この作品も実にテレ東らしい。

 

3組のカップルがグアムに旅行に来て、ただひたすらお互いの関係性について、時に内省的になり、時に激しくぶつかり合う様子を淡々と描くだけのドラマ。

地味な事この上ないのだが、それを作ってくれるテレ東には敬意を示したい。

 

キャスティングも玄人好みするものだ。

泉美優(蓮佛美沙子)、泉陽介(溝畑淳平)は30代、結婚3年目のカップル。

ともに仕事を持ち、子供のことや将来のことなど、二人の間で共有し話すべきことが最もある年代ではないだろうか。

実力派の二人のリアリティある会話が見どころだ。

 

星野あかり(中井友望)、三崎陸(百瀬拓実)は20代の恋人同士。

大学生の彼女がシンガーソングライターの彼氏にぞっこんだが、異国の地に来て普段言えないことを伝えることで、二人の関係がギクシャクし、、、

これも若手実力派の中井友望と、まだ演技経験の浅いフレッシュな百瀬拓実が演じることで、危うく脆いバランスの上に成立している若者の恋愛事情が際立つ。

 

中井友望。

「ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!」から宮内茉奈役でレギュラーに。

最近ドラマにもよく出てきていて、若手実力派と見ている。

 

花田健次郎(勝村政信)、花田寛子(いしのようこ)は50代の熟年夫婦。

MATTはこの世代なので、二人の距離感と抱える悩みはシンクロするものが多かった。

人生も終盤を迎える年になってくると、お互いに携えてきた時間が多く、それだけに問題を解決するのにはそれなりの時が必要になる。

そこを二人のベテランが味わい深い演技で魅せてくれた。

 

帰国する1週間後に一組のカップルが別れる、というキャッチフレーズで30分x8回のお話が展開されていく。中盤までは3組それぞれに問題を抱えていて、どのカップルが別れることになるのだろうかという考察が楽しめるが、終盤に至って、ああやはりそうだよなという結末に落ち着く。しかし、それは気持ちの良い予定調和であり、違和感はない。

 

世代の違う3組のカップルが、あらためて自分と相手を見つめなおし、心をこめた対話を通じて自分にとっての相手、相手にとっての自分を再定義する。

結果、「今」だけではなく「未来」の自分にとっても、二人が一緒にいる理由がそこにあるか?と探っていく。

「理由」はとても重要だ。

それは自分にとっても相手にとっても、「二人でいる」意味がそこにあるからだ。

自分ひとりだけの「理由」では意味がない。

「二人にとっての理由」があればこそなのだ。

 

そしてその「理由」が無いことに気づいたのは、美優と陽介だった。

お互いに愛し合っているが、それが二人が一緒にいる理由ではない。

このことに気づいた二人はビーチで涙を流し微笑みあう。

これ以上悲しい別れはあるだろうかと思うけれど、二人が出した答えだから、そこにわだかまりはない。未来の二人がどういった関係性になるのか、想像が膨らむ別れ方だ。

(ちなみに、花田夫妻も1年間考えて結論を出す、という決断を下したのでまだわからないが)

 

夫婦やカップルという「二人」が主人公のドラマだったが、裏返すと、これは「一人で生きる」ことの再考にもつながっている。

人が誰かと一緒にいなければいない理由とは、何なのか?

二人にとっての理由がなければ、一人で生きていくというのも立派な選択だ、ということではないか。

 

自分のことや人生を色々と見つめなおすことができるドラマが好きだが、テレ東はこういう作品を丹念に作ってくれるので、本当に神である。

 

エンディングテーマの、macicoが歌う「soiree」は、ドラマのアダルトな世界観にぴったりのセンスある選曲でお勧め。