MOZUのSeason1は韓国駐在時代の2014年に日本語チャンネルで放送していたのを見た。

TBSとWOWWOWの共同制作ということで、当時としては意欲的かつ、地上波ドラマでは見られない本格サスペンスだったと思う。

 

そしてこの年末、アマプラにUpされていたSeason1と2を一気見した。

逢坂剛の原作で羽住英一郎監督、西島秀俊主演の硬派ドラマだ。

 

西島秀俊はストイックに役つくりをする役者として、好感を持っている。

本作の倉木尚武警部役も、細かなところまで西島秀俊のこだわりを感じる。

タバコの持ち方から、歩き方、立ち方、そして話口調まで倉木という男の生き様を体現して見せた。

 

共演に明星刑事役に真木よう子、大杉警部補に香川照之。二人とも抑えた演技でMOZUの世界観を西島秀俊とともに作りこんでいる。

脇を固める役者陣も多彩で、このドラマの質感を高めるのに貢献。

物語のもう一人の主人公である新谷和彦・宏美の兄弟役に池松壮亮(一人二役)。

悪の組織である警備会社「アテナセキュリティ」の幹部の東に長谷川博己(キ●ガイ役をやったらこの人の右に出る人はいない)、中神に吉田鋼太郎(このころの鋼太郎さんは悪役ばかり)。

 

共演者といえば、生瀬勝久、堀内敬子、深水元基、田口浩正、田中要次と並ぶと「サラリーマンNEO」を想起してしまう。

 

そのほかでは、品川徹、染谷将太、渋川清彦、奥貫薫、村杉蝉之介、鶴見慎吾、津嘉山正種、戸田昌弘、瑳川哲郎、伊藤淳史、佐野史郎、平山祐介と役者陣も脇に至るまで豪華だ。

 

蒼井優はSeason2で池松壮亮と絡むが、この二人は4年後に「宮本から君へ」で恋人同士の役で共演する。

また池松壮亮は、Season1では当時売り出し中の有村架純と共演。

この二人は今年のドラマ「海のはじまり」でも共演している。

こういったところにドラマファンは喜びを感じてしまう。

 

共演というと西島秀俊と石田ゆり子は色々なドラマで再三にわたり夫婦役をやっている。

相性がいいのだろうか。

 

小日向文世はこのドラマで演じているような、実は一番悪い奴、、、という役が良く似合う。

人の好さそうな感じでその実、悪人というところを演じると実に味わい深い。

 

杉咲花が香川照之の娘役で出演。

当時まだ17歳だが、天才女優の片鱗を十二分に見せてくれている。

 

本ドラマで主役となる公安警察の外事課といえば、NHKの「外事警察」を思い出す。

国家の安全を守るために文字通り命を張る公安外事課のハードボイルドな世界は、こういうアクション映画にはもってこいなのだろう。

そのため本作も国家の闇を暴くサスペンスドラマとして、一級品の出来となっている。

 

個人的にはSeason1&2と分けずに、Season1を10話ではなく、13話くらいにして完結としてほしかった。正直、Season2は1に比べて饒舌すぎて間延び感が否めなかった。

 

Season1はデビッド・フィンチャーの映画のように雨のシーンが効果的で、陰影に富んだ映像が闇の深さを表現していて素晴らしかった。

このドラマはそういった映像の作りこみもセンスよく、ストーリーの重厚さ、役者陣の高い演技力などが相まって、レベルの高い作品だ。

 

西島秀俊の抑えた演技が醸し出す緊張感が全編通して、暗く絶望感に満ちた世界観をリアルなものにしており、その結果、最終話の倉木と大杉が居酒屋で飲むシーンで倉木が初めてほほ笑むシーンが生きてくる。

 

サスペンス性、アクション、映像美など日本のドラマが世界に打って出る先鞭を切った映像作品として評価したい作品。10年前のドラマだが、今観ても輝きは褪せない。