野木亜紀子のドラマが好きだ。

坂元裕二のドラマはほとんど観たが、彼女の作品は「逃げ恥」含め、いくつかコンプリートしていない。そこで、ガッキーに松田龍平というキャスティングに加え、黒木華、伊藤沙莉が脇を固めている、このドラマをチョイス。2018年の作品。

 

あらすじなど、まったく前情報無しに観たが、こんな名作をまだ観ていなかったのか、と3年で500本以上のドラマ・映画を観てきても、まだまだだな。。。。と嬉しいやら悲しいやらだった。

 

野木亜紀子の脚本の安定感と、水田伸生の演出という強力布陣。

そこに、当時30代になり脂の乗り切っていた新垣結衣に、個性派かつ実力派の松田龍平のコンビによる、オリジナル脚本の恋愛ドラマとは、なんと贅沢。

 

野木亜紀子らしく、キャラクターはどれも一筋縄な性格ではないが、でもどこか憎めない。それは、そこに生きている彼や彼女が持っている、他人に理解されない心の優しさに共感を覚えるからだろう。一つ一つのセリフも、強く心に響いて染みる。

 

当たり前のことが当たり前ではないことに気づかされたり、ある事実を裏から見ているような一言に、ハッとさせられたり。

そんな野木脚本を、深海晶役の新垣結衣、根元恒星役の松田龍平という二人だけでなく、菊地凛子、田中圭、伊藤沙莉、黒木華らが、的確かつそれぞれの持ち味を存分に生かして演じている。

なんと見事なキャスティングであろうか。

 

黒木華。

内面にとてもドロドロしたものを持っている朱里という難役。彼女ならではの演技。

 

伊藤沙莉。

この頃の彼女は「これは経費で落ちません!」でも、本作同様、脇役なのに隠せない存在感で、着々と足場を固めていた。

 

共演者も、田中美佐子、一ノ瀬ワタル、近藤公園、犬養貴丈、吉村界人、山口馬木也、安井順平、大河内浩、金井勇太、松尾貴史、飯尾和樹ら、個性あふれる面々。

 

特に、深海晶の働くIT企業のやり手社長・九十九剣児役の山内圭哉は、その独特の風貌に関西弁で早口にまくしたてる、パワハラっぷりが素晴らしく、この作品に無くてはならない存在となっている。九十九社長を見ていると、北米時代の上司だったキャプテンを思い出す。

晶がどんどん疲弊していく姿を見て、あの頃を懐かしく思い出してしまった。。。。笑

また、一ノ瀬ワタルも、悪役ではなく恒星を慕う憎めないキャラで好演。

 

ゲストも多彩で、八嶋智人、三浦誠巳、穂志もえかなど。

また、田中美佐子演じる花井千晴の夫の若いころを前原滉、そして彼と運命の出会いの末、妻となった千晴の少女時代は、売れ始めた頃の森七菜が演じていた。

この頃の森七菜を見るとフレッシュでとても良い雰囲気をもっていて、今のポジションが惜しい。早く表舞台に戻ってきてもらいたい女優さんだ。

 

深海晶と根元恒星は、一見まったく異質なタイプに見えるのだが、実は人から頼まれたらいやと言えない人間。そのせいで、いつも自分を後回しにしてしまい、本当のことが言えず、誤解を与え、そのために人知れずもがき苦しみながら人生を生きている。

 

物語は晶の恋人で、これまた行き過ぎた優しさが結果的に、人を不幸にさせてしまう花井京谷(田中圭)、恒星と恋人関係にあった橘呉羽(菊地凛子)、京谷の元カノでヒッキーになってしまった長門朱里(黒木華)ら、個性豊かな面々との、どちらに転ぶか全く読めない恋模様と、人間関係を中心に描かれる。

 

結構、複雑な関係であるにもかかわらず、観る者が迷子にならないよう、セリフや演出に工夫がされていて、それぞれのキャラクターの心情を噛みしめつつ、次に起こる事件を想像しながら、先をどんどん観ていきたくなる仕掛けが随所にちりばめられている。

 

晶と恒星の関係は、とても微妙な距離感で、ストーリーが進む中で近づいたと思ったら、気のせいだったのか、、、と思い直し、でもそのすぐ後にやっぱり?などと、翻弄される。

二人はともに、自分の本当の姿を受け入れてくれる誰かを探していたように見えたので、最後は一緒になるのでは、とMATTは思って見ていた。

一貫して描かれる大人の恋模様は、恋するって、生きるってことだな、、、と。

こういう大人の恋愛ドラマをもっと観たいと思う。

 

色々と好きなセリフ、シーンはあったが、最終回の終盤で、晶にもう一度やり直したいと意思を

伝える京谷を晶が振った後、おもむろに取り出したCOEDOビールが、以前、恒星が晶と一緒に飲んだ時に買ってきたものと同じ銘柄だった。

そして、そのまま電話をかける晶。相手はもちろん・・・・。

こういう、何気ない演出も好きだ。

 

もっと書きたいことがあるのだが、それだけ良いドラマだったということだろう。

何年かしたらまた、見返したい一品だ。

松田龍平のあの、いつもの安心感ある松田節な演技も最高だったし、何よりガッキーがとても可愛くて、惚れてまうやろ~だった。。。

新垣結衣。

彼女のアクの抜けきったような嫌味のないキュートさは、彼女だけのもの。

唯一無二の存在だ。

 

最期に。

松尾貴史演じるバーのオーナーが経営するクラフトビールのお店「5tap」。

5つのサーバーから、いつも違うクラフトビールを供してくれる。なんといういいお店。

常連になりたい。。。

 

で、物語のキーにもなるのだけど、BARで出てくる那須高原ビールのヴィンテージビールの、ナインテイルドフォックス。

思わず、さっきネットで買ってしまった・・・・。

今年のものは7/1より予約開始で、3500円(500ml)。

そこから毎年代のものがオンラインショップで購入できて、当然古くなるほどに高価になっていく。MATTは、ドラマが放映された2018年ものをポチった。7600円。。。。

晶と恒星が飲んでいたように、ワイングラスに少量注いで味わって飲もう。