原作を描いた、漫画家の浅見理都は「イチケイのカラス」の作者。

 

タイトルから内容が想像しづらい作品は好きだ。

不思議なタイトルは、ヒンディー語で「ジャングルの中でおどるクジャクのダンス、誰が見た?」ということわざがあり、「目撃者がいなくても価値があると言えるのか?」という意味があるらしい。

 

このタイトルを最初に提示されているので、物語冒頭で陰惨な林川一家殺人事件が映し出されることで、サスペンス色を強く意識して見てしまう。

同様の手法は同時期に同じTBSで放映されていた「御上先生」でも見られた。

こちらも初回、堀田真由演じる真山がいきなり人を刺す衝撃のシーンで幕を開ける。

否応なくサスペンスドラマの期待が高まるのだが、その実物語の本命のテーマは「教育とは」、「真実とは」を考えるものであった。つまりサスペンスは実はサイドメニューだった。

 

このドラマも最終回に至るころにはクライムサスペンスのふりをした、ヒューマンドラマであることに気づかされる。

それはリリー・フランキー演じる山下春生と、広瀬すず演じる娘・小麦の父と娘の愛情物語だった。

劇中でも松山ケンイチら登場人物が小麦に対し「クジャクのダンス、誰が見た?」を引き合いに、森の奥に行けば戻ってこられなくなるぞ、と警告する。

果たして、森の奥深くへと入って行った結果、小麦が見つけた真実は、、、、、

 

酒向芳と成田凌の遠藤親子と、彼らの友人のジャーナリスト・神井(磯村勇斗)が絡む冤罪がもう一つのテーマとなっているので、こちらも森の奥に真実があったというプロットになっている。

 

いずれにしても林川一家殺人事件にかかわる様々な人たちの物語が複雑に絡み合い、毎週観る者を翻弄して進んでいくので、ドラマとしてはとても楽しめる一方で、事件の真相を知ると、もう少しリアリティが欲しいと感じる。やや消化不良っぽい感覚が残ったのが残念だ。

それは西田尚美演じる京子の、犯罪に手を染めていく心理描写に関してなのだが。

人は弱い。陰惨な事件も、その後に起こった冤罪事件もすべて人の弱さが起こしたものと言える。そこをもう少し書いてほしかった。

 

小麦は森の奥に進んでいくことで、様々な苦しい真実を目のあたりにする。

そのたびに心傷つき、涙を流す。

父の死の真実を見つけるため、血のにじむような苦難の道のりを歩んできた小麦が最期に見つけた真実が、「真の親の愛情」だったというのが唯一の救いに思える。

 

このお話、素材的にはもっといいドラマになるポテンシャルがあるようなのに、イマイチ盛り上がりに欠けた。

その理由はなんだろうと考えたのだが、あまりに多くの伏線と登場人物の物語を描き過ぎたからか、と感じる。

考察ブームを意識したのか、、、個人的には物語の重厚さが薄れることから、最近のドラマ考察ブームには否定的だ。

 

その他主要キャストには瀧内公美、森崎ウィン、酒井敏也、藤本隆宏、野村康太(沢村一樹の息子)、 絃瀬聡一(東京サラダボウルでも好演)、仙道敦子、原日出子、野間口徹ら。

ゲストに間宮 啓行、石丸謙二郎、篠井英介、有森也実、井上肇、宮崎美子など。

 

リリー・フランキー、広瀬すず、松山ケンイチ、磯村勇斗、藤本隆宏、西田尚美、酒向芳、成田凌、瀧内公美。

これだけの役者をそろえたのだから、と言う感がどうしても消えない。

TBSはドラマを作るのが上手いと思うのだが、テクニックに走り過ぎるのは良くないな、、と思った作品だった。

 

広瀬すずが劇中で着ていた、ファーフーディジャケット(フライトジャケット)。

50代には懐かしく感じたのではないだろうか。。。流行りは巡るのね。