アクションコーディネーターの園村健介が監督というので、え?と思ったら、しっかり阪元裕吾が脚本で参加、そして高石あかり初の単独主演映画というので、これは観ないといけない。

 

殺し屋が出てきて、シリアスとコミカルを織り交ぜながらテンポよいアクションで魅せるスタイルは、阪本ワールドの真骨頂。

そして、本作品も100分前後でスパッと終わる。この潔さがいい。

 

高石あかりは、河合優実と並んで若手実力派の筆頭株といえよう。

どんなキャラでも難なくこなし、感情表現も豊か。

何よりその作品の空気を作ることができる。

若いのにそれができる女優さんはなかなかいない。

彼女のいいところは、感情の起伏や表情の変化を切れ味鋭く演じ切るところ。

この感性を持っている同世代の女優さんは、河合優実くらいかも。

 

ストーリーは、任務遂行直後に何者かに殺された腕利きの殺し屋・工藤(三元雅芸)が、幽霊となって普通の女子大生・松岡ふみか(高石あかり)に憑依してしまうところから始まる。

ふみかはおとなしい性格ながら、人よりも正義感が強く、ちょっとしたきっかけで思わぬ暴走をしてしまうような女性。

だから最初は殺し屋なんて、と拒絶反応を示していたのが親友のマホ(東野絢香)のために無茶な行動に出るなど、ちょっとしたきっかけで人生転げ落ちていってしまうタイプかもしれない。

 

阪本・園村コンビの映画は、当然激しいアクション(ガンアクション含む)あってのものだが、果たしていくらアクションの訓練をしたからといって、伊澤沙彩織がいないのに高石あかり一人で大丈夫か、、、、と心配したのだが稀有に終わった。

阪元裕吾の巧みな演出により、激しいアクションシーンは「ベイビーわるきゅーれ」でも出演していた三元雅芸がきっちりと魅せてくれる。

もちろん、高石あかりも「ベビわる」で培った軽快なアクションを随所で見せてくれる。

 

出てくる役者さんも一流のスタントアクターたちが中心だ。

今回も川本直弘、木部哲といった役者さんのアクションのキレで持っている。

だから、演技がどうこうよりアクションシーンを安心して観ていられる。

本宮泰風、山口祥行らVシネマの名俳優らも多数出演していて、暗黒社会の雰囲気を盛り上げてくれる。

 

阪元裕吾の作品は、なんとなく北野武監督の世界観に通じるものがあるような気がする。

血と暴力、銃、義理人情。シンプルだが、人間が内に秘めてしまっている、危うくて醜い何かをチラ見せするような感じ。

ずっと感じていたわけではないが、本作を見てちょっと思ったりした。

 

工藤を慕っていた同じ組織の影原利久(黒羽麻璃央)とともに、(工藤が憑依した)ふみかは、組織を壊滅させる。

目的を果たした工藤は成仏するのだが、ふみかとの涙の別れのシーンはない。

知らないうちにいなくなっていた。

そして、すべてが終わって普通の生活に戻れたふみかを待っていたのは親友のマホ。

二人で笑いながらアパートに帰って行くところで、物語はスパッと終わる。

阪本作品はこの辺の情に流れない締め方が心地よい。

 

映画を観ていながらふと思ったのだが、すべてが終わった最後にふみかがそのまま殺し屋組織に入ってしまい、それが「ベイビーわるきゅーれ」のちさとにつながってたら面白いのにな、と想像した。まあ、それは蛇足なので無しでいいけど。

 

高石あかりが朝ドラ女優になった今、阪元裕吾もなかなか彼女を使いづらくなるのかもしれないけど、でも、やはり伊澤彩織とのコンビをファンとしてはどうしてもまた観てみたい。

しばらくは無いかもだが、ぜひ、待ってます。