リラとはライラックのフランス語読みのことだそう。
全3回のショートドラマであるが、この作品、原作の小説がしっかりしていそうなので小説をベースに朝ドラにでも採用してもらいたかった。
というのも、人生に躓くヒロインが様々な人々との出会いを通じ、人間として成長していくストーリーや、やはり絵的に力のある北海道が舞台、そして何より動物や人間の命が描かれる作品だからだ。
また、主演の山田杏奈の演技が素晴らしいことも、そう思う理由の一つだ。
彼女はデビュー作の「ミスミソウ」以来、主演・共演含めて様々な役にチャレンジしており、24歳と言う年齢とは思えない、しっかりとした役者さん。
特に女優の命ともいえる「泣きの演技」は特筆もの。
このドラマでも何度も泣くシーンが出てくるが、心震わせる泣き方ができる女優さんは、そうはいない。特に若手の中でもトップクラスと思う。
これまで彼女は「陰」のある役が多かったからかもしれないが、このドラマでは「陰」と「陽」を巧みに演じていた。
山田杏奈ちゃんの笑顔が見られるドラマは貴重だ。
先述の「朝ドラに採用・・・」についてだが、その前になぜNHKは現在放映中の朝ドラ「おむすび」に、橋本環奈をヒロインにしたか、問題が頭に浮かぶ。
「千と千尋の神隠し」のロンドン公演中でスケジュール調整が難しい彼女をわざわざ選び、結果、無理な脚本になってしまって、ドラマとしては実に残念な仕上がりになっているという(詳しくはネットに多くの記事あり)。
そうなると原作者や主演の橋本環奈も気の毒である。
間違いなく、あの倉科カナちゃん主演の「ウェルかめ」の歴代最低平均視聴率を更新すると言われている。
だからこそ、なぜこのドラマのような作品を山田杏奈主演で作らなかったのかと思う。
今田美桜や見上愛のように一般的にメジャーではないかもしれないが、女優としての実力は一歩抜きんでていると思っている。
様々な事情があるにしても、実に残念でならない。
それはともかく、お話は3話の中に色々詰め込まれていて、それこそ「おむすび」のように、ダイジェスト感満載なのだが、そんな物足りなさを感じるほどストーリー自体の面白さがあり、やはりもう少し長い尺で撮ってほしかった。
昨今、米農家や酪農家、漁師ら第一次産業の将来の不安がメディアでも取り上げられているが、この作品にも動物とともに生きる酪農家の現状や苦悩が描かれていた。
より掘り下げることでこの作品の持つテーマ性もより深いものになると感じる。
それでもNHKらしい素晴らしいキャスト・俳優さんたちの演技と、山田杏奈の熱演で十分楽しめた。特に3話の子牛の出産シーンはなかなかの迫力で、このドラマが描きたかったテーマが凝縮されていて感動を呼ぶ。
共演者の當真あみ、萩原莉久、佐藤寛太、菊池日菜子らの若手に加え、風吹ジュン(最近、お母さん役のみならずおばあちゃん役でも活躍)、甲本雅裕、安藤聖、小林涼子、勝矢、温水洋一、信田昌之、竹財輝之助、山崎静代ら中堅・ベテラン俳優陣がバランス良く配されて、手堅い。
また石橋静河は共演でもしっかり存在感を見せており、最近時乗ってきたなと思わせる女優さんだ。
最後に、本作は勝矢が牧場経営者の一人として出演していて、山田杏奈とも顔合わせのシーンがある。
この二人、言わずもがなだが「ゴールデンカムイ」では牛山とアシㇼパさんとして共演中。
アシㇼパ役の山田杏奈に何度も「チ●ポ先生」と呼ばせる牛山こと勝矢。
舞台も同じ北海道だし、NHKなのでまさか狙ったわけではないと信じる・・・・ww