是枝裕和監督は、好きな監督の一人だ。
そして、やはり好きな俳優の一人、柳楽優弥が弱冠14歳の時に主演し、カンヌ国際映画祭で日本人として初めて最優秀主演男優賞を受賞した、というので前から観たかった作品だ。
柳楽優弥はこの後、しばらく苦難の時期を過ごすが見事カムバックして、今は役者として脂が乗り切っている。
wikipediaに色々と撮影秘話のようなものが書いてあり、興味深い。
柳楽優弥を含む4人の子役をオーディションで選ぶも、あまりに演技がヘタなので台本を渡さず口頭でセリフを伝えたら上手くいったのだとか。
ロングショットを多用して子供たちにカメラを意識させず、ドキュメンタリーっぽく撮るなど実験的な作風もこの作品の魅力となっている。
ゴンチチのストリングスもイタリア映画っぽい雰囲気でとてもマッチしている。
1988年に実際に起きた巣鴨子供置き去り事件にインスパイアされて撮ったという本作。
YOUが演じる母親は何人もの男と関係し、そのたびに子供をもうける。
父親の違う子供たち4人は、男と家を出ていってしまった母親不在の中、子供たちだけで懸命に生き抜こうとする。
明(柳楽優弥)、京子(北浦愛 ✳︎コタキ兄弟と四苦八苦に出演)、ゆき(清水萌々子)、茂(木村飛影)の腹違いの4人の子供たちが、本当の兄弟以上に固い結束で過酷な生活を生き抜いていく様を見ていると、是枝監督の「万引き家族」を思い出す。
あの作品も他人同士の疑似家族が、本当の家族以上の絆を持って社会を生き抜いていく様を描いていた。
是枝監督は子供が泣く芝居が嫌いなため、手を撮って心情を表現しようとしたという。
確かに、劇中では手や足のクローズアップで、その時々の子供たちの心情を的確に表現していた。
特に秀逸だったのはラストシーン。
明がたまたま誘われた野球に興じていた間に、ゆきが不慮の事故で亡くなってしまう。
友達の紗希(韓英恵)とともに、ゆきが好きだった飛行機が見える羽田空港のそばでひっそりと埋葬する。
その後のある日、明は紗希、京子、茂の4人と出かける。
ふと飛行機の音を聞き空を眩しそうに見上げる。
その時、小さな手が明のシャツの裾を握った。
観る側は、それだけでゆきの手がつかんだのではないか、という錯覚に陥る。
だが、実際は幼い茂の手であった。
このシーン、あまりに切なくて不覚にも涙してしまった。
子どもが泣かなくても、しっかりと観客の心をつかみ切ない心持にさせてくれる。
是枝監督の演出、編集の素晴らしさを感じるシーンだった。
このシーンは泣いた。。。
柳楽優弥はこの頃からあの「目力」を持っていて、オーディションで採用されたのもそのおかげだった。しかし最初から名役者ではなかったようで、その後の彼のたゆまぬ努力が今の柳楽優弥を形成しているのだろう。
数々の良い作品に出演しているが、お勧めは「アオイホノオ」「浅草キッド」「ガンニバル」「ライオンの隠れ家」あたりだろうか。ほかにもいい作品は多々あるが、まずはこの4作は柳楽優弥の才能を大いに感じることができると思う。
共演には木村祐一、遠藤憲一が子供たちの父親役で登場。
子どもたちがよく行くコンビニの店員に、平泉成、加瀬亮(髪が長いので違和感あり、、、笑)、タテタカコ。
ちょい役だが寺島進も出ている。
つくづく日本という国は子供に冷たい。
アメリカでは親が子供を置いて家を出たのが知れたら、最悪のケースは逮捕される。
学校付近の道路は通学時間帯でなくても、20マイル(30km前後)以下の速度制限があり違反すると捕まる。
やりすぎと思う部分もあったりするが、それでもネグレクトや通学道路での子供の交通事故のニュースを見るたび、日本では社会全体で子供を守るということをしない限り、子供たちは過酷な環境にさらされ続けるだろう。
「誰も知らない」の「誰」はほかならぬ、我々大人なのだと思う。
141分の大半が子供たちのサバイバルなシーンで構成されている。
特に大きな事件が起きるわけでもなく、淡々と子供たちの生活が描かれていく。
ただそれだけで、無責任な大人を静かに糾弾している。
こういう映画、好きだ。