坂元裕二脚本のドラマは大好きだ。
だが、映画となると自分が思っている坂元作品と違うので、あまり得意ではない。
「花束みたいな恋をした」「怪物」ともに良作だったが、ドラマほどのインパクトは受けなかった。この「クレイジークルーズ」は映画ではなくNetflixの配信作品だが、2時間ほどの尺の作品なのでやはり連続ドラマとは違うテイスト。
坂元裕二脚本のミステリー&コメディというので、少し期待して観たのだけど期待値が高かったからなのか、ちょっと思っていたのと違った。
独特で魅力的なキャラクターを駆使して軽妙な会話で盛り上げていく手法はそのままに、でもどこかぐっとくるものが無いのはなぜだろう。
吉沢亮扮するクルーズ船のバトラー・冲方優は個性的だし、登場の仕方やファッションなどインパクト大の盤若千弦を演じる宮崎あおいも良い。
キャストもよく練られている。
船長の吉田羊はじめ、乗船客に菊地凛子、永山絢斗、蒔田彩珠、泉澤祐樹、長谷川初範、高岡早紀、安田顕、岡部たかしら、菜葉菜、光石研が名を連ねる。
クルーズ船のスタッフにも岡山天音、松井愛莉、近藤芳正、宮崎吐夢らが。
宮崎あおいの彼氏役は眞島秀和ときた。
それぞれの俳優さんたちは、役にピタリとハマっていた。
キャスティングは豪華なのだが、ストーリーがどうも盛り上がりに欠ける。
設定を見て、「マスカレード・ホテル」のように華やかさの中で様々な人間模様が描かれるのだと期待していたが、マスカレード・ホテルが高度10000メートルまでぐおーーーんと上昇し、その後急降下してジェットコースターのような爽快感を提供したのと違い、ずーっと低空飛行で、そのままドキドキもなく着陸したかのよう。
監督の瀧悠輔はあまり監督経験がないようだが、それも一つの要因だろうか。
坂元裕二の脚本っぽかったのは軽妙で独特な会話と、社会的弱者への優しい視線だけだった。
あまり書くことが無くなってしまったが良かった点は、宮崎あおいがいくつになってもキュートで高い演技力を備えた女優さんだったということ。
黄色のワンピースにスニーカーというファッションは、一部で痛いというコメントも見られたが、あれが着こなせる宮崎あおいを、むしろすごいと思う。
豪華客船のクルーズという舞台で、極上のミステリーと恋物語を描くのには十分な脚本、キャスティングだっただけに、無念の一言。
やはり、坂元裕二は連続ドラマでじっくり楽しめる作品がいいのだろうか、、、、