これは観たかったので、アンブロックにupされてすぐに観てみた。

「アンナチュラル」「MIU404」のキャストがフル出演するという、ファンにとってはボーナス的な展開も、実際にはそれほど出演シーンもなく、ストーリーにもあまり絡まなかったので、正直肩透かしを食らった感がある。

 

脚本・野木亜希子、監督・塚原あゆ子、プロデューサー・新井順子という最強スタッフで、作品としては高いエンタメ性が発揮され、申し分のない出来だった。

ただ、期待値が高かったこともあり、個人的にはもう少しなんとかならんかったか、という思いが強い。

 

満島ひかりという実力ある女優を主人公に、岡田将生のような旬の俳優とタッグを組ませたのはさすがのキャスティングだが、そうであればもっとこの二人を動かして、ストレートなエンタメ作品にしてもらいたかった。

なぜなら、野木作品特有のストーリーテリング、エンタメ性の強さを備えながら、同時に社会性、メッセージ性も、とちょっと欲張りさんになったような気がしたからだ。

 

特にそれは謎解きの複雑さに現れていたように思える。

様々なレトリックは、確かに物語の奥行きを豊かにするのだが、あまりに過ぎると作り手側のメッセージが分かりづらくなることもある。

きっとこの作品は2度、3度見返すことで、その本質を理解することができる作りになっているのかもしれない。

 

物語が始まって最初の1時間が、少々饒舌になってしまっていて展開が遅かったのもちょっと残念だった。その先の物語が非常にテンポよく、観る者をぐっと惹きつけたからなおさらだ。

 

主人公の2人に加え、中村倫也、阿部サダヲ、ディーン・フジオカ、仁村紗和、望月歩というサブキャラはもとより、丸山智巳、岩谷健司、安藤玉恵に、根本真陽、磯村アメリといった子役に至るまで、いい役者をそろえている。

 

また火野正平、宇野祥平の「SHOHEI親子コンビ」?もとても良いキャストだ。

 

我々は自分の生活がどのようなインフラ、仕組みで回っているかを滅多に気にすることはない。日々、豊かな生活を送れているのは誰かがそれを支えていて、何も問題なく動いているからだ。だが、その仕組みを構成する歯車が少しでも狂うと、それまで見えていなかったものが見えてくる。

「ラストマイル」では狂った歯車の真実と、それが引き起こす混乱を見せてくれる。名もない誰かが多くの人のために人知れず犠牲となっているという事実がそこにある。

 

この物語の根幹を流れているのは、誰かの犠牲の上に成り立っている異常な世の中の姿、ではないだろうか。

せっかくこんないいテーマなのだから、もっともっとそれを厚く見せてほしかった。

「アンナチュラル」と「MIU404」のキャスト総出演もよいが、正直そこはどうでもよかったな、と観終わった後終わった自分に驚いている。

魅力あるキャストたちは、本当にちょい見せでよかった。見せ方も少し中途半端だったし。。

 

それでも、やはり野木亜希子の作品を作りこむ力は存分に感じることができた。

次回作も塚原、新井、野木トリオで、最高の作品を期待したい。

 

最期に、本作を見て満島ひかりと岡田将生の二人は間違いなく、トップクラスの俳優だということがわかった。