時代劇が好きだ。

そして、この作品はまさに王道を行っている。

時代劇の魅力は色々あれど、やはり現代の人々にとって憧憬である「義理人情の世界」が、一番かなと個人的には感じる。

 

高田都の原作は人気コンテンツのようで、2012年のテレ朝版(北川景子、貫地谷しほり)、本作(黒木華、成海璃子)、2020年の映画版(松本穂香、奈緒)がある。

今回は黒木華を見たくてNHK版をチョイス。

作品の魅力を存分に味わうなら、連続ドラマであるNHK版がベストではないかと思う。

 

兵庫県出身の高田都が、初めて東京に来た時に、その食文化の違いに驚いたことにインスピレーションを受けて作られたお話だとか。

MATTも19歳で東京に来て、同じようにうどんの出汁の違いや、ちらし寿司が東西で違う食べ物である、など驚きの連続だった。

 

劇中でも江戸と上方の食文化の違いに戸惑いながら、一流の料理人目指して奮闘する澪の姿が描かれる。

日本の豊かな食文化を、あらためて実感することができるのも、このドラマの良いところ。

カツオや鰆、ハモなど関西と関東での扱いの違い、江戸の粋の文化と、上方の実を取る文化など興味深いし、そういった文化を大切にしていきたい、と改めて感じる。

 

主人公の澪を演じるのは黒木華。

江戸にやってきた大坂の料理人という設定なので、大阪府高槻市出身の彼女が演じることで自然な関西弁が耳に心地よい。

またドラマの中の料理シーンは、特訓してすべて彼女が吹替無しでやっているそう。

 

澪の幼馴染で吉原一の花魁・あさひ太夫を演じているのは、成海璃子。

目鼻立ちがシュッとした彼女にはぴったりの役だ。

成海璃子といえば、2016年・東海TV「リテイク 時をかける想い」での、筒井道隆との父娘の愛憎劇がとても良かった。

 

そして物語は、不幸が重なり大坂の一流料理屋から流れ流れて江戸にやってきた、澪の主人であるご寮さん(安田成美)との血のつながらない母娘の愛情、御前奉行の小松原(森山未來)、町医者の永田源斉(永山絢斗)との恋模様、江戸一番の料理屋・登龍楼との名声をかけた勝負の数々など、見どころが豊富で、毎回飽きが来ない。

 

特に、幼馴染である澪と野江(後のあさひ太夫)のエピソードは、幼い頃に生き別れた二人の、お互いを思う気持ちと、叶わぬ願いに感動を禁じ得ない。

7話、吉原の「翁屋」料理番・又次(萩原聖人)の計らいで、遊郭の2階の窓から顔を隠して澪と再会するシーンは、涙無しでは見られない。

当時の遊郭の厳しい掟をかいくぐって再会を果たし、未来に希望をつなげようとする二人の姿が切ない。

 

優しい物腰で一見か弱い風情であるが、時折、内に秘めた熱い気持ちがほとばしる澪という少女を、黒木華が魅力たっぷりに演じている。

まさに役が乗り移ったような演技は、黒木華の真骨頂だ。

 

澪に思いを寄せる、二人の男。

森山未來の時代劇向きの男ぶり、永山絢斗の清廉さも良い。

永山絢斗は不祥事で一線から退いて久しいが、時代劇も現代劇もいける、シュッとしたイケメンだったのでもったいない。

 

共演もNHKらしく、時代劇ならこの人というキャストで手堅い。

小日向文世、麻生祐未、伊武雅刀、浪岡一喜、松尾スズキ、木村祐一、杉村蝉之介(このひとも不祥事で最近見なくなった。。。)、大倉孝二、国広富之など。

 

蒔田彩珠が重要な役で出演。翌年の「透明なゆりかご」で初めて認識したが、この作品でもすでにしっかりした役作りで、その才能の片鱗をのぞかせていた。

またすっかりNHK御用達俳優になっている、毎熊克哉もクセのある役で出演。

 

ふき役の蒔田彩珠。

その実力がやっと最近、世間に認知されるようになった。

 

良い原作・脚本に良い俳優陣、物語を盛り上げる小気味よい音楽など、時代劇ファンも料理ドラマファンも納得させる良作だった。松本穂香と奈緒の映画版も観てみようかな。。。

その前にスペシャルも観ないと。

 

最後にエンディングロールで流れる、「澪の献立帖」のコーナーが、妄想マニアにはたまらない。現代のシステムキッチンに立つ澪(もちろん劇中の和装)、ムーディなテナーサックスのBGMに乗って澪が「わたしと、〇〇を一緒に作りませんか?」(もち、関西弁)と誘う。

その時点で妄想スイッチが入り、キッチンで黒木華と一緒に料理している自分がいる。

毎回、このコーナーも楽しみの一つであり、ゆえに最後まで満足度の高いドラマだった。

 

柳原料理教室のHPより。

昆布を「こぶ」と言う黒木華が好き・・・・笑