監督の白石和彌は、あの「極悪女王」を撮った監督さん。

 

主演の阿部サダヲは、現在WOWWOドラマの「災」で怪しい男を演じている香川照之と並んで、人の好さそうな人間が持つ邪悪な裏の顔を演じたら、天下一品の演技力を有している。

そして、本作は共演に将来有望な推し女優の宮崎優が出ていたので、ぜひ観たかった。

 

序盤から残虐シーンがかなりハイペースに投影されるので、そういった描写が苦手な人はおそらく15分で脱落するかもしれない。

MATTもちょっと辛かった。

だが、いわゆる秩序型のシリアルキラーの典型である主人公・榛村大和の、冷徹な残虐性と自己中心的な狡猾さを表現するには、必須の描写であるので仕方ない。

 

もう一人の主人公、連続殺人の容疑で服役中の榛村大和から手紙をもらって、彼からある依頼を受ける大学生・筧井雅也(岡田健史)が、拘置所での榛村大和との面談で導かれるように事件を追いかけていき、榛村の言う9件目に立件された事件の無実を証明しようとする過程が丁寧に描かれており、謎解きの面白さもあって2時間強の作品だが時間を忘れて楽しめる。

 

「鵜頭川村事件」などの櫛木理宇による原作の良さがあると思うが、連続殺人犯の自己中心的な思考、快楽を求めるためなら手段を選ばないメンタリティ、その人当たりの良さと巧みな話術で他者の精神をコントロールしていくサイコパス的な側面など、犯罪心理学に興味ある人間であれば納得の描写だ。

 

また犯人の異常性を阿部サダヲが実にサラリと演じているあたりが、リアリティあって怖い。

そもそもシリアルキラーに会ったことのある人はほとんどおらず(会ったことある人は、そもそも今、生きてないよな。。。)、たとえ会ったことがあっても、彼らの精神世界は彼らにしか理解できない。

そのため、その理解しがたいものを演じるというのは並大抵ではないはずだ。

阿部サダヲという役者の演じる力の凄みを感じた。

 

岡田健史の鬱屈した何かを抱え込んで生きる演技も、もう一人の主人公である筧井という重要なキャストを際立たせている。

榛村に取り込まれて行きそうな危うさを見事に演じていた。

 

そして宮崎優。

まだほとんど無名ながら最近は「ライオンの隠れ家」「正体」などで確実に女優として成長している。この作品当時はまだ22歳。

若いがとても奥行きのある演技ができるのは才能だろうか。

吉岡里帆、戸田恵梨香、白石聖などが移籍したフラーム所属。

いい事務所にいるので、次世代若手として期待の星。

 

宮崎優。

所属のフラームらしい透明感ある少女。次回出演作が待ち遠しいひとり。

 

共演は、岩田剛典(金山一樹役。ほとんど顔が出ず、イケメンが可哀そう)、中山美穂(亡くなったのがほんとに残念)、音尾琢真、ちょい役で、不破万作、岩谷健司、テイ龍進など。

佐藤玲(「架空OL日記」が最高)は、かなり可哀そうな役で出演。

 

岩田剛典。正直、わからんかったくらい、劇中で顔が出てこない。。。

 

物語は真実がどこにあるか、が最後までわからない作りとなっている。

怪しさ満点の金山一樹が出てきて、筋が読めたかと思いきやしっかりその予想を覆す伏線も用意されて、最後まで気が抜けない。

ラストの宮崎優の豹変ぶりも見事で、本当の怖さはここにあった、、、、と思わせる演出がなかなか憎い。

 

正直なところ万人にお勧めできる作品ではないが、良質のサイコサスペンス+ミステリーを楽しみたいのであれば満足できる一品だと思う。