普段はラブロマンスは積極的に見ないのだけど、古川琴音がヒロインということで、彼女の演技を楽しむ目的で観てみた。
2007年にヒットした台湾映画のリメイク。河合勇人監督。
SixTONESの京本大我が主演ということで、おそらく彼のファンによってしっかりと興行成績は支えられただろう。
人気アイドルのお相手となると、これまた気を遣うので女性ファンにやっかみを受けないキャスティングとして、古川琴音が選ばれたのではないだろうか。
実力のある彼女にとっては経緯はどうあれ、ヒロインを演じるチャンスができたのだから、MATTのようなファンにとってはありがたい限り。
その古川琴音、とても良かった。
存在とお芝居だけをずっと見ていたい、という女優さんはそうそういない。
特に、コケティッシュという言葉がピタリとはまる若手女優は、古川琴音以外には思い当たらない。この映画のヒロイン・内藤雪乃を演じるにあたり、彼女は少々舌足らずな話し方をしている。もともとややそのきらいはあるものの、努めてそういうしゃべり方をしていた。
その役作りによって、ミステリアスな雰囲気をまといながらも、京本大我演じる樋口湊人を追い回す、ちょっと不思議で可愛い女の子を上手く表現していた。
古川琴音。
もし自分が映画監督やドラマの脚本家だったら、絶対に主役で使いたい女優さん筆頭。
彼女はきっと、監督、脚本家が色々と試して使ってみたくなる女優さんではないだろうか。
今まで彼女の出演作はたくさん観てきた。どれも印象に残っているが、「偶然と想像」が一番良かったかな。濱口竜介監督も古川琴音の持ち味を活かしている、と感心した。
想像力貧困なMATTは、物語の途中まで雪乃は幽霊なんじゃないのかと思っていたが、そのプアな予想は、ラスト30分であっけなく覆させられる。
実はこのお話、バリバリのSFだった。
雪乃は21年前の世界から、音大の古くなって使われなくなった施設にあるピアノのある部屋を通じて、過去と未来を行き来していた。
タイムリープの設定が雑だ、という映画批評が多々あったが、そもそもラブロマンスなのだからSF設定は主菜ではない。そんなことグダグダ言うな、と。
(まあ、演出上でちょっと違和感の残る部分は確かにいくつかあったけど、、、)
若くして病に冒されてしまった雪乃の、湊人を想う切ない気持ちがラスト30分の種明かしで、切々と綴られる。
雪乃は自らの命の時間が幾ばくも無いことを知りながら、限られた時の中で、湊人と共にいる日々を美しいものにしようとする。
その健気さと一途さに思わずほろりとさせられた。
共演者は横田真悠(「荒ぶる季節の乙女どもよ。」が懐かしい)、坂口涼太郎、皆川猿時(「東京サラダボウル」は良かった)、西田尚美、尾美としのり。
横田真悠。
「西園寺さんは家事をしない」で久しぶりに見た。大人っぽくなりました。
古川琴音がヒロインを普通の女の子として演じている、というのはレアかもしれない。
でもこの作品で演じた雪乃は、彼女の持っている魅力をばっちりと表現できる役という意味では、ファン必見の作品と言えるかもしれない。