まずタイトルに惹かれた。
タイトルからでは内容が想像しづらい、そんな作品が好きだ。
黒木華主演というのも選択の際のキーだった。
彼女に加えて共演が藤間爽子、更に若手注目女優の白鳥玉季、近藤華の二人も出演。
脇を固める俳優陣も実力派ぞろい。またちょい役なのだが金澤美穂も出ている。
藤間爽子。今風でない雰囲気のあるいい女優さん。
黒木華はもう大女優の風格さえ出て来た。本作でもベテラン女優と相対しても全くそん色ない。また藤間爽子はずっと気になっている女優さんで、最近ようやく芽が出て来た。
草笛光子や風吹ジュンの存在も大きい。彼女らの演技が作品の格をあげている。
これだけ実力派を揃えて監督の草野翔吾はどうだったかというと、取り扱いを誤ると陳腐になってしまいそうな話を、しっかりと観客が没入できる一品にしあげてくれた。
主人公の秋村梓(黒木華)と郷田叶海(藤間爽子)の二人の友情を軸に、彼女たちの周辺の人たちも含めて見えないところでつながっている、という奇跡を描く物語。
特に梓と叶海の二人の日常を描きつつ、二人の学生時代(白鳥玉季、近藤華)、澄人(中村蒼)と梓、叶海の両親(田口トモロヲ、西田尚美)、梓の祖母の綾子(風吹ジュン)、小倉みち子とその家政婦で梓の叔母・範子(草笛光子、安藤玉恵)、宝石店店主の福永(升毅)と、それぞれの人生が、すべて梓と叶海の二人の人生につながっている、その構成が実に自然でわかいやすい。
得てして予定調和的でデジャビュになりがちな話を、丁寧な造りこみと役者の演技、そして美しいカメラワークで魅せる。105分という尺も饒舌すぎもせず、舌足らずでもなく絶妙だ。
ストーリーの作りが巧いと思わせるのは、物語の軸になる叶海は冒頭で早々に亡くなってしまうのだが(わずか10数分、、、)、それぞれの登場人物の中にある彼女の記憶の描写が巧みなので、ラスト30分の展開に思わずうるっと来てしまう。
これは脚本・演出が素晴らしいのと、藤間爽子のナチュラルな演技の賜物だ。
「アイミタガイ」という不思議な言葉の意味は中盤で風吹ジュン演じる綾子が語る。
語源は「相見互い」でお互い様、とか人にしてあげたことは巡り巡って自分にも返ってくるとか要は古き良き時代の助け合いの精神みたいなもの。
思えば最近の日本ではそういった互助の精神は希薄だ。
他人のすることになるべく関わらないのが美徳みたいになっている。
たった8年のアメリカの田舎町ですべてを語るべきではないが、アメリカの暮らしでは見知らぬもの同士が自然に助け合う風潮があった。日本人ももともと持っていた精神のはず。
この映画ではそんな遠くに行ってしまったものを身近に感じることができる。
亡くなった叶海もそんな気持ちの優しい女性だった。
そしてその優しさに助けられた梓は、叶海に一度ならず二度も背中を押してもらうことになる。
二人の友情に加え、彼女らを取り巻く人々の愛も描かれほっこりとすること請け合い。
ちょっと疲れた時に観るのにお勧めの佳作だ。
本作は大人の女優陣が凄かったが、主人公の少女時代を演じた二人も今後注目の二人だ。
白鳥玉季。実績十分の実力派。演技もビジュも爆発。
近藤華。「アンチヒーロー」で注目浴びる。彼女もネクスト世代の筆頭だ。