黒沢清監督の作品は好きである。
沢山の映画を観て、自称映画好きという人に好まれる、いわゆる玄人受けする監督だと思う。
ジャパニーズホラーといえば、清水崇、中田秀夫らがいるが、黒沢清はそれら監督と違い、芸術性が高い作品を撮っている。
カット割り、カメラ、絵の作り方など凝っていて興味深い。フランスで人気あるのもわかる。
難解な作品が多いが、観る側に解釈をゆだねるというスタイルなので仕方ない。
そもそも、黒沢清のような映画監督の作品に、細かな整合性やストーリーの明白さを求めること自体野暮だ。
シロウト映画批評の欄でそういったスタンスで☆一つ、とか書いている人は、あまり映画を知らない人なのだろう、と。
「クリーピー 偽りの隣人」、「散歩する侵略者」、「スパイの妻」など観て来たが、初期の作品をまだ観ていなかった。今後、「CURE」や「アカルイミライ」、「LOFTロフト」なども観てみたい。
公開された2001年といえば、インターネットの普及期だ。
まだ一般の人には得体の知れない新技術だったネットの世界と、人の死、幽霊などやはり人々にとって得体の知れない恐怖を感じさせる存在とを(当時として)斬新な発想で結びつかせたその視点は、さすが黒沢ワールドと思わせる。
劇中で作品の軸となるネットの世界を描く描写が、30代以下の人にとっては新鮮なのではないだろうか。
主演の大学生・川島役の加藤晴彦が小雪にPCの操作方法をあれこれ教えてもらうシーンなどは、若者がPCの操作をよくわかっていない、という当時はよくあった状況がまるで現代の高齢者向けPC教室に見えてしまうし、ダイヤルアップのインターネット接続などは、もはや古典の世界だ。
全体的に暗い画質、強調された陰影などは黒沢作品らしい絵作りで、物語全体を支配するデカダンな空気も健在。
「得も言われぬ不安」に抗うことができず、成すすべなく絶望の淵に追いやられていく、、、という空気感を楽しむことができれば、黒沢作品を堪能できるだろう。
できなければ、なんだかよくわからん、、、となるのでそれでいい。
芸術的な作品というものはそういうものなのだ。
24年前の作品なので出演者が皆若いのは当たり前だが、それにしても小雪や麻生久美子の若い頃は初めて見たので新鮮だった。二人ともフレッシュで可愛らしい。
役所広司、菅田俊、武田真治、哀川翔、風吹ジュンなどの名優はほとんどちょい役扱いという贅沢さ。有坂来瞳は久しぶりに名前を聞いた感じ。最近あまり出演が無い。
御年69歳の黒沢監督。
昨日観た「Broken Rage」の78歳の北野武監督もそうだが、いつまでもチャレンジングであってもらいたい。映画監督と言う人たちは誰が何と言おうと、自分の撮りたい映画を撮り続けることで、映画監督として生きられるのだから。