タイトルだけで内容が想像できないドラマに名作が多いと思う。

しっかりと芯の通ったテーマを持っているので、内容がわかるようなタイトルにしなくてもいいからかもしれない。

 

この秋ドラマはいい作品が多く豊作だったが、このドラマも完成度の高さと心に刺さる作品としてトップだったと思う。

 

柳楽優弥は大好きな俳優さんだ。

静と動、柔と剛を難なく演じることのできる数少ない俳優さんで、来年春公開予定の「ガンニバル2」では、今回演じた小森洸人とはまったく違うキャラで魅了してくれるだろう。

 

自閉症スペクトラム障害の弟・美路人を演じた坂東龍汰は、河合優実と共演した「RoOT」で初めて認識、ユニークな若手俳優と感じていたが、今回の彼の演技は相当な勉強のうえ作られたものだったろうと感心した。

本作は坂東演じる美路人の存在と、そのキャラクターの出来によってクオリティが大きく左右されると思ったからだ。

 

みっくん(美路人)を演じた坂東龍汰は、若いが表現力が高い役者さん。

柳楽優弥を相手にまわして互角の演技。この先が楽しみだ。

 

序盤は障害を持つ弟を支えながら奮闘する兄のハートウォーミングなドラマなのだが、謎多きライオンと名乗る男の子・橘愁人(佐藤大空)が突然やってきたことで、それまでお互いに依存しあってきた洸人と美路人との関係性が少しずつ変化していく。

兄以外の人間との関係性に無頓着だった美路人の世界が変わり、そして弟のことを支えることに人生のすべてを費やしてきた洸人の人生もまた変わる。

そして、途中よりライオンの母親であり二人の腹違いの姉である橘愛生(尾野真千子)が関わってくることで、家族のリストラクチャリングが展開されていく。

 

家族の再生、人生の意義、児童虐待、サスペンス要素などざまざまなテーマが盛り込まれながらも、11話の展開でダレる部分はまったくなく、それでいて破綻の無いストーリーラインは数多の人気ドラマを描いてきた脚本家・徳尾浩司の実力によるものだろう。

 

共演者にでんでん、齋藤飛鳥、岡崎体育、池田鉄洋、柿澤勇人、森優作、入山法子、坂井真紀、黒田大輔、後藤剛範ら。

桜井ユキ、岡山天音、向井理はそれぞれ物語のキーになる役で、こういったキャスティングの面でも非常に良いセンスを感じた。

 

それから昨日まで観ていた名作「motehr」でも描かれた児童虐待・DVがこのドラマでも重要なテーマになっている。「mother」では虐待をする母親役だった尾野真千子が、今回は夫(向井理)による息子への虐待から必死に逃れようとるす母親役というのが興味深い。

「mother」の放映当時から14年、日本の法制度は子供を確実に守ることができるよう進化したのだろうか。複雑な事情が入り組んでいる現代の家庭、家族の問題で解決できる時代ではないと思うのだが。

 

虐待の事実が明るみに出たことで、ライオンと母親の愛生を救え、ハッピーエンドでスパッと終わらないのはこの作品のテーマが、これまでお互いの距離を置いていた兄弟が、事件を通じて互いの存在をあらためて尊重することで新たな一歩を踏み出していく、そこに本当に描きたかったことがあったからだ。

11話で友人の結婚10周年パーティで、汰人が美路人に心の内を伝えるシーンは感動的だったが、このシーンがあるからこそストーリーが締まったと思えた。

 

最近障害を持った主人公、キャストの名作ドラマが多い。

「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」「初恋、ざらり」などや、今回の美路人に近い役では「厨房のありす」などがある。

近年は障害を持った人やLGBTQの人など描く時は専門家の監修が必ず入る。

ドラマの世界でも正しい知識のもとで表現することは大事だと感じる。

今後も多様な視点のドラマが増えて行ってほしい。

 

最後に共演美女を探せのコーナー。

今回は将来期待の若手女優さん

尾野真千子演じる愛生の若き日を演じた、宮崎優。

 

宮崎優。

尾野真千子の少女期を演じたが、瑞々しさの中に一筋縄ではいかない何かを抱えているというキャラクター。いい感じだった。

映画「死刑にいたる病」で好演しているというので、見てみたい。