「リバー、流れないでよ」が本当に素晴らしかったので、上田誠の映画をまた観たくなりチョイス。

ヨーロッパ企画の作るSF作品は、なんとなく観終わったあとに、ホンワカするのがいい。

優しい眼差しが観る者を安心させてくれる。

 

タイトルにある「ドロステ」とは、こういうやつ。

 

「ドロステ効果」といい、誰しも一度は目にしたことがあるはず。

本作は、この状態が突然に日常に現れたことから、平穏な日々が一変してしまう様をコミカルに描いていく。

 

詳細な説明はいらないだろう。

「リバー、・・・」と同じく、71分と短いので、起こっていることを理解しようと頑張っているうちに、いつの間にか終わってしまう。

 

テンポ良く進んでいくストーリー、撮影方法はヒッチコックの「ロープ」のようにワンカットの長回しのように撮られていく。

「ロープ」は特殊撮影技術もない70年も前の映画なので、長回しに見えるよう、部屋を出入りするシーンで、上手くワンカットに見えるよう編集していた。

 

それにしても、撮影も脚本も大変だったのではないか、と想像する。

役者さんやスタッフの根気と理解力がないと、成立しないだろうし。

 

「リバー、・・・」では主役を演じていた藤谷理子が主人公・カトウのカフェの店員役で出演。

クリクリとした大きな目が特徴的で、テキパキとした動きが小気味よい。

舞台だけでなく、もっといろいろな作品で見てみたい女優さんだ。

 

ヒロインの朝倉あきと、タイムパトロール役の、永野宗徳と本多力はTVでもよく目にするが、例のごとくその他の役者さんは、土佐一成、石田剛太、酒井善史、諏訪雅、角田貴志、中川晴樹ら、ヨーロッパ企画の俳優さん。

 

本作の「2分後の未来」が見えるというのは、「リバー、・・・」では、2分前の過去に戻ってしまうという設定だった。

この2分という絶妙な設定が、上田誠の描く世界の妙といえる。

SFと言っても我々の日常の中に潜んでいそうな、身近な感覚がいい。

そして、不思議な現象に巻き込まれる人たちのコミカルな反応も、人間という存在がいかに不安定な世界で生きているかを描いているようだ。

我々の世界は、実は非常に危ういバランスの上に成り立っているのではないか、と。

 

上田誠の作品は、ラストはいつもほろりとさせてくれる。

それは、普通の人たちを見つめる優しい視線のせいなのだろうか。

クライマックスで、カトウとメグミ(朝倉あき)の二人が、タイムパトロールに記憶を消されそうになるシーンや、色々あってのち、二人がSF談議に花を咲かせるシーン。ドタバタだけで終わらず、正直に生きるものが幸せになる、という設定がほっとする。

 

前にも書いたけど、上田誠作品では「時をかけるな、恋人たち」が超お勧めだ。

もう一度観たくなったな。。。