昼に観た「ヴィレッジ」が、想像を絶する出来だったので気分悪いまま。。。

かみさんが夜、友人と食事に行ったため一人でゆっくり時間ができたこともあり、本作を一気見した。

 

2009年発表のすえのぶけいこの漫画が原作、2013年のテレ東ドラマ。

 

結論から言うと、ナイスチョイスで素晴らしい作品だった。

塚原あゆ子演出、プロデューサーは新井順子、そして脚本は「最愛」「リバーサルオーケストラ」などの清水友佳子だ。安心の顔ぶれ。

 

主演は桜庭ななみ。最近、本名の宮内ひとみに改称した。

しかし、、、、、

この頃、その美少女ぶりから飛ぶ鳥を落とす勢いだったのだが、いかんせんこのドラマでの役・今野水希のキャラがあまりに薄すぎた。

というか、共演の土屋太鳳、山下リオが強烈過ぎて完全に食われてしまっている。

この二人はその後、女優として順調に活躍の場を広げているのだが、桜庭ななみはあまりぱっとしない。

宮内ひとみに改称した彼女の今後に期待したい。

 

乗っていた観光バスが山中で崖下に転落し、そこで生き残った者たちによる極限状態の人間ドラマ、という設定が「ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と」に少し似ている。ただこちらはタイムスリップもので、脚本は金子ありさだ。

 

清水友佳子の脚本も秀逸だが、やはり塚原あゆ子による演出の効果は絶大だ。

そういう見せ方をするか、、、と言うシーンや展開が多々あり毎回次はどうなっていくのか、と釘付けにさせてくれた。

特にラストにつながる11,12話の盛り上げ方はさすがである。

 

サバイバルな状況下での心理描写はやはり女性脚本家の方が巧いのか、金子ありさにしても清水友佳子にしても男性には無い心の機微の描き方が細やかだ。

 

一話約30分の12話で、毎回冒頭で登場人物たちのモノローグでスタートする。

そこには彼女、彼らの本当の心の内が語られる。

 

穏やかで普通の日常から突然、生きるか死ぬかの状況に放り込まれてしまった6人の男女。

皆、一日は当たり前に来て当たり前に終わると信じていて、仲間たちと表面上は仲良くしていても、その実は孤独を胸の中に抱えて生きている。

そんな彼らを襲う、非日常の世界。

 

今野水希(桜庭ななみ)は、過去のいじめのトラウマから自分を殺して事なかれ主義を貫き通すことで、日々の摩擦から逃れている。

 

神矢知恵子(土屋太鳳)は、両親を事故で無くし幼い兄弟を一人で育てている。そのため誰も信用せず自分以外の人間には全く興味がない。

土屋太鳳。まだ18歳なので初々しい。三つ編みがお似合い。

 

市ノ瀬ハル(工藤綾乃)は、主体性が無く、誰かと一緒にいる自分が好き。あまり深く物事を考えず、その場がよければそれでいいというタイプ。

 

薄井千景(増田有華)は、母親に溺愛された結果、自己肯定力が低く自分は周囲から役立たずに思われているという被害妄想が強い。

 

盛重亜梨紗(山下リオ)は、父親のDVと母親からのネグレクトにより心と体に深い傷を負って、他人とのつながりを拒絶して生きるようになる。

山下リオ。ショートは珍しい?「ガンニバル」でも活躍中。

 

日向晴明(鈴木勝大)は、水希のことが好きな男子生徒。気が弱い面があり、そのため劇中ではストーリーを動かすキーマンになる。

 

かなり早い段階で物語は動き、ほぼ全編6人の生徒たちの極限状態での心理戦が展開される。そしてやはり土屋太鳳と山下リオの演技力が光り、この若い二人(土屋18歳、山下20歳)の芝居のおかげでストーリーが引き締まった。

 

もう一人、当時徐々に頭角を現してきていた窪田正孝がちょっと抜けている担任教師役で出演。彼のいい加減な職務態度のせいで、事件が重大化してしまうのだが、この頃すでに出来上がっていた豊かな表現力で、いい加減な教師が成長していく過程を情感あふれるスタイルで演じている。世間的にはこのドラマの出演はあまり知られていないかもだが、彼の若い頃の実力を伺い知ることができる。

 

冒頭のバス事故でクラスの大半の生徒が死んでしまうのに、その後山中でサバイバル生活を送る6人の生徒たちのストーリーと並行して、家族たちのドラマが描かれる。親たちが自分の子供が無事であることを祈る姿を見るにつけ、絶望的な状況であることを知っている視聴者はかなり辛い思いになる。

この辺の演出も過酷ではあるが、物語への没入感を深くしてくれている。

 

タイトルの「リミット」は劇中の極限状態を示唆しているのだろうが、もうひとつ、登場人物たちがいつの間にか心の「リミット」を作っていて、本当の自分を隠し他者と交わらない、他者を理解しようとしない、という姿が込められていると感じた。

最後に生き残った生徒たちは、その心の「リミット」を解き放ち、嘘偽りない自分をさらけ出すことで、真の友達と出会えることができた。清々しいラストとなっている。

 

共演者は、大石吾郎、高田里穂、冨家規政、渡辺いっけい、松澤一之など。

あと、MATTがかなり昔に「気になる女優さん」シリーズで登場させた、梶原ひかりがちょい役で出演。彼女、なかなか芽が出ないなあ。。。。

 

さすがテレ東、目の付け所が違うという一品。

12年も前からいいドラマ作ってました。

フジテレビも再生したらこういうドラマを作ってよね。。。