関水渚が主演、テレ東制作(チーフプロデューサーは祖父江里奈)というだけで観たドラマだったが、意外に満足度が高くサスペンス作品としては出色の出来だったと思う。

 

主演の関水渚は同じテレ東の「八月は夜のバッティングセンターで。」で初主演し、初々しい演技で印象に残った。

その後「コンフィデンスマンJP」 「元彼の遺言状」 「シガテラ」と出演が続くも、ちょっと停滞気味な気がする。

26歳は同世代に実力派も多数いるので、演技を磨いて飛躍のチャンスをつかんでほしい。

 

家政婦ものは決して新しい素材ではないものの、クロミの存在感がたっぷりでキャラが立っている。それを抑えた演技の関水渚が好演。

 

同クールにTBSで放映されていた「クジャクのダンス、誰が見た?」 「御上先生」と同じく、冒頭ですでに事件が起こっていて、そこからバックキャストで物語が進んでいく。

物語の舞台となる裕福な灰原一家が惨死しているという凄惨な現場が映し出されるが、その後の物語では灰原家に家政婦としてやってきたクロミが、灰原家の人々と信頼関係を築いて、一見幸せな家庭に見えるため、ドラマ冒頭のシーンとのGAPにある「何か」に視聴者はくぎ付けになるという仕掛けだ。

 

そしてもう一つこのドラマが良くできているのはキャストの演技。

灰原翠(藤原紀香)とその息子の千翠(阿久津仁愛)、翠の再婚相手の蒼太(高橋光臣)、その娘・緋莉(大熊杏優)、千翠の父親で翠の元夫の緑川一馬に丸山智巳。

広い灰原家のリビングで舞台劇のような演出が効果的。

 

その中で若く経験の浅い大熊杏優は仕方ないが、千翠役の阿久津仁愛は若いものの舞台経験が多いようで、非常に表現力が豊かだ。経験豊富な共演陣に負けない演技で魅せてくれる。

阿久津仁愛。狂気に満ちた演技は出色。

でもあまりそれで評価されてしまうと、2時間サスペンスの犯人役しか来なくなるかも、、、

 

藤原紀香も演技力と言う点ではあまり印象に残らない女優さんなのだが、物語終盤のクロミとの対決シーンでは、元夫に虐げられてきた哀れな女の心情の吐露、命を削って努力し財を成したという自負、子供を思う母の心など素晴らしい表現力だった。

 

ストーリーは突っ込みどころが多々あるものの、そういう細かいところを見て楽しむドラマではない。特異な状況設定、キャラの立った登場人物、謎多きクロミという存在、思い切りよいスプラッター演出などをシンプルに楽しむべき作品だ。

 

最近時はやたらと凝った造りのドラマが多いが、この作品のように際立った設定でシンプルなストーリーで勝負する、というのはむしろ有りだと思う。

もちろん、良い原作に演出、実力ある俳優陣が不可欠だが。

 

共演陣に赤間麻里子、うらじぬのなど。

初代クロミ(?)に大西礼芳が。ピンポイントで印象に残る役は彼女の真骨頂。

 

関水渚の棒読みっぽいせりふ回しがクロミの存在の不気味さを際立たせた。

キャスティングの妙とはこういうドラマのことを言うのだろう。。。

 

関水渚。今回の役はピタリハマった。次の出演作品に期待。