、矢柴俊博、橋本じゅん、山下容莉枝、大鷹明良、中島亜梨沙と、ゲストは少ないが、良いキャスト。
冤罪を扱った名作ドラマといえば、「エルピス-希望、あるいは災い-」が記憶に新しいが、あの作品はきちんと評価を得たので、このドラマもちゃんとした手続きを踏んで作られていれば、、、と本当に残念だ。