サクッと観ることができる青春映画を探していて、見つけた。
気になる女優さんに書いた二人=伊藤万理華、河合優実が出ているのも、決め手だった。
2021年の作品のため、河合優実はまだブレイク前。
この映画の3か月後に放映されたWOWOWの「さまよう刃」での演技は、壮絶そのもので、河合優実という稀有な才能を持つ女優を知った。
河合優実。
心のざわつきや揺れを、目や口で表現するのが本当に上手い。
彼女もブレイクまでに、色々な役をやっている。肥やしになったのだろう。
伊藤万理華は「時をかけるな、恋人たち」「ミワさんなりすます」「燕は戻ってこない」などで、立て続けに出演し、印象に残っていた。
この作品ではボーイッシュなショートカットで、彼女を主演にして映画を撮ってみたい、と思わせる雰囲気を持っている。
事実、フレッシュでガラス細工のような危うさを持ち合わせているようで、ヒロインとしての魅力にあふれている。
伊藤万理華。
もしMATTが映画監督なら、彼女で一本青春映画を撮りたい。
そう思わせる、何かを持っている。
作品自体は、少々荒っぽい脚本がちょっと物足りなかった。
脚本担当の三浦直之は、「腐女子、うっかりゲイに告る」や、「有村架純の撮休(最終話)」も書いている。
時代劇好きの主人公ハダシ(伊藤万理華)が、仲良しのビート板(河合優実)、ブルーハワイ(祷キララ)らと、映画部に対抗して時代劇を撮ろうとする冒頭部分で、彼女たちに協力して映画を撮ることになる面々の動機付けが弱いため、なんで彼らがめんどくさい映画製作を手伝うことになったのか、がわかりづらい。
ただ、そこから先の展開は魅せてくれる。
天文部の河合優実が読んでいる小説がハインラインだったりすることから、もしかしてSF要素あり?とか考えていたら、その通り。
金子大地演じる凛太郎は、未来から来た未来人という設定だった。
それにしても、伊藤万理華は未来人ネタに縁があるのね。。。笑
後半は映画を撮る若者たちの、楽しすぎる毎日が描かれる。
中学時代、文化祭で友人たちとビデオ映画製作を経験した。
MATTたちは「称徳仮面ドキョーン」という、中学程度の日本史がわかれば、タイトルの由来が判明するエロ x ヒーローものという特撮作品を撮った。
MATTはカメラマンだったが、1カ月あまりの活動期間は、本当に面白かった。
文化祭では女子の映画、ヤンチャな男子の映画、称徳仮面ドキョーンの3本が上映されたが、最終的にはMATTたちの作品が高評価を得て、最後はドキョーンしか上映されなかったらしい。
閑話休題
そんな40年も前のことを思い出しながら、懐かしく楽しく観ることができた。
決して映画としての完成度は高くなかったが、誰しもが持つ、あの若く青い時代のアオハルな日々が、フラッシュバックのように蘇ってくるという意味で、心に残る作品だ。
特に、伊藤万理華演じるハダシの、時代劇に映画に、そして恋にも一途な瑞々しさは、この年齢でしか表現できないものだ。
河合優実の演技も、この頃にすっかり彼女のカラーを確立しているあたり、さすが。
この二人の若いながらも、活き活きした芝居が見られるだけでも、一見の価値ありだ。
その他共演は、小日向星一(小日向文世の息子だ)、板橋駿谷などだが、意外だったのは、歌手の甲田まひるが出ていたこと。
チャーミングな演技で可愛いし、有りかも。
映画って、常に完璧でなくてもいいと思う。
粗削りでもなんでもいいので、心に突き刺さる何かがあれば、それはいい映画だ。
この映画も、そんな作品だった。